軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百三十二話 フェルが何か企んでるようなんだけど

冒険者ギルドに入ると、すぐにギルドマスターがやって来た。

「おう、ちょうどいい。お前たちを呼ぼうかと思ってたところだったんだ」

「え? 何かあったんですか?」

「それがなぁ……」

最近になって、東の森近くでオークの目撃が多くなってきたこともあってCランク冒険者パーティーに偵察に行ってもらい、ちょうど今帰ってきたところだったのだそうだ。

偵察にいった冒険者たちの報告によると、東の森にオークの集落が見つかったということだった。

「集落が出来た場所が悪い。東の森の近くには村がいくつかあるんだが、そのうちの1つに近い場所なんだよ。そんで早急に対処しなきゃならんわけなんだが、今空いているのがBランクパーティーが1つにCランクパーティーが2つしかないんだよ。オークの集落殲滅の依頼をするにゃ、ちょっと心もとないと思ってな。あと2つくらいCランクパーティーが残ってりゃ良かったんだが。そこでだ」

ギルドマスターが俺の肩をガシっと掴んだ。

「お前、行ってきてくれるか?」

俺に拒否権ないでしょ。

肩ガッチリ掴んでるし、逃す気ないでしょギルドマスター。

『オークの集落だと? つまらん。却下だ』

フェルはギルドマスターにも知らせるように声に出してそう言う。

『雑魚オークを相手にすんのは俺も嫌だな』

ドラちゃんもオーク相手は嫌だと念話で伝えてくる。

『スイはビュッビュッってして戦えればいいよ~』

なぜか戦うことが大好きなスイだけはOKのようだ。

「…………おい、頼みの綱のフェンリルが嫌だと言ってるが、何とかならんか。お前の従魔だろ? 何とか説得して、行ってきてくれよ。頼むからさぁ」

頼むからさって言ってもねぇ。

「フェル、ドラちゃん、森に狩りへ行く途中にでもちゃちゃっと出来ないかな?」

『オークのような雑魚を相手にするのはつまらん』

『フェルに同意だ。雑魚を相手にしてもなぁ。そんなら森で強い奴見つけて狩った方がまだいい』

『うむ。狩りの方がオークなどよりマシな獲物が見つかるだろうからな。他の奴等に…………、待てよ、その依頼受けてもかまわんぞ』

「ん? 急に依頼を受けるってどういうことだ?」

『そうだぜ。雑魚オークだぞ』

急にOKしたのが気になるんだけど。

それに途中少し間があったしさ。

『ドラ、どうせ暇なのだ。今回は我の言うとおりにしてくれ』

『フェルがそう言うなら、いいけどよ』

「え? 本当に受けていいのか? 何か急に受けるって言い出したのが怖いんだけど」

『まぁ気にするな。フハハハハハ』

フェル、その笑い怖いぞ。

お前、何か企んでるよな?

「何かわからんが受けてくれるってことでいいんだよな?」

『うむ。その依頼受けてやろう』

「そうかそうか。ありがたい」

フェルが承諾したことで、ギルドマスターはホッとした顔をしている。

俺は胡乱な目でフェルを見た。

これ絶対に何か企んでるよねぇ。

『何だ? 受けてやろうと言っているのだ。問題なかろう』

フェルは俺に対していけしゃあしゃあとそう言ってのけたけどね。

ギルドマスターは俺たちに任す気満々だし、俺だって今さら断れないからこの依頼受けるけどもさ。

大丈夫かなぁ?

一抹の不安を残しつつギルドマスターからオークの集落についての詳しい情報を聞いていった。

そして、今からオークの集落に向かっても夜になってしまうということで、明日決行することで話はまとまった。

「それじゃあ、明日頼んだぞ」

「分かりました」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

翌朝―――。

しっかりと朝食をとって、いざオークの集落殲滅へ向かおうという段階になって……。

『おい、獣人の双子を連れて来い』

いきなりフェルがそんなことを言い出した。

「は? 何であの2人を?」

『オークの集落に連れて行く』

「連れて行くって、依頼に連れて行くってことか?」

『そうだ』

「だから何で?」

『うるさいぞ。いいから連れてくるのだ』

「連れてくるのだじゃなくて、何であの2人を連れて行くのか理由を言えっての」

『むぅ、とにかくだ、あの双子を連れて行かないのなら、我は依頼には行かんぞっ』

頑なに双子を連れて行くといって聞かないフェル。

「依頼に行かないって、受けるっていったのにお前……」

『フンッ、行かんからな』

まったくもう。

ギルドマスターにはこの依頼は今日中にやるからって言っちゃたんだから、やらないわけにいかないってのに……。

「しょうがないなぁ。今連れてくるから待ってろ」

仕方がないので、この時間なら家にいるだろう双子を呼びに向かった。

「おーい、ちょっといいか?」

ドアをノックして呼びかけた。

「あ、ムコーダさん。こんな朝早くからどうしたんだい?」

ドアを開けてくれたのはタバサだった。

タバサに家の中へと誘われたが、あまり時間もないということで断った。

「実はなぁ……」

冒険者ギルドでオークの集落殲滅の依頼を受けて今から向かおうとしていたところ、フェルが双子を連れて行くと言い出したことを話した。

「何でアタシの弟たちなのかはわからないけど、フェル様にもお考えがあるんだろう。それに、アタシらの主人はムコーダさんだ。理由があろうがなかろうが、ムコーダさんの言うことに否はないよ」

「警備の仕事もあるっていうのに、悪いね」

「いや。ムコーダさんのおかげで、今のところ悪さするようなヤツはいないからね。前は話があった商会の手下と思しき輩がこの家の周りをチョロチョロ動いてたけどさ。今はそれもパッタリなくなったしね」

タバサたちには、ラングリッジ伯爵という後ろ盾ができ、件の輩のことは何の問題もなくなったということは告げていた。

それでも母屋にいろいろ保管していることは変わりないので、警備の方は当然続行してもらっているわけだ。

「2人を呼ぶんで、ちょっと待っててくださいね」

タバサが「ルーク、アーヴィン、ちょっと来な!」と大声で呼んだ。

「何だよ姉貴~」

ルークとアーヴィンだけでなくペーターとバルテルも何事かと集まってきた。

「あんたたち2人は今日はムコーダさんに付いていきな」

タバサがそう言うと、2人は「は? 何で?」「俺たち2人だけ?」と不思議そうにしている。

「いやな、何かフェルがお前たち2人を連れて行きたいんだとさ。オークの集落殲滅の依頼受けてるんだけど、一緒に行ってくれるか?」

俺がそう言うと、ルークもアーヴィンも「行く行く!」と乗り気だ。

「ここでの生活は居心地いいけどよぉ、体が鈍ってしょうがなかったんだよなぁ」

「ああ。これで久しぶりに暴れられるぜ!」

2人が乗り気なのはいいけど、本当に大丈夫かな?

何やらフェルが企んでるようだったんだけど……。

久々に魔物相手に戦えると喜んでいるルークとアーヴィンを羨ましげにペーターが見ていた。

そんなペーターにバルテルがコソッとつぶやいているのが聞こえた。

「おい、ここにいた方が正解だと思うぞ。考えてみろ、Sランクのムコーダさんたちがオークの集落殲滅の依頼程度で助っ人を呼ぶと思うか? 絶対何かあるわい」

バルテル、さすが92歳。

伊達に年取ってないね。

フェルが何か企んでるのは間違いなさそうなんだけど、聞いても言わないからねぇ。

とりあえず2人を連れて東の森にあるオークの集落に向かうしかないわ。

「じゃ、2人を借りていくな」

「はい。2人ともムコーダさんやフェル様たちに迷惑かけんじゃないよ!」

「俺たちだってCランク冒険者だったんだから、そんなことするわけねぇだろ~」

「そうだぜ。姉貴は俺たちを何だと思ってんだかなぁ」

「フンッ、出来の悪い弟たちだから言ってんだよ。ムコーダさん、よろしくお願いします。言うこと聞かないようだったら、ビシバシ厳しくしてかまいませんので」

「い、いやぁ、2人ともCランク冒険者だったんだから大丈夫でしょう」

ルークとアーヴィンの2人を連れてフェルの下へ。

『よし、連れてきたな。では行くぞ』

俺たち一行は街を出るべく、まずは東の門へと向かった。