軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百六十七話 撤収早っ

「みなさん、お待たせしました」

そう声を掛けると、騒がしい声と足音が聞こえてきた。

『待ちわびていたのじゃっ! 早よう早ようっ、妾の甘味っ! 甘味ーっ!!』

ちょちょちょ、ニンリル様、興奮しすぎ。

『ちょっと、落ちつきなさいよニンリルちゃん』

『そうだぜまったく』

『……おバカ』

『ああはなりたくないのう』

『だなぁ』

みんな呆れてるじゃん。

まったく本当に残念な女神様だな。

「えーっと、それでは順次お送りしますのでお受け取りください。それじゃまずはニンリル様の分です」

ニンリル様用の段ボールを並べていく。

中には当然ニンリル様ご所望の大好物のどら焼きとケーキがたっぷりと入っている。

新作のケーキってことだったけど、ちょうど秋フェアとハロウィンフェアをやっていたからそこからのチョイスだ。

秋の味覚といえば栗ということで、新作の贅沢にも3種類のマロンクリームを使ったモンブランにふんだんに栗を使った栗のロールケーキ、そのほかにも国産リンゴを使ったアップルパイやリンゴを丸ごと1個使ったリンゴのケーキやラフランスをたっぷり使ったタルトなどをご用意。

密かに甘い香りが漂うそれは、並べきった途端に淡い光とともに消えていった。

「早っ……」

『うわぁぁぁぁぁん、しばらくぶりの異世界の甘味じゃーっ。グスッ、やっと、やっと、食べられるのじゃーっ! ありがとー!』

…………泣いてるやん。

そんな泣くほど堪えたならさ、いっぺんに食わずに計画的に食いなよ。

『ちょっとニンリルちゃん、ここで食べようとしないでよ。はしたない』

『うるさいっ。ずっと待ちわびていた甘味が手に入ったんだから今すぐに食べるのじゃ!』

『うわぁ、ニンリルのやつ両手に持ってかぶりついてるぜ』

『口の回りがクリームだらけ。汚い』

『おいおい、お主ら女神仲間じゃろ。あいつを何とかせい』

『そうだぞ。あの姿はさすがに引くわ』

『知らないわよそんなの』

キシャール様もアグニ様もルカ様もなんともしようがないのは分かるけど、酒好きコンビからもひどい言われようだぞ。

『ああもう、ニンリルちゃんは放っておいて次よ次、異世界人クン』

「い、いいんですか?」

『大丈夫でしょ。あなたからもらったケーキとかいうお菓子をむさぼり食べてるだけだし。そのうち満足するでしょ』

一応でも女神様がケーキをむさぼるって……。

『うわぁぁぁぁん、久しぶりのどら焼きもケーキも美味しいのじゃぁぁぁ』

……うん、さわらぬ神に祟りなしだね。

「ええと、進めますか。次はキシャール様ですね」

キシャール様用の段ボールを置いた。

当然中身は美容製品だ。

キシャール様のリクエストである、ご愛用のちょいお高めのスキンケア一式。

それから顔用の美容製品とのことだったので、美容成分がたっぷり入ったプレミアムなものを選んでみた。

その分値段もプレミアムだったけどね。

1つは、肌本来の美しさを引き出して滑らかでハリのある肌に導く美容液。

値段はなんと金貨1枚と銀貨4枚もした。

このお高めの値段にもかかわらず、その効果から人気の美容液なんだそうだ。

もう1つは、おすすめと出ていた美容オイルだ。

厳選された5種の天然植物オイル成分をブレンドした軽やかな付け心地の美容オイルで、艶と潤いのある柔らかな肌に導くとのこと。

馴染みの良いオイルで顔はもちろん髪や体にも使えるという。

何でも今女性の間では美容オイルが流行っているのもあって、今1番おすすめの商品とのことだ。

この美容オイルの値段も金貨1枚と銀貨4枚。

やっぱり美容製品ってのはいいお値段するよねぇ。

ま、これならキシャール様も満足してくれるんじゃないかなと思ってる。

段ボールが消えていったあと、キシャール様にプレミアムな美容液と美容オイルの説明をしたらかなり食いついてきたよ。

『効果が高い美容液と今1番オススメの美容オイルね! ありがとう、異世界人クン。フフフフフ、どっちも使うのが楽しみだわぁ。ところでこの美容オイル、これはどうやって使うのかしら?』

「ちょっと待ってくださいね」

ネットスーパーで見たときに確か使い方が商品説明のところに載ってたはずなんだけど……。

確認してみると、使い方が載っていた。

「えーとですね、オイルは使い方が何通りかあるみたいです。まず1つは洗顔のあとすぐに使うと肌が柔らかくなって化粧水の浸透を助けてくれるそうですよ。それから化粧水、美容液とつけてお手入れの最後にクリーム代わりにオイルを使うのもいいし、化粧水やクリームに混ぜて使うと保湿力が高まるってありますね。あとは、マッサージクリームの代わりにしてもいいそうです。いずれも1プッシュを基本にそのときの肌の状態によって使い方や量を調節してくださいって書いてありますね」

『へぇ~、いろいろと使えるものなのねぇ。これは早速今日からいろいろ使ってみて効果を試してみなきゃだわ。楽しみ~』

『もういいだろキシャール。代われよな』

『まったくアグニちゃんはせっかちなんだから』

焦れたアグニ様のご登場だ。

『次はオレだぞ。早くくれ』

「はいはい、アグニ様ですね」

アグニ様用の段ボールを並べていく。

中身はもちろんビールだ。

ご希望通りいつもの青い缶のS社のプレミアムなビールと金色の缶のYビスビールのほか地ビールの詰め合わせを2セットほど選んでみた。

その他にも海外のビールの詰め合わせに黒ビールやら新商品のビールやら、いろいろと入っているので、ビールが大好きなアグニ様にも満足してもらえるんじゃないかと思う。

そして、ビールに合う食いものも一緒にということで、アグニ様ご所望のホルモン焼きやホットドッグ、あと旅の間の飯として作った中から、揚げ物を数種みつくろってある。

『おおっ、こりゃ美味そうじゃねぇか! あんがとな! 帰ったら早速これで一杯やるぜ!』

こう言っちゃなんだけど、アグニ様って親父っぽい。

お会いしたことはないけど、どこぞの親父のようにホルモン焼きやら揚げ物をかっ食らってビールを豪快にゴクゴク飲んでいる姿が目に浮かぶようだよ。

『次は私』

お、ルカ様だな。

ルカ様の分はっと、これだな。

ルカ様用の段ボールを並べ終わると、すぐに消えていった。

中身はアイスとケーキだ。

いつもの不三家のカップアイスに今回はネットスーパーからもいろいろ選んでみた。

ちょいお高めのアメリカのアイスクリームブランドのアイスやら庶民派のお手頃価格のアイスまで、いろんなものを詰め込んだ。

ケーキもニンリル様同様に不三家の新作を中心に選んでみた。

それから、ご飯とのことで、俺が旅の間の飯として作ったものも一通り入れてある。

あ、昼間作ったホットドッグもな。

『アイスいっぱい。ケーキもいっぱい。ご飯もいっぱい。嬉しい。ありがと』

ルカ様の声が心なしか弾んでいるように聞こえるから、喜んでもらえたようだな。

良かった良かった。

『よっし、最後は儂たちじゃ!』

『どんと来い!』

何がどんと来いだよ、ったく。

酒好きコンビことヘファイストス様とヴァハグン様の分の段ボールを並べていく。

ウイスキーの瓶が詰まった段ボール箱はけっこうな重さだ。

いつもの国産メーカーの世界一のウイスキーのほかは、できるだけ多くの種類をというリクエストだったからとにかくいろいろ詰め込んでみた。

日本の国産ウイスキー、スコッチウイスキー、アイリッシュウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキー、手頃な値段のものを中心に片っ端から選んでみた。

「よっと。これで最後です。重いんで気をつけてくださいよ」

『分かったぞい』

ヘファイストス様のその言葉とともに重い段ボール箱が消えていった。

『ヒャッホウ! 儂らの注文どおりいろいろ入ってるわい。ありがとよ』

『なるべくいろんな種類って頼んだからな。しかし、こんだけありゃ飲みがいがあるってもんだぜ。感謝するぜ!』

『よしっ、今から飲むぞ戦神の!』

『望むところだ鍛冶神の!』

ドタドタと足音が聞こえてきた。

…………。

えー、早速飲みに向かっちゃったのか?

「あのー……」

『次は何にしようかの~。よし、このケーキじゃ!』

『……みんな帰った。ニンリルだけここにいてケーキ食べてる。私も家に帰ってアイス食べるから。じゃ、またね』

「あー、はい、ルカ様」

……撤収早っ。

ったく欲しいものが手に入って喜び勇んで家に帰るって子どもみたいじゃないかよ。

約1名その場で手をつけてるのもいるから、それよりはマシか。

「ま、とりあえずお供え完了ってことで。明日は早めにこの街出る予定だしさっさと寝よ寝よ」