軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百四十話 VSアンデッド

9階の通路で最初にエンカウントしたのはゾンビ3体だ。

「ア゛ァァァ」

「ア゛ー」

「ア゛ア゛ー」

生気のない目をしたゾンビが黒ずんだ腐りかけの体でゆっくりと歩を進めこちらに向かってくる様は、まさにホラー映画で観たゾンビそのものだ。

「うげっ、気持ち悪い」

見てくれもそうなんだけど、匂いがまた……。

『ぬぅ、ゾンビのこの匂いだけは慣れるということはないな。臭くてかなわん』

『なんだこの匂い。くっせー!』

『うー、臭いよー』

うん、みんなの言うとおり臭い。

この匂いたまらんな。

「ゾンビの匂いは強烈です。ゾンビのいるところでは鼻で息をしないのが鉄則ですよ」

エルランドさんがそう教えてくれた。

「さぁ、さっさとこの不快な匂いの元を倒してしまいましょう」

エルランドさんが愛剣を構え、ゾンビを斬り捨てようとすると……。

『スイが倒すよー』

ビュッ、ビュッ、ビュッ―――。

いち早くスイがゾンビに酸弾を放った。

腐りかけの肉体に酸弾が当たって、胸から腹の辺りに大きな穴が空いた。

ゾンビは動きを止めてバタリと前に倒れる。

そして、少しするとダンジョンに吸い込まれるように消えていった。

「おおっ、聖刻印バッチリ効きますね」

「正直半信半疑でしたが、実際にこの目で見るとすごい効き目ですね。これならアンデッドも怖くないですよ」

「ええ。どんどん進みましょう」

通路を進んでいくと、次はスケルトンに出くわした。

うん、骸骨だね。

理科室にあった骨格標本が動いてるよ。

『次は我が行く』

そう言ってフェルがスケルトンに突っ込んでいった。

フェルの体当たり。

体当たりと言えばドラちゃんの十八番だけど、ドラちゃんみたいに魔法をまとってということもなく、素のままでの体当たりだ。

だけど、デカくて頑丈なフェルがやるとそれも立派な攻撃だ。

猛スピードのトラックに轢かれたみたいにスケルトンは宙を舞いダンジョンの天井や壁に叩きつけられて粉々に砕け散っていった。

粉々だよ、粉々。

フェルの攻撃とはいえ、固いはずの骨がこうも粉々になるなんて、もしかしてスケルトンって脆いのか?

「エルランドさん、スケルトンってあんなに脆いもんなんですか?」

「いえいえ。あれは聖刻印の効力とフェル様の力のなせる技でしょう」

武器で攻撃したわけでも魔法で攻撃したわけでもない、ただの体当たりで粉々に砕け散ったスケルトンにエルランドさんも苦笑いだ。

次にエンカウントしたのは、またゾンビだった。

今度は4体だ。

『次は俺が行くぜー!』

そう言ってドラちゃんが前へと飛び出した。

ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ―――。

先が尖った氷の柱が前かがみのゾンビの背中を襲い串刺しにしていった。

『へっ、チョロイもんよ。ん、何かあるぞ。おい、何か出たぞ』

ゾンビが消えた後にドロップ品が出たようだ。

ドラちゃんから手渡されたのは小さな小瓶だった。

「何だろ、これ……」

小瓶にはどす黒い液体が入っていた。

こういうときは鑑定だな。

【 腐食液 】

生物を腐食させる。

腐食液って……。

何に使うんだよ。

「それはゾンビのドロップ品の腐食液ですね。アンデッドのドロップ品は数が少ないので、それなりに高値で買取してもらえますよ」

腐食液の小瓶を見たエルランドさんがそう教えてくれた。

へぇ、アンデッドのドロップ品って高値で買取してもらえるのか。

数が少ないって、まぁ、そうだよな。

倒すこと自体が大変だし。

「でも、腐食液なんて使い道あるんですか?」

高値で買取してくれるのはいいけど、どんな使い道があるんだろ?

それが疑問だよ。

「いや、まぁ、それはいろいろと。いざというときの攻撃にも使えますし、腐食液はけっこう需要あるんですよ」

エルランドさんの話では、この腐食液は即効性の高いもので、それこそいざというときの攻撃手段として用いられるそうだ。

例えば、自分たちではどうにもならない魔物などと出会ったときに、この腐食液を投げつけて時間稼ぎに使う。

即効性が強いものだからすぐに腐食が始まって、高ランクの魔物でも死には至らないが十分足止めにはなるという。

「なるほど。その間に逃げるってわけですね」

「そういうことです。私も冒険者時代には何度かお世話になりました。1つ持ってるといざというとき安心ですよ」

なるほど、そういう使い方ができるのか。

フェルたちがいるから、そんな危機はないと思うけど、万が一俺が1人でいるときに何かあった場合のことを考えると1個は手元に置いておいてもいいかもな。

「勉強になります」

「アンデッドのドロップ品は、できればドランの冒険者ギルドにも回していただきたいので、どんどん倒していきましょう」

ドランにもか。

聖刻印があればいけるだろうし、もちろんエイヴリングで買取してもらうのが最優先としても残った分についてはドランで買取してもらうっていうのもありだね。

通路を進んで行くと、壁に切れ目が……。

『そこに部屋があるぞ。中にいるのはゾンビだな』

フェルの念話が飛んできた。

中をそっと覗くと、ゾンビが十数体たむろしていた。

「私が魔法で倒してみてもいいですか?」

「はい、いいですけど……」

俺がそう言うと、エルランドさんが部屋の中に入っていく。

部屋の中にいたゾンビがエルランドさんに向かってゆっくり歩いてくる。

「それでは……ウィンドカッター」

ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ―――。

風が巻き起こり、ゾンビを細切れにしていった。

「お見事です」

「一応魔法も得意なところを見せておきませんとね。ハハハ」

「風魔法ですね。エルランドさんがエルフなのを考えると、あとは種族特性の草木魔法ですか?」

「ええ。でも、ダンジョンの中では効力が弱まりますので、ダンジョンではもっぱら風魔法を使っています」

何でも、草木魔法はダンジョンの中では外で使うより効力が弱くなってしまうそうだ。

「ダンジョンの中ではまったく使えない土魔法よりはマシですが、草木魔法も土から育つ草木を利用する魔法ですからね、効力が弱まるのもその辺のことが関連しているとみています」

なるほど……って、俺、ダンジョンの中では役に立たない土の使い手です。

土魔法はダンジョンでは使えないけどな、生活に役立ってくれてるからいいのさ。

風魔法、うらやましくなんかないんだからな。

嘘です、めっちゃうらやましいです。

「腐食液が出てるみたいですね」

エルランドさんがドロップ品の腐食液を拾ってアイテムボックスに入れていく。

そう言えば、エルランドさんもアイテムボックス持ちだったな。

「私たちはアイテムボックス持ちですから、とりあえず拾ったものはそれぞれ保管して、ダンジョンを出てからどう分けるか決めましょう」

そうか、そういう問題もあったんだな。

まぁ、エルランドさんとなら揉める心配もないだろう。

「それじゃ、進みますか」

通路を進み、次にエンカウントしたのはスケルトン4体だ。

『スイがやるー』

『あ、スイ、俺も戦っておきたいから1体だけ残して』

『分かったー』

ビュッ、ビュッ、ビュッ―――。

スイの撃った酸弾で、スケルトンが溶けていく。

スイが残してくれた1体のスケルトンがまだいる。

俺はそのスケルトンに向かって、槍を上から下に払い袈裟斬りにした。

「そやっ」

俺の振るったミスリルの槍はスケルトンの骨をスパッと切断した。

スケルトンが崩れるように倒れて消えていく。

白い何かの欠片がドロップされた。

「それはスケルトンの骨の欠片ですね。それは魔物の強力な忌避剤の材料の一つだったはずです」

となると、この骨の欠片も需要はあるってことか。

小さい欠片だから見落としそうになるけど、これもしっかり拾っていった方がいいな。

それから俺たちはどんどん進んでいって、通路や部屋の中にいたゾンビやスケルトンを撃破していった。

4つ目の部屋にいたゾンビを倒すと、部屋の奥に宝箱があるのを見つけた。

「お、宝箱がありますよ」

「罠が仕掛けられてたり、ミミックの可能性もあるので注意ですよ」

わかってますって、エルランドさん。

こういうときこそ、鑑定。

【 ミミック 】

宝箱に擬態したダンジョン産の魔物。倒すと稀に装飾された宝箱をドロップする。

「これはミミックですね」

「え? 何で分かるんですか?」

エルランドさんの不思議そうな顔を見て思い出した。

確か、鑑定スキルを持ってるのは御伽噺の異世界から召喚された勇者くらいだって話だったんだ。

ヤバい、何とか誤魔化さねば。

「えーとですね、フェ、フェル、フェルが教えてくれたんです」

「そう言えばフェル様は鑑定スキルがあるんでしたね」

ふ~、焦ったぜ。

「それじゃ、俺が……」

俺は少し距離をとりながらミミックにミスリルの槍をブスリと突き刺した。

「グゲェェェッ」

ミミックが消えていく。

「残念ながらドロップ品はないみたいですね。次行きましょう」

その後、俺たち一行は3つの部屋を回りゾンビとスケルトンを倒して最後のボス部屋へと向かった。