軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百十一話 食パンでピロシキ

32階で最初にエンカウントしたのはストーンゴーレムだ。

ドスドスと足音を立てて俺たちに向かってきたが、難なくスイが瞬殺。

次に現れたのは、鈍い銀色をしたゴーレムだった。

『あれはアイアンゴーレムだな。少々硬いのがやっかいだ』

『でも、熱には弱いだろ。もちろん相当の高温じゃないとダメだけどな。こんな感じのよ……』

ゴォォォォォ―――ッ。

ドラちゃんの口から擬似ドラゴンブレスが放たれる。

アイアンゴーレムの頭部が猛烈な炎に包まれた。

そして、ドラちゃんの擬似ドラゴンブレスが収まると、そこには高温の炎で頭部を溶かされたアイアンゴーレムが力なく立っていた。

直後、頭部を失ったアイアンゴーレムは大きな音を立てて前へと倒れていった。

『さすがだな』

『ドラちゃん、カッコいい~』

『へっ、どんなもんよ』

「ド、ドラちゃん……」

フェルとスイは感心してるけど、頭にドラゴンブレスってさすがにちょっと引くぞ……。

そうこうしているうちに、倒れたアイアンゴーレムが消えていった。

「ドロップ品があるな」

落ちていたのは鈍い銀色の塊と灰色の小石。

灰色の小石は魔石だろうけど、銀色の塊は鉄か?

でも、ドロップ品がただの鉄ってわけはないと思うんだけど。

『何だそれ。汚ねぇ色の塊だなぁ』

アイアンゴーレムを倒したドラちゃんはドロップ品に少々不満顔だ。

「まぁまぁ、ドロップ品なんだからそれなりに価値のあるもんだろ、きっと。ちょっと待ってて……」

ドロップ品を鑑定してみる。

【 アイアンゴーレムの欠片 】

魔鉄の素。アイアンゴーレムの欠片を素にした魔鉄は普通の魔鉄よりも価値が高い。

アイアンゴーレムの欠片で魔鉄の素か。

そういや、 アーク(箱舟) のシーグヴァルドさんのウォーハンマーが魔鉄製だったな。

かなりの逸品って話だったし、魔鉄自体けっこうな価値があるものみたいだから、これもそれなりに価値があるんだろう。

鑑定でも“アイアンゴーレムの欠片を素にした魔鉄は普通の魔鉄よりも価値が高い”って出てるし。

『アイアンゴーレムの欠片と出ているな。魔鉄というものの素になるらしく、それなりに価値のあるものらしいぞ』

フェルも鑑定していたみたいで、鑑定結果をドラちゃんに教えていた。

『ほ~、そんなら無駄ってわけでもないのか。よし、ストーンゴーレムはスイがやれ。アイアンゴーレムは俺がやる』

『分かったー。石の魔物はスイがやっつけるー!』

それ以降、アイアンゴーレムはドラちゃんが、ストーンゴーレムはスイが担当して次々と撃破していった。

俺はもちろんドロップ品を拾うことに徹してたよ。

ゴーレムなんて相手にできるわけないじゃん、ハハ。

最後のボス部屋にも余裕で到達。

ここまで来ると冒険者も大分少ないようで、途中、1組だけ冒険者パーティーに遭遇したけど、アイアンゴーレムとストーンゴーレムを瞬殺するドラちゃんとスイを見て顎が外れるんじゃないかと心配するくらいポカーンと大口を開けてたのがちょっと笑えた。

そんなわけで難なくボス部屋に到達して、ボス部屋にいたアイアンゴーレムとストーンゴーレムの集団もドラちゃんとスイのコンビによってほんの数分で片付けられた。

ドロップ品を拾い集めた後、俺たち一行は33階層への階段を下りて行った。

そして、33階層。

33階層に到着してすぐに遭遇したのはアイアンゴーレムだ。

もちろんドラちゃんがすぐに擬似ドラゴンブレスで排除した。

それからも出てくるのはアイアンゴーレムばかりで、ドラちゃんの独り舞台。

ゴォォォッ、ゴォォォッと口をパカリと開けて擬似ドラゴンブレスの劫火を噴きまくりだ。

戦えないスイはちょっと拗ねてたけど、ここは魔物との相性もあるからね。

スイでもアイアンゴーレムを倒せないことはないだろうけど、火魔法が得意なドラちゃんに任せた方が無難だと思う。

フェルも同じ意見だったのか『次の階でがんばれば良かろう』とスイに言葉をかけていた。

俺も「次の階ではお願いね」と言ったら、何とかスイの機嫌も回復してくれたから良かったけど。

そんな感じでドラちゃんが先頭で出現するアイアンゴーレムを次々と屠りながら、俺たち一行は危なげなく悠々と33階層を進んでいった。

残すところボス部屋のみというところで、この階の功労者でもあるドラちゃんが一言。

『腹減った~』

大きく響いた実感の篭ったその念話に俺も苦笑いだ。

そりゃああんだけハッスルしてたら腹も減るわな。

『スイもお腹減ったー!』

『うむ、我もだ。それに、外の時間はみな寝静まる時間帯だ。今日はここまでにするぞ』

「それじゃあ今日はここまでにして、ボス戦は明日ってことにしよう。フェル、この近くにセーフエリアは?」

『こっちだ』

フェルに案内されて、俺たち一行は近くのセーフエリアの中へと入っていった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ったく面倒なことを言い出すんだから……」

俺は愚痴をこぼしながら、ネットスーパーの画面を見ていた。

飯は作り置きのものでと思っていたら、フェルが『出来立てが食いたい。他の冒険者もいないのだから作れ』とか言い出してさ。

確かにセーフエリアには俺たち以外いないけど、作るとなったら少し時間がかかるぞと言ったんだけど、それでもいいって言ってさ。

作り置きだって俺の時間停止のアイテムボックスに入れといたものなんだから出来立てだってのに、フェル曰く『お主が作るのを見て、出来上がったばかりのものを食うのとはまた違う』云々。

スイも『主がお料理作るところ見るの好きー』とか言うし。

まぁ、これはちょっと嬉しかったけどさ。

で、一番お腹減ってそうなドラちゃんにも振ってみたんだけど、ドラちゃんも『ここ最近米が多かったからな、さっきの飯みたいにパンがいいな』なんて言い出す始末。

確かに、前の飯にはボロネーゼドッグ出したけどさぁ。

とにかくだ、そんなこんなで飯を作ることになってしまった。

それも、ドラちゃんのリクエストでパンに合うものを。

そんなわけでネットスーパーを物色中。

「ん? ほ~、今日は食パンが特売中なのか。食パン……。あっ! ちょうどいい、食パンを使ったあれにしよっと」

閃いたのは食パンを使ったなんちゃってピロシキだ。

ミックスベジタブルが余ったときにどう使おうかとネットで調べて前に作ってみた料理だ。

ダンジョン豚とダンジョン牛のひき肉もあるしちょうどいい。

割とお手軽にできたし、サクッとしたパンと間に挟んだ具もボリュームがあって美味かったから、これだったらみんなも満足してくれるんじゃないかと思う。

俺は、材料を思い出しながら足りないものをカートに入れていった。

「よしと、こんなもんでいいかな」

そして、アイテムボックスから食材と魔道コンロを出して準備OK。

まずはタマネギをみじん切りに。

フライパンに油を熱したら、みじん切りのタマネギを入れて透明になるまで炒めていく。

タマネギが透明になったところで、ダンジョン豚とダンジョン牛の合いびき肉を入れてひき肉に軽く火が通るまで炒めていったら、凍ったままのミックスベジタブルを投入。

ここで、顆粒コンソメと醤油、塩胡椒を入れて全体に馴染ませるように炒めていったら中身の具の完成だ。

具ができたところで、それを包む食パンの耳を切り取って軽く麺棒で潰す。

潰した食パンの周り1センチくらいを残して真ん中に具を載せて、残した1センチの部分に水で溶いた小麦粉を塗っておく。

上にかぶせるもう1枚の食パンも周り1センチくらいに水溶き小麦粉を塗ったら、具を載せた食パンの上にかぶせていく。

そして、水溶き小麦粉を塗って合わせた周りをフォークを使って押さえて閉じていく。

あとは全体にはけを使ってサラダ油を塗り、クッキングシートを敷いた天板にのせてオーブンで焼いていけば出来上がりだ。

うん、上出来上出来。

今思ったけど、具は前に作ったときの味付けにしたけど、ケチャップを使ってケチャップ風味にしたりカレー粉を使ってカレー風味の具にしても美味そうだな。

次に作る機会かあったら是非やってみよう。

おっと、そんなことはさておいて、今回の分をオーブンで焼いていこう。

天板をオーブンに入れて、点火。

少しするとパンの焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。

『お、おい、まだか? まだなのか?』

『あ~、この匂いたまんねぇ。腹減った~』

『いい匂い~。早く食べたいよー』

匂いに釣られてフェル、ドラちゃん、スイのトリオが集まってくる。

「もうちょっとな」

というかさ、そんな俺の真後ろでスタンバイしてなくったって、焼きあがったら出すってば。

もうちょい、もうちょい…………、よし、こんなもんかな。

オーブンを開けて、美味そうにこんがりきつね色に焼けた食パンピロシキとご対面したその時……。

「行けっ、行けっ!」「今のうちだ!」「早く!」という声とともにダダダッと滑り込むようにセーフエリアに駆け込んできた一団が。

俺もいきなりでびっくりしたけど、向こうさんもびっくりしてこちらをポカンとした顔で見ていた。