軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百十一話 使用人用の家

「それじゃ、みなさんにこれから住んでもらう家を案内しますんで付いてきてください。ロッテちゃん、もうちょっとだけ待ってね」

「しょうがないなぁ」

ロッテちゃんがプクっと頬を膨らませてそう言った。

それを見たお兄ちゃんのオリバー君が、ロッテちゃんの頭をパコンと叩いていた。

エーリク君はおろおろしてるし、父アルバンと母テレーザは平謝り。

仲が良さそうな家族で微笑ましいな。

微笑ましいけど、幸せ家族を築いているアルバンがちょっと妬ましいぜ。

みんなを引き連れ母屋を後にして、母屋の裏手にある使用人用の家へと案内した。

「これがみなさんに住んでもらう家です」

「え? ほ、本当に、この家に住めるのですか?」

トニが驚いた顔で確認してきた。

「ええ。これが使用人用の家ですから。生活の場にずっと他人がいるっていうのは、気が休まらないでしょうからね、お互いに」

俺としても、ずっと家の中に他人がいるってのは落ち着かないし気も休まらないからな。

母屋は俺たちだけで使うよ。

基本は昼間に仕事をするときだけ母屋に入ってもらうことにした。

「アンタ、前住んでた家よりずっと立派だよ……」

思わずといった感じで、テレーザがつぶやいた。

そのつぶやきに、トニ一家もアルバン一家もみな頷いていた。

「3棟並んでますが、左側の家を……」

使用人用の家は、みんな造りも一緒なのでこちらで割り振らせてもらった。

左側の1棟をトニ一家、真ん中の1棟をアルバン一家、右側の1棟を元冒険者の5人で使ってもらうことにした。

「男性ばっかりのところに女性1人入ることになるタバサには申し訳ないんだけど、部屋割りなんかで工夫してください」

「いや、申し訳も何もないですよ。こんな上等なところに住めるなんて思ってもみなかった。冒険者時代よりいい暮らしができそうですよ」

家を見て、タバサが心なしか嬉しそうにそう言った。

弟たちもいるとはいえ、男性陣の中に女性1人というのもどうかと思ったんだけど、トニ一家とアルバン一家のことを考えると、こういう割り振りにせざるをえなかった。

さすがに家族を分けて暮らさせるわけにもいかないしな。

「ムコーダさん、心配無用っす。姉ちゃんを襲う男なんていやしないですよ。ってか、襲うほどの気概があったら、是非とも嫁にしてやってほしいっすよ」

おいおいルーク、ひどい言い草だな。

確かに背も高いマッチョレディのタバサは、好みで別れるところではあると思うが、意志の強そうなハッキリした顔立ちで十分美人だとは思うぞ。

「だよなぁ。既に行き遅れだし、ペーターもバルテルも何なら襲っていいからな。その場合、嫁確定だけど。ガハハッ」

アーヴィンもたいがいひどいな。

「儂は嫁にするなら同族と決めておる」

バルテル、答えなくていいから。

ペーターは目をそらさない。

ルークとアーヴィンはバルテルとペーターの反応を見て大笑いしてるよ。

だけど、いいのかな?

後ろに般若がいるぞ。

ゴンッ、ゴツンッ―――。

ルークとアーヴィンが仲良くタバサに鉄拳制裁くらったよ。

この双子、アホだな。

気を取り直して家の中を案内する。

家の中は基本3棟とも同じだから、一番近くにあったタバサたちの家に入っていく。

「中はどの家も同じです」

みんなを引き連れて部屋の中を見ていった。

中はどの家も同じで3LDKだ。

普通に暮らす分には十分だと思う。

この3棟の家の前に井戸もあるから、水の確保も問題ない。

「あとはですね、各家には風呂もあります」

そう伝えると風呂に入ったことのあるらしい元冒険者たちの間から「おおっ」という声が上がった。

風呂がある家なんて商家か貴族くらいなもんだもんな。

トニ一家とアルバン一家なんて、きっと今まで風呂に入ったことすらないんじゃないかな。

「ただ、水の魔石と火の魔石が必要になるんで、それは後日支給します。風呂が使えるようになったら、なるべく入るようにしてくださいね。俺としても、清潔にしていてもらった方がいいんで」

そういうと、みんな頷いていた。

使用人用の家の風呂は、浴槽の脇にタンクがついていて、そこに水の魔石と火の魔石をセットして湯を作り給水するようになっていた。

家を買うときに聞いた話では、セットする魔石は小指の先のさらに小さな魔石で十分とのことだった。

それでも魔石は魔石でそれなりの値段になるから、風呂は使わずとも、近くに井戸があるから生活に支障はないということだった。

確かにそうだけど、風呂があるならぜひ使ってほしい。

風呂好きの日本人としては、風呂の気持ちよさをみんなにも味わってほしいところだしね。

「それじゃ、生活に必要と思われる品を支給品として渡していきます。ちょうどいいので、この家の分から」

使用人の家は、家具はあるけど、それ以外の生活用品がまったくそろっていなかった。

ネットスーパーを開いて買うのは、まずは各自の布団だ。

睡眠は大事だからな。

売っている中でも良さそうな布団一式とシーツ一式を選んでおいた。

石鹸やらシャンプーやらは、さっき購入したものをアイテムボックスから取り出した。

それから食器類やら、水汲み用のバケツ等々必要そうなものを購入した。

そしてこれも大事な歯磨きセットだ。

清潔にするなら口元も大事だからな。

この世界にも歯ブラシは一応あるのだが、木の繊維をほぐしたもので、あまり使い心地がよくない。

そんなだから、真面目に歯を磨く人がいなくて、虫歯に苦しむ人がけっこういるみたいなんだ。

たまにひどい口臭の人もいるしねぇ。

みんなに使い方も教えて、朝晩きちんと歯を磨くように伝えた。

アホの双子の片割れアーヴィンから「面倒くさい」という言葉が漏れたが、俺が「虫歯になって痛い思いをしたいなら、無理にとは言わないけどな。あと、口が臭い男は嫌われるぞ」と言ったら、自分の口臭を確かめて「ウッ」って呻いてた。

それを見てルークも同じ事やって「ウッ」って呻いてやんの。

思わず笑っちゃったぜ。

やっぱりこの双子アホだわ。

ちなみに俺は加護があるから虫歯にならないみたいだけど、気持ち悪いし口臭予防のためにも毎日磨いているぞ。

その後、トニ一家とアルバン一家にも同じものを支給して、あと足りないものは、その都度言ってほしいとみんなに伝えた。

家の案内もして支給品も渡したし、あとは母屋で飯だな。

とりあえず、生活が落ち着くまでは俺が飯を出すつもりでいる。

落ち着いたら、材料と調味料類を渡して各自作ってもらうけどな。

今日は初日でもあるし、元気付けのためにちょっと豪勢にいくつもりだ。

アイヤとテレーザは調理補助をしてもらう。

と、その前に……。

母屋に戻ったところで、まずはアイヤの回復だな。