作品タイトル不明
第二百九十話 ウゴールさんには逆らうな
翌日、冒険者ギルドに行くと―――。
窓口でエルランドさんを呼んでくれるよう伝えると、ギルドマスターの部屋へと案内された。
「エルランドさん……」
いたよ、エルランドさん。
まぁ、ギルドマスターの部屋なんだからいて当たり前なんだけどさ。
死んだ魚のような目をして机に向かってもくもくと書類仕事をしてた。
ウゴールさんの監視付きでね。
「ムコーダさん、ようこそいらっしゃいました。この馬鹿マスターから話は聞いております。今度は 赤竜(レッドドラゴン) をお持ちいただいたようで」
ば、馬鹿マスターですかい。
ウゴールさんのエルランドさんの扱いがひどくなってるね。
まぁ、エルランドさんの自業自得だし、ウゴールさんの気持ちも分かるけどさ。
「は、はい。 赤竜(レッドドラゴン) の解体と、買取していただけるものがあるのでしたらお願いしたいなと思いまして……」
「もちろんですよ! いやぁ、この間買取させていただいた 地竜(アースドラゴン) の素材、すべて高値で売れましたよ~。ダンジョン産の品々もそうでしたが、 地竜(アースドラゴン) でも、このギルドは大分稼がせていただきました」
相当な利益が出たのか、このときばかりはウゴールさんもニコニコ顔だ。
「ウゴール君の鬼っ! 悪魔っ! 私の夢のドラゴンソードにしようと思っていた 地竜(アースドラゴン) の牙まで売っちゃうなんてっ!」
机の向こう側からエルランドさんが泣きそうな顔でウゴールさんを非難した。
あ、ウゴールさん、さっき 地竜(アースドラゴン) の素材すべて売ったとか言ってたな。
ということは、エルランドさんが後生大事にしてた牙も売っちゃったんだ。
「フンッ、何とでも言いなさい。自分勝手な行動をしたあなたが悪いんですよ。 地竜(アースドラゴン) の牙は売りに出したら、すぐに売れましたよ。しかも驚くほどの高値でね」
「ウワァァァァンッ」
エルランドさんが涙をボロボロこぼして泣いていた。
エルランドさん、いくら美形エルフでもおっさんの泣き顔なんて見たくないぞ。
よって放置だ。
「あの馬鹿マスターは放っておいて……。ムコーダさん、 赤竜(レッドドラゴン) なら 地竜(アースドラゴン) よりさらに高値がつくことは間違いなしです。是非ともこちらで買取させてくださいね」
「はい。それじゃ早速解体をお願いしてもいいですか?」
「もちろんですよ。それじゃ倉庫に行きましょう。馬鹿マスター、倉庫に行きますよ」
「 赤竜(レッドドラゴン) を解体できるんだね!」
エルランドさんがそう言って笑顔を見せた。
赤竜(レッドドラゴン) の解体と聞いて、もう泣き止んでたよこの人。
調子がいいというか何というか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それじゃここに出してください」
エルランドさん、ニコニコ顔で「早く、早く」と急かしてくる。
地竜(アースドラゴン) の解体のときの大きな作業台の上に 赤竜(レッドドラゴン) を出した。
「おお~」
「これが 赤竜(レッドドラゴン) ……」
エルランドさんもウゴールさんも、作業台の上の 赤竜(レッドドラゴン) に目が釘付けだ。
「フェルの話だと、この 赤竜(レッドドラゴン) はまだ若い成体で、これでも小さめらしいです」
「これで……」
俺の話を聞いてウゴールさんが驚いている。
12、3メートルある巨体で小さめっていうんだからな。
ウゴールさんが驚くのも分かるよ。
エルランドさんは一人悦に入っていて、「 地竜(アースドラゴン) に続いて 赤竜(レッドドラゴン) の解体もこの手でできるなんて、なんて私は幸運なんでしょうね……」なんてつぶやいてるよ。
「それで、解体にはどれくらい時間かかりそうですか?」
「そうですねぇ、隅々までじっくり確認させていただきたいので、やはり3日は欲しいですね」
エルランドさん、 地竜(アースドラゴン) のときも隅々までじっくりとか言ってたよね。
ドラゴン好きからしたら、いろいろ確認したいんだろうけど、言い方が一々キモイです。
「馬鹿マスター3日も時間をかける必要はありません。あなたなら1日でできるでしょう」
「ウ、ウゴール君、何を言ってるのっ。3日かかるよ! いろいろ確認したいんだから!」
「確認したい? 赤竜(レッドドラゴン) を眺めていたいの間違いでしょ。仕事も詰まっているんですから、1日で終えてください。異論は認めません」
ウゴールさんがピシャリとそう言うと、エルランドさんは顔を顰めながら「ぐぅぅ」と唸っていた。
一応エルランドさんも自分に非があるのは分かっているようで反論まではしなかった。
ま、したら大変なことになるだろうけど。
「あ、買取らせていただくものも私が決めますからね。馬鹿マスターに任せると、自分の欲望のまま決めてしまいますから」
「ぐっ……」
ウゴールさん、ごもっともです。
ウゴールさんの正論にエルランドさんあえなく撃沈。
「ムコーダさん、明日の昼過ぎには解体も終わらせて、どの部分を買取させていただくかも決めておきますので、明日の昼過ぎにまた来てください」
「は、はい……」
ウゴールさんには誰も逆らえませんな。