軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百九十二話 やっぱりドラゴンはパネェ

ウゴールさんに言われた通り、昼過ぎにフェルとドラちゃんとスイを伴って冒険者ギルドに向かうと、すぐさま倉庫へと案内された。

「ムコーダさん、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

倉庫に入ると、奥の方でウゴールさんとエルランドさんが待ち構えていた。

『おい、我らはあそこの空いてる辺りにいるぞ』

そう言うと、フェルとドラちゃんが倉庫の空いてる場所に陣取った。

『あるじー、スイもフェルおじちゃんたちと一緒にいるねー』

スイが革鞄からポンと出ると、フェルたちのほうへ向かっていった。

「じゃ、俺はあっちで話してるから、みんな大人しくしててな」

俺はゆっくりとウゴールさんとエルランドさんが待つ方へと歩いていった。

「エルランドさん、どうしたんですか?」

エルランドさんの目の下にはくっきりと濃いクマができていた。

「お気遣いなく。この馬鹿マスターは私の言うことも聞かないで徹夜したんですよ」

ウゴールさんの話では、エルランドさんに 赤竜(レッドドラゴン) の解体を任せたところ、解体に入る前にじっくり検分し始めたそうなんだ。

だけど、俺との約束もあるしウゴールさんは「早く解体を」ってせっついたらしい。

エルランドさんも渋々ながら解体を始めたらしいんだけど、検分しながらだから時間がかかったみたいだ。

「私も鬼ではないですからね。徹夜してまでやれとは一言も言っていないのですよ。だいたい解体だけなら、そんなに時間だってかからないはずなんですからね」

「何言ってるんだいっ、ウゴール君! 赤竜(レッドドラゴン) の解体なんてこんなチャンス滅多にないんだから、じっくりいろいろと確認したいじゃないかっ。それなのに君が……。しょうがないから徹夜でやったんじゃないか」

あー、そういうことか。

ウゴールさんに抗議してるけど、エルランドさんは結局ドラゴンのために徹夜したってことね。

まぁ、それはエルランドさんが自分でしたことだししょうがないんじゃないかな。

寝ずに仕事やらされたのかと思ってちょっと同情して損したわ。

「ハァ……。この馬鹿マスターのことは放っておいて、 赤竜(レッドドラゴン) の素材の内訳を説明させていただきたいと思いますが、よろしいですか?」

おう、さすがウゴールさん。

エルランドさんの話はぶった切ってきたね。

ぐぬぬとエルランドさんが悔しそうに唸ってるけど、いろいろとしでかしてるあなたのせいだと思うよ。

「まずは肉ですが、肉の方はムコーダさんがすべてお引取りされるということで、今は冷蔵所で保管しております。後ほどお渡しいたしますので」

うん、肉はうちにとって1番大事だからしっかり回収していくよ。

地竜(アースドラゴン) の肉がめちゃ美味かったから、 赤竜(レッドドラゴン) の肉も大いに期待している。

「それから血ですね。ここにありますが全部で227本です」

作業台の上にズラリと並んだ赤い液体の入った瓶。

たくさんあるなぁとは思ったけど、227本ですか……。

あの巨体からだとそれくらい採れても不思議じゃないけど、それにしても大量過ぎ。

「あとは、こちらの壺に肝などの内臓類です」

内臓類が入った壺もズラリと並んでいた。

確かエリクサーの材料になったり、何やかやでどれも利用価値があるって話だったんだよな。

「そして、あちらにあるのが残りの素材になります」

ウゴールさんの指差す方を見ると、別の作業台の上に牙やら骨やら皮やら、そして今まで見てきた中で1番大きな魔石がデンっと置いてあった。

うん、1つ1つが無駄にデカイね。

「それでですね、こちらで買取させていただきたい素材なのですが……」

ウゴールさんがまず買取たいと言ってきたのが血だ。

それを25本買取たいとのことだった。

227本あるうちの25本だから、そうでもなさそうに見えるけど、この間の 地竜(アースドラゴン) のときは2本だったはず。

25本は少し多過ぎやしないかと心配していると、ウゴールさんが理由を教えてくれた。

「この間の 地竜(アースドラゴン) の血なのですがね、それなりの高値で売り出したにもかかわらず瞬く間に売れたのですよ。それに加えて、他にはないのかという問い合わせが方々から山のようにきましてね。それを考えると、この 赤竜(レッドドラゴン) の血も売れること間違いなしですよ」

ウゴールさんはそう力強く答えてくれた。

確かドラゴンの血は万能薬のようなもんだって話だったから、欲しがる人はいくらでもいるのかもしれないな。

「そしてですね、これは1瓶金貨160枚で買い取らせていただきたいと考えております」

1瓶金貨160枚ね。

何か最近これくらいの値段聞いても驚かなくなってきたよ、ハハハ。

「それから肝ですね。今回は丸のまますべて買取させていただこうと思います。この間の 地竜(アースドラゴン) の肝もさるお方が驚くほどの金額を出して買われていったんですよ。 赤竜(レッドドラゴン) の肝ともなれば、どれだけ金額を積んでも欲しいという方がおられるでしょう。それに今回は半分とは言わず、丸のままですからね。ムコーダさんのおかげで、ここドランの冒険者ギルドの資金も潤沢ですからね。ハハハハハ」

うん、この 赤竜(レッドドラゴン) の素材もそれはそれは高値で売られていくんだろうね。

ウゴールさんがご機嫌になるのも分かる気がするよ。

「この肝は1つで金貨3700枚でお願いしたいと思います」

き、肝1つで金貨3700枚也。

やっぱりドラゴン素材、パネェな。

その後の買取も、心臓やら肺、目玉と続いた。

ウゴールさんによると、ドラゴンの内臓類は様々な薬(それも効き目抜群)になるため、高額でもみな競って買っていくという話だった。

どんな薬になるのかわからないけど、ドラゴンの内臓で作った薬なんて生臭そう。

俺だったら飲む気しないけどなぁ。

そんなに売れるならと、在庫で残ってる 地竜(アースドラゴン) の内臓も買いませんか?ってウゴールさんに売り込んでみたんだけど、「買取できるものならしたいところですが、さすがにそこまでの資金はちょっと……」と断られてしまった。

残念である。

「それから最後が牙です」

「ウゴール君っ、やっぱり君はさすがだよっ」

ウゴールさんが牙を買取ると言ったら、今まで大人しくしていたエルランドさんがなんだか復活した。

「何を言っているんですか馬鹿マスター。この牙はあなたのために買うわけではありませんからね。当然売りに出しますよ」

「そんなぁーーーっ」

ウゴールさんの取り付く島もない物言いに、エルランドさんがガックリと肩を落としている。

この人、この前売られちゃった 地竜(アースドラゴン) の代わりとか思ってたのかな?

エルランドさん、世の中そんな甘くないと思うぞ。

「ハァ、この人は放って置きましょう。それでは、血が25本で金貨4000枚、肝が1つで金貨3700枚、心の臓が金貨4000枚、肺臓が2つそろって金貨3600枚、目玉も2つで金貨1700枚、最後の牙1本が金貨3000枚で買取の合計金額は〆て金貨20000枚ということになりますが、よろしいでしょうか?」

金貨2万枚か、ハハハ。

フェルたちのおかげでどんどん金が入ってくるもんだから、多少は耐性がついてきたな。

「はい、それで大丈夫です」

「前と同様に白金貨でご用意させていただきました。白金貨200枚です。お確かめください」

そう言ってウゴールさんが、麻袋を差し出した。

中を検める。

数えるときっちり200枚の白金貨だ。

「はい、間違いないです」

「今回もいいお取引ができました。ムコーダさん、本当にありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ。ドラゴンの解体をお願いできるのはここのギルドだけですし。買取も多くしていただけたので助かりましたよ。それでは、残りの素材はこちらで……」

回収させていただきますと続けようとしたそのとき、割って入る声が。

「ちょっと待ってくださいッ!」

声を上げたのはエルランドさんだった。

「馬鹿マスター、何大声を出しているのですか?」

ウゴールさんも呆れた顔をしている。

「ウゴール君っ、自分で、私自身が買うならば文句はないよねっ?!」

「 赤竜(レッドドラゴン) の素材をですか? そりゃそれ程の金があるというのなら、ご自分の金ですから自由になさったらいいんじゃないですか。あるならば、ですけどね。それともちろんムコーダさんも承諾なさったらですよ」

エルランドさん、ウゴールさんがコイツ何言ってんだって顔してるよ。

いくらエルランドさんがドラゴン好きだからって言っても、さすがに俺だって 赤竜(レッドドラゴン) の素材をタダではあげられないぞ。

「フフフフフ、お金ならあるもんね~」

エルランドさんがニヤニヤしながらそう言った。

…………あっ、エイヴリングのダンジョンの分け前。

あちゃー、エルランドさん、白金貨50枚持ってるんだった。

「ムコーダさんっ、私に 赤竜(レッドドラゴン) の牙を売ってくださいっ!」

自分のアイテムボックスから麻袋を出して俺に差し出しながらエルランドさんがそう叫んだ。

「え? いや、あの……」

ウゴールさんがこっち見てるよ。

目力がすごいんだけど。

「お願いします! 私に 赤竜(レッドドラゴン) の牙を!」

「いや、えっと、落ち着いてください、エルランドさん」

「お願いですから~」

エルランドさんが必死の形相で俺にすがり付いてくる。

「一生のお願いです! 私に、私に 赤竜(レッドドラゴン) の牙を売ってくださいー!」

「だから、落ちついてくださいって」

「お願いですから~」

「ちょっ、ちょっと、エルランドさん!」

「 赤竜(レッドドラゴン) の牙をーっ」

「わ、分かりましたからっ。う、売りますって」

結局、エルランドさんに根負けしてしまった。

「やった! ありがとうございます、ムコーダさんっ」

いいおっさんが小躍りしてはしゃいでいるよ。

「それじゃ、これが代金です」

エルランドさんが麻袋を差し出してくる。

中を覗くと、俺が渡した白金貨50枚がそっくりそのまま残っていた。

「エルランドさん、これ多過ぎですよ」

さっきギルドが買取した牙だって金貨3000枚なんだぞ。

白金貨20枚分多いわ。

「あ、それならその余分なお金で 赤竜(レッドドラゴン) の爪も売ってください! 是非ともお願いします!」

……もう何も言うまい。

この人のドラゴン好きも極まった感じだよ。

自腹で超高額なドラゴンの素材買っちゃうんだもん。

しょうがないから爪も売ったよ。

「ウフフフフフ。 赤竜(レッドドラゴン) の牙と爪ですよ。こんなすごいものが私だけの物だなんて……、幸せですね~」

このエルフのおっさん、さっきから独り言言いながら 赤竜(レッドドラゴン) の牙と爪に頬ずりして一人悦に入っている。

エルランドさん、さすがにそれは引くわ。

そんなエルランドさんをウゴールさんがかわいそうな人を見る目で見ていた。

「ウゴールさん、すみません……」

「いや、ここぞというときはあの馬鹿マスターもしつこいですからね」

ウゴールさんが遠い目をしているよ。

いろいろあったんだろうね。

「ご苦労お察しします」

一人悦に入るエルランドさんを放って、ウゴールさんから 赤竜(レッドドラゴン) の肉を含めた残りの素材を受け取った。

「それでは……」

心の中でウゴールさんがんばってと応援する。

近いうちに美味しいもの差し入れしますんで。

なんかやたら疲れたな。

早く帰ろ。

フェルとドラちゃんとスイがいる方に向かうと、みんなすっかり昼寝モードだった。

「みんな、帰るよー」

みんなに声を掛けるとムクリと起き出した。

『やっと終わったか。おい、肉はしっかり受け取ったんだろうな?』

「ああ、もちろんだ」

『よし、早く帰ってその肉を食うぞ』

『 赤竜(レッドドラゴン) の肉か。美味そうだな!』

『ドラゴンのお肉ー』

みんな 赤竜(レッドドラゴン) の肉を食う気満々だ。

こりゃ帰ってもゆっくりできないな。

トホホ。