軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百五十二話 箱舟、地上に帰還する。

俺とエルランドさんがドロップ品の回収を終えても、まだ アーク(箱舟) の面々は固まっていた。

一人ひとり名前を呼びながら目の前で手を振ってようやくみんな我に返った。

「な、な、な、何なんだあれは……」

「アレはない、アレはないわぁ……」

「……儂らとんでもないもんを見てしまったのう」

「……(ガクブルガクブル)」

魔法の一撃であれほどの数を屠ったことは、 アーク(箱舟) の面々にとって余程衝撃的だったらしい。

でも、フェルっていつもあんな感じなんだけど。

一撃必殺って感じの攻撃ばっかだし。

「何ですか?ってフェルの魔法ですけど」

「いや、それは見ていたのだから分かるが、威力がとんでもないことになってるだろう」

そう言われてもな。

だってさ……。

「フェルですから」

この一言に尽きる。

「そうか、フェンリルだからか……フェンリルだから、あの威力なのか……」

「伝説を思い出してみるとあの威力も分かるが、話に聞くのと実際に見るのでは大違いだのう……」

アーク(箱舟) の面々も伝説の魔獣フェンリルならばと納得したようだ。

みんなでボス部屋の奥へと進んだ。

「それで、地上に転移する魔法陣ってどこにあるんですか?」

階段の前の踊り場にあると聞いてたけど、それらしいものが見当たらない。

「ああ、滅多に使われないからな。フェオドラ、頼む」

ガウディーノさんがそう言うとフェオドラさんが頷いた。

そして、フェオドラさんがボソボソと呪文を唱えると……。

ブワッと風が吹き上がり、溜まっていた砂埃を一掃した。

砂埃が取り払われると、踊り場の全面を使って描かれた丸い円の中に象形文字のような文字がびっしり書かれた魔法陣が現れた。

「おおっ、これが地上へ戻る魔法陣ですか」

「ここのダンジョンでは、11階以降にはこの魔法陣が設置されてるって話だ。まぁ、前にも言ったとおり、滅多に使われないがな」

いや、でも、これって考えたらすごい便利だよな。

魔石があればすぐに地上に戻れるんだから。

「ドランのダンジョンにはこういうのなかったですよね」

「そこがダンジョンの面白いところでもあるんですよ。ダンジョンごとにまったくと言っていいほど仕様が違いましてね……」

エルランドさんの話だと、エイヴリングでは11階以降に魔法陣が設置されているが、10階ごとに地上に戻る魔法陣が設置されていて使用する魔力もほんの少しで済むダンジョンもあるそうだ。

それから、ある一定の階層に到達すると、転移石という便利アイテムが手に入り、それで各階に転移できる仕様になっているダンジョンもあるのだそうだ。

当然ダンジョンごとに出てくるモンスターも違うし、罠のあるなしの違いもある。

それからドランのようなフィールド型の階層が出てきたり、エイヴリングのようにひたすら壁に囲まれた階層ばかりだったり、中には塔型のダンジョンも存在しているのだそうだ。

「へー、いろんなダンジョンがあるんですね」

「冒険者になったからには、世界各地のいろいろなダンジョンを巡ってみるのもいいと思いますよ」

エルランドさんはそう言うけど、俺としちゃ話だけで腹いっぱいかな。

今回の旅でもダンジョンに潜るつもりはなかったのに、ドランに続いてこうしてエイヴリングのダンジョンにも潜ってるわけだし、しばらくダンジョンはいいや。

『ほぅ、いい話が聞けたな。しばらくは退屈しないで済みそうだ』

『へぇー人間の世界にゃいろんなダンジョンがあるんだな。面白そうだ』

『なぁに、また違うダンジョンに行けるのー?』

ギギギギギ。

ゆっくりと後ろを振り返ると、フェルとドラちゃんとスイがいた。

しっかりエルランドさんとの話を聞かれていたようだ。

いやいやいや、なんか、ここが終わったら次のダンジョンって思ってるようだけど、行かないからな。

『あのな、ここの次はドランへ行くんだからな。そんで 赤竜(レッドドラゴン) の解体してもらったら、カレーリナの街へ戻る予定だぞ』

ここはしっかりと伝えておかねばと、俺はフェルとドラちゃんとスイに念話を送った。

ランベルトさんの店にワイバーンの皮でオーダーメイドしているマントを受け取りに行かなくちゃいけないんだからさ。

『おい、人間の街にはどのようなダンジョンがあるのか、そこのエルフによく聞いておいてくれ』

いやいや、フェルさんや、聞いておいてくれじゃなくってね、さっき伝えた通りダンジョンには行かないよ。

『お、いいな。そんでどこに行くか決めようぜ』

『ヤッター、またダンジョン行けるんだねぇ~。ダンジョンって面白いから、スイ大好きー!』

これこれ、ドラちゃんもスイも勝手なこと言わないの。

ダンジョンは行かないよ。

というか、今はここのダンジョン潜ってる途中なんだから、新しいダンジョンのこと話してる場合じゃないぞ。

『今はここのダンジョンに潜ってるんだから、ここに集中してくれよ』

『うむ。そうだな。話はここを踏破してからだ』

『ああ、そうだな』

『スイ、がんばるよー』

よし、何とか話を逸らしたぞ。

このままダンジョン話は忘れてくれたらいいんだけど。

とにかく今はここのダンジョンを何とかしないと。

そうこうしているうちに、ガウディーノさんたちの準備も整ったようだ。

「あとはここに最後の魔石を置けば魔法陣が起動する」

魔法陣の中に散らばる小さな丸い円の中のうち3つに魔石が置いてある。

「ここの魔法陣はな、魔石の大きさによっても置き場所が変わってくるんだ」

「え、それって面倒じゃないですか?」

「まぁな。だが、その配置も調べればすぐに分かることだからな」

ガウディーノさん、そこまで調べてたんだ。

頭が下がるね。

俺も見習わないと。

「本当に世話になったな。俺たちはしばらくこの街に滞在する予定だから、地上に出たら冒険者ギルドに言伝してくれ。今度は俺たちがご馳走する」

ガウディーノさんのその言葉に他のメンバーも頷いている。

「美味い酒を奢るわい」

ドワーフのシーグヴァルドさんのいう”美味い酒”というのがちょっと怖いけどね。

「こちらこそ、いろんな話が聞けてよかったです。地上に戻った際はまた会いましょう」

「……おい、フェオドラ、どこに行こうとしてるんだ?」

何故かフェオドラさんが俺たちの方へ来ようとしている。

「…………美味しいご飯」

「はぁ、ムコーダさんの飯が美味いのは分かるけどな、それだけで付いていこうとするな」

え、え、え、フェオドラさん、飯目当てで俺たちに付いてこようとしてる?

なんか、飯目当てっていうのがフェルとかドラちゃんとかスイと同じ思考なんだけど……。

ガウディーノさんにたしなめられたフェオドラさんが悲しそうな顔で「ご飯……」と呟いた。

それを聞いて、ガウディーノさんは呆れたように天を仰いでるよ。

ギディオンさんとシーグヴァルドさんは爆笑してるし。

笑っちゃいけないけど、めっちゃ笑いそうなんだけど。

俺、笑い声が出ないように必死に抑えてるよ。

フェオドラさんって超美人なのにホント残念なエルフだな。

俺の飯が気に入ってくれたのは嬉しいけどさ。

エルランドさんしかり、フェオドラさんしかり、この世界のエルフって突き抜けた人しかいないのかね?

「地上に戻ったらまたご馳走しますよ、フェオドラさん」

俺がそう言うと、フェオドラさんがパァっと笑顔になった。

「それじゃ、地上でまた会おう」

「はい、またお会いしましょう」

ガウディーノさんが最後の魔石を置くと、魔法陣が光に包まれた。

光が収まったときには、魔法陣の上に立っていた アーク(箱舟) の面々は消えていた。

「無事戻れたようですね」

「ええ。私たちも進みますか」

アーク(箱舟) の面々を見送った俺たちは15階への階段を下りていった。