軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百七十一話 解せぬ

『……い……きろ……』

『……はら……いい……』

『……じ……おな……』

声が聞こえる。

でも、眠いんだ……。

まだ寝ていたい。

たまにはいいよな。

『おい、起きろっ』

「グエッ」

腹に圧迫感を感じて跳び起きた。

見ると、フェルが俺の腹の辺りを前足で踏みつけていた。

「フェ~ル~」

俺がフェルを恨めしそうな顔で見ても、どこ吹く風だ。

『おい、腹が減ったぞ。早く飯の用意をいたせ』

『そうだぞ。俺も腹減った』

『スイもお腹空いたのー』

やっぱりこうなるか……。

俺の宿命なのか。

ガックリ。

腹を空かせたみんなをそのままにするわけにもいかず、しょうがない朝飯の支度をと思ったら部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。

「ムコーダさーん。起きてますかー? エルランドです。開けてくださーい」

ぐぬぬ、こいつ絶対に朝飯時だと分かって来てやがるよな。

「ムコーダさーん」

うるせー。

こんな朝っぱらから居留守を使うわけにもいかず、仕方なしにドアを開けた。

「いやー、朝早くからすみません。もしかして、朝食時でしたか?」

チラチラ奥の方を見てエルランドさんがそう言った。

エルフは美味い物好きとはいえ、このエルフのおっさん、だんだん遠慮がなくなってきてるぞ。

「いや、これから作ろうかと」

「そうでしたかぁ~、私もご相伴してもいいですか?」

これからのこともあるし、断れないところがまた何ともね……。

しかも、どのみちこれからフェルたちの朝飯は作らなきゃいけないし、エルランドさんの分も一緒に作ってもたいして労力は変わらないっていうのがね。

このおっさん絶妙のタイミングで来やがるからな。

「……はい」

こう言うしかないわな、はぁ。

「いやー、ムコーダさんの美味しいご飯が朝からいただけるとは幸せですね~」

はいはい、それは良かったですね。

ったく、面倒だけどちゃっちゃと作っちゃいますか。

俺は窓を開けてこの部屋専用の庭に出た。

1階にあるこの従魔と泊まれる部屋は、従魔と一緒ということもあって、小さいが専用の庭が付いている。

そこに魔道コンロを出してと。

『おい、我は肉がいいぞ』

『お、いいな。俺も肉がいいぜ』

『スイもお肉食べたーい』

フェルもドラちゃんもスイも肉がいいと言い出した。

「朝からガッツリ肉ですか、いいですね~」

フェルが声に出していたもんだから、それを聞いたエルランドさんも同調してそんなことを言っている。

見た目は完全にベジタリアンなんだけど、朝からガッツリ肉でも全然OKみたいだ。

そういうことなら、みなさん希望の肉にしますか。

でも、面倒だから簡単なもんだけどな。

今日は朝からステーキサンドだ。

とりあえずネットスーパーで材料を調達していく。

ステーキ醤油は残ってるから、レタスにバター、和がらし、あとは食パンを購入。

肉はゴールデンバックブルの肉を使うことにした。

何の肉にしようか選んでいるときに、在庫を確認したらワイバーンとブラッディホーンブルの肉が大分少なくなっていた。

この街に滞在しているうちに使い切っちゃうかもしれないな。

何だかんだでベルレアンの街でもそれほど肉は調達できなかったし。

地竜(アースドラゴン) の肉は極上品だから特別なときに食うようにしたいし、 赤竜(レッドドラゴン) は解体が済んでないし。

ネイホフの街で調達したオークの肉と、ここのダンジョン産のスッポンとヘビ肉はたっぷりあるんだけどね。

ま、切羽詰まっているというわけでもないから、肉のことはおいおい考えることにしよう。

今は朝飯をさっさと作らないとな。

熱したフライパンに油をひいて、軽く塩胡椒をした比較的赤身の多いゴールデンバックブルの肉を焼いていく。

焼けたら皿にとって、アルミホイルをかけて5分くらい置いておく。

余熱で中まで火が通って柔らかい仕上がりになるからな。

赤身肉はこの焼き方に限る。

その間に食パンをオーブンで軽くきつね色になるまで焼いていく。

焼き上がった食パンの1枚にはバターをぬってもう1枚には和がらしをぬる。

バターをぬった食パンにあらかじめ洗ってちぎっておいたレタスと余熱で火をとおしたステーキにステーキ醤油玉ねぎ風味をかけて味を馴染ませたものを載せて、和がらしをぬった食パンで挟んだら出来上がりだ。

うん、美味そうな出来だ。

朝からガッツリ過ぎるかと思って、俺の分は適当にハムサンドにでもしようかと思ったけど、見たら食いたくなってきたぜ。

ステーキサンドを大量に作っていると、エルランドさんから声がかかった。

「素晴らしい手際の良さですね~」

うん、それは最近俺も実感してるよ。

なんかすごく料理の手際が良くなったってさ。

この世界にきてから何だかんだと料理作り続けてきてるからなぁ…………あ。

そういや、俺のステータスの職業欄になぜか料理人ってのが増えていたんだった。

もしかして、その恩恵もあるのか?

嬉しいような悲しいような、何とも複雑な気分だね。

だってさ、俺、料理人じゃないし。

ま、何がしか恩恵があるみたいだし、それで不利益になって無きゃ別にいいんだけどさ。

そうこうしているうちに大量のステーキサンドが出来上がった。

それをフェルたち用の皿に盛り、100%のオレンジジュースとともに出してやった。

「はい、出来たぞ」

フェルとドラちゃんとスイに出してやると早速かぶりついている。

「エルランドさんもどうぞ」

「おお、ありがとうございます」

フェルたちの分は切らないでそのまま出したけど、俺とエルランドさんの分はさすがに食べにくいから半分に切ってある。

食パンの耳を切り落とすのも面倒だからそのままだ。

早速ステーキサンドにかぶり付く。

ステーキの肉汁が口に広がる。

うん、美味い。

和がらしのピリッとした辛さも良いアクセントになっているな。

「おお、やっぱりムコーダさんのご飯は美味しいですね~。この肉汁たっぷりの肉も美味しいですが、このソースも素晴らしい」

エルランドさんがボリューム満点のステーキサンドの半分を食べ切った後にそう言った。

『うむ。これは美味いぞ。ピリリとするのもいいな。おい、おかわりだ』

ピリリっていうのは和がらしね。

ステーキサンドを和風の味付けにするなら和がらしは必須だよな。

って、食うの早いってフェル。

作っておいたステーキサンドをフェルの皿に追加で載せて出してやる。

『やっぱ肉は美味いな~。このソースがパンと馴染んでパンも美味いぞ。俺もおかわりだ』

『うん、おいしーね~。スイもおかわりー』

そう言うドラちゃんとスイにも追加のおかわりを出してやった。

散々おかわりして満足したらしいフェルたちは、部屋の中に敷いたフェル用布団に集まって寝っ転がっていた。

いい気なもんだね~。

俺も寝たいけど、明日は冒険者ギルドに行かなきゃいけないしね。

さっさとここを片付けたら、ダンジョンのドロップ品の整理をしないとな。

「それじゃ、私は自分の部屋に……」

「エルランドさん、どこ行く気ですか?」

ギクリとして振り返るエルランドさん。

「ドロップ品の整理は何が何でも手伝ってもらいますからね。すぐに片付けますから、待っててください」

まったく油断も隙も無いんだから。

ウゴールさんの日頃の苦労も分かるってもんだよ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ふぅ、終わった……」

「やっと終わりましたね、はぁ……」

ドロップ品の整理が終わって、俺とエルランドさんはようやく一息ついた。

2つのマグカップに常備している紅茶を入れて、1つをエルランドさんに渡した。

「ふぅ、生き返りますね」

「ええ」

ドロップ品の整理だが、とにかく数が多くて大変だった。

特殊個体が多く出る時期に当たったっていうのもあるだろうけど、数だけならドランのダンジョンのドロップ品よりも多いかもしれない。

何にしても明日には冒険者ギルドに行く約束をしているから、今日中に整理しておかなきゃならないってことで、昼飯を作ってる暇もなかった。

だから今日は久々に菓子パンでの飯だ。

フェルとドラちゃんは肉じゃなくて少々不満そうだったけど、甘い物大好きなスイは喜んでたぞ。

それにエルランドさんもね。

「パンにこのような食べ方があるとは……。パンとは甘くしても美味しかったのですね!」

とか言ってえらく感動しながら食ってたぞ。

まぁ、そんな感じで昼飯も簡単に済ませて、ドロップ品整理に明け暮れた。

そして、ついさっき完了したってわけだ。

「ある程度整理はついたんで、あとは特殊個体の分のドロップ品ですね。その辺はフェルに頼んで今晩やっておきますよ」

「ここのギルドにも簡易鑑定のマジックアイテムはあるので、お願いしてもいいのですが、そうするとかなりの時間がかかってしまうでしょう。それならば、ある程度分けておいたほうが買取の時間も少なくて済みますし得策でしょう」

そういう話ではあるんだけど、実はもう分けてあるんだよね。

俺も鑑定できるし。

エルランドさんに気付かれないように、特殊個体のドロップ品も分けて数も把握しているから大丈夫。

俺とエルランドさんが1日かけて整理したドロップ品のリストがこんな感じだ。

腐食液×34

スケルトンの骨の欠片×26

ホワイトキャタピラーの糸×138

グレイキャタピラーの糸×30

痺れ薬×16

キラーアントの顎×163

キラーアントナイトの外殻×24

キラーアントクィーンの目×1

キラーアントクィーンの魔石(小)×1

キラーマンティスの鎌×61

ジャイアントキラーマンティスの鎌×34

ジャイアントキラーマンティスの魔石(極小)×12

ジャイアントキラーマンティスの複眼×3

キラーホーネットの毒針×348

キラーホーネット(特殊個体)の毒針×38

キラーホーネットの羽×134

キラーホーネット(特殊個体)の羽×27

キラーホーネットのローヤルゼリー×1

キラーホーネットクィーンの毒針×1

キラーホーネットクィーンの魔石(小)×1

ヴェノムタランチュラの糸×128

ヴェノムタランチュラ(特殊個体)の糸×38

ヴェノムタランチュラの毒袋×92

ヴェノムタランチュラ(特殊個体)の毒袋×20

キラーキャメルクリケットの歯×72

キラーキャメルクリケットの触覚×42

キラーキャメルクリケットの麻痺毒×25

ジャイアントキラーキャメルクリケットの歯×28

ジャイアントキラーキャメルクリケットの触覚×19

ジャイアントキラーキャメルクリケットの麻痺毒×6

キングキラーキャメルクリケットの魔石(中)×1

ヴェノムセンチピードの毒×46

ジャイアントセンチピードの外殻×30

ジャイアントセンチピードの魔石(小)×10

ジャイアントコックローチの触覚×98

ジャイアントコックローチの外殻×207

ジャイアントコックローチの鉤爪×179

ジャイアントコックローチの麻痺毒×78

ジャイアントコックローチの魔石(極小)×21

金の塊×572

ギガントコックローチの外殻×5

ギガントコックローチの鉤爪×3

ギガントコックローチの魔石(中)×3

グールの毒爪×70

闇玉(ダークボール) ×68

カースソード×3

ビッグバイトタートルの肉×182

ビックバイトタートルの血×84

ビッグバイトタートルの甲羅×81

ジャイアントバイトタートルの肉×5

ジャイアントバイトタートルの魔石(小)×2

ビックブロンズイグアナの皮×46

ビックブロンズイグアナ(特殊個体)の皮×10

ビックブロンズイグアナの肝×38

ビックブロンズイグアナ(特殊個体)の肝×6

レッドキラークロコダイルの歯×42

レッドキラークロコダイルの皮×40

ジャイアントレッドキラークロコダイルの皮×1

ジャイアントレッドキラークロコダイルの魔石(大)×1

ブラックアナコンダの皮×29

ブラックアナコンダの肉×36

タイラントブラックアナコンダの皮×1

タイラントブラックアナコンダの肉×1

タイラントブラックアナコンダの魔石(大)×1

スカベンジャーリザードの皮×48

スカベンジャーリザードの出血毒×64

ブラックサーペントの皮×52

ブラックサーペントの肉×39

ブラックサーペントの魔石(中)×23

レッドサーペントの皮×8

レッドサーペントの肉×11

レッドサーペントの魔石(大)×2

クリムゾンアスプの皮×39

クリムゾンアスプの毒×35

クリムゾンアスプの魔石(大)×18

クリムゾンアスプの肉×24

キングクリムゾンアスプの皮×1

キングクリムゾンアスプの牙×1

キングクリムゾンアスプの肉×1

キングクリムゾンアスプの魔石(特大)×1

マミーの包帯の切れ端×18

スケルトンウォーリアの骨の欠片×15

スケルトンメイジの骨の欠片×8

リッチの魔石(小)×12

エンペラーリッチの不死王の王冠×1

エンペラーリッチの魔石(特大)×1

ヒュドラの皮×1

ヒュドラの魔石(超特大)×1

ヒュドラ(ダンジョンボス)の宝箱×1

宝箱の宝石類

金の延べ棒×15

金貨×3000枚

ルビー(小粒)×2

サファイア(中粒)×1

ダイヤモンド(中粒)×1

ダイヤモンド(小粒)×1

エメラルド(大粒)×1

オパール(中粒)×1

アメシスト(中粒)×2

アクアマリン(大粒)×1

宝箱にあったマジックアイテム

ポイズンナイフ×1

ヴァンパイアナイフ×1

マジックバッグ(特大)×1

とにかく数が多かった。

それだけで整理するのも一苦労だった。

特に昆虫ゾーンのドロップ品は多かったなぁ。

黒光りするあいつのとか。

(もちろんあいつのドロップ品に触れるときには軍手を着用だ。)

エルランドさんとの話し合いで、このリストの中の肉はすべて俺が引き取らせてもらうことになっている。

それから、ヴァンパイアナイフとマジックバッグ(特大)も何とか俺の方で引き取らせてもらえないかと話してみたところ、あっさり承諾してくれた。

「私はほとんど働いてなかったですからね、ハハ。というか、私がいなくてもムコーダさんたちは問題なくこのダンジョンを踏破していたでしょうし。そんな私が口を出すのもおこがましいですよ」

とのことだった。

俺としては、ヴァンパイアナイフとマジックバッグ(特大)を譲ってもらえるなら、手持ちのマジックバッグ(中)を手放して、なおかつダンジョンドロップ品の買取代金の3分の2をエルランドさんに渡してもいいと考えていたんだけどな。

マジックアイテムは高いし、ヴァンパイアナイフとマジックバッグ(特大)にはそれだけの価値があると思うし。

もちろん買取に漏れたドロップ品は2人で山分けしてさ。

それを話したら、エルランドさんに「そんな泥棒みたいなまねできませんよ」と強く断られてしまった。

エルランドさんとしては、エイヴリングの冒険者ギルドで買取してもらったあとにドランの冒険者ギルドでもドロップ品の買取をさせてほしいってことと、 闇玉(ダークボール) をいくつか譲ってほしいということ、老後の資金としてヒュドラの宝箱から出た宝物の3分の1くらいもらえれば十分とのことだった。

でも、それだとエルランドさんの取り分が非常に少なすぎて俺が納得できないし。

戦闘については、確かにフェルとドラちゃんとスイが主体ではあったけど、元冒険者のエルランドさんから教えられることもたくさんあった。

それで助けられた部分も大いにあったわけだし。

そういうわけで、ドロップ品の買取代金の半分っていうと今の感じだと拒否されそうだから、3分の1は渡そうと考えている。

感謝の気持ちとしても、一緒にダンジョンに潜った仲間としても、それくらいのことはしたいし。

「ムコーダさん、今日の夕ご飯は何ですか? 私もうお腹が空いて空いて」

…………エルランドさんェ。

今、あなたについていいこと考えていたってのに、台無しだよっ。

この後にフェルたちからも腹が空いた攻撃を受けて、夕飯にしたよ。

当然のようにエルランドさんもいたけどね。

解せぬ。