軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百四十話 ダンジョンって理不尽だ

鬱蒼と茂る森の中でまず最初にエンカウントしたのは、2メートル超えのデカいカマキリだった。

それが全部で十数匹。

鑑定してみると……。

【 ジャイアントキラーマンティス 】

Bランクの魔物。

え、こんだけ?

ま、まぁ、前は魔物の名前だけだったんだから、それを考えると少しは良くなってるのか。

『何だ、雑魚ではないか……』

フェルがそう呟いた後、バチバチバチバチィっとジャイアントキラーマンティスに電撃が走った。

数十匹いたジャイアントキラーマンティスがあっという間に黒焦げになって息絶えた。

「…………フェル」

いきなり電撃ぶちかますとはね。

ジャイアントキラーマンティスが哀れすぎるぜ。

まぁ相手が悪かったということなんだろうけどさ。

『あー、フェルは何1人で倒してんだよーっ』

『フェルおじちゃんだけズルいよー』

ドラちゃんとスイがフェル1人で倒してしまったことにブーブー文句を垂れる。

『あのような雑魚いいではないか。もっと強そうなのをだな』

『そんなこと言って1人だけ戦おうってんだぜ。ズルいよなぁ』

『スイも戦うのー。ビュッビュッってやってお水の魔法も使っていっぱい倒すんだからー』

しかしまぁ、何でみんなそんなに戦闘好きなんですかね。

血気盛ん過ぎるぞ。

「ま、まぁここは前みたいに順番に戦うようにすればいいだろ。次はドラちゃんで、その次はスイっていうようにさ」

俺がそう言うと、ドラちゃんもスイも渋々ながら納得する。

『しょうがねぇな。でも、次は俺だからな』

『あるじがそう言うなら、スイいい子だからそうするよー』

それから、ジャイアントキラーマンティスのドロップ品を拾って森の中を進んだ。

ちなみにだがドロップ品は、小さな魔石とジャイアントキラーマンティスの鎌だった。

どんどん森の中を進み、次にエンカウントしたのはマーダーグリズリーだ。

でもこれって……フェルが獲ってきたやつよりデカくね?

フェルに聞いたら、同じ種類の魔物でもダンジョン産の方が大きくて力も強い傾向があるんだそうだ。

魔素の濃度とかが関係しているらしい。

「グォォォォッ」

マーダーグリズリーが俺たちに狙いをつけて、その大きい体を揺らしながら走りよってくる。

『ヒャッホーッ、行くぜーッ!』

ドシュッ。

火をまとったドラちゃんがものすごいスピードでマーダーグリズリーの横っ腹を貫いていった。

…………早ッ。

ドロップ品のマーダーグリズリーの毛皮を拾って、さらに森の中を進んだ。

次に出てきたのがパラライズバタフライだ。

Bランクの魔物で、体長1メートルほどのオレンジ色に青の水玉模様という禍々しい色合いの蝶だ。

群れで行動する習性らしく、俺たちが出会ったのも30匹くらいの群れだった。

初めて見る魔物だからフェルに聞いてみたところ、麻痺毒性の鱗粉を撒き散らして捕食対象を動けなくしてから、生きたままその体液を吸い取るそうだ。

生きたまま体液を吸うって…………凶悪じゃねぇか。

今回はスイの番ということで、スイちゃん、こんな凶悪な蟲どもはやっちゃいなさい。

「スイ、この蟲さんはね近付くと体が動けなくなっちゃう粉を振りまくんだって。だから遠くから攻撃した方がいいよ」

『うん、分かったー』

遠距離攻撃型の酸弾で次々とパラライズバタフライを撃ち落としていく。

スイは1分もかからずにすべて撃ち落とした。

『あるじー全部倒したよー』

「うんうん、すごいねスイは」

褒めるとスイが嬉しそうに俺の回りを飛び跳ねた。

かわええなぁ、スイは。

殺伐としたダンジョンの中での癒しだよ。

パラライズバタフライのドロップ品の麻痺毒の鱗粉(なぜか瓶入り。なんかこれが大量に落ちてたよ)を拾ってさらに森を進んでいく。

その後も森の中にいそうな獣系、鳥系、蟲系の魔物が出てきたけど、次々と倒して数多くのドロップ品を回収しながら進んでいった。

途中でそろそろ飯にしようかという話になったのだが……。

「え? この階ってセーフエリアないのっ?!」

飯タイムってことでフェルにセーフエリアへ案内してもらおうと思ったら、この階層にはそういうものはないということが判明。

『こういう様相をした階層にはそのような場所がないことが多いのだ』

フェルが言うには、森とか砂漠地帯とか(確かフィールドダンジョンって言うんだっけ?)にはセーフエリアがないことが多いんだそう。

仲間内で見張りを立てながら休むというのが基本になるらしい。

フィールドダンジョンはとにかく広いことと高ランクの魔物が多いことで難易度が高いと言われているが、セーフエリアがないこともさらに難易度を上げている原因だと言われているそうだ。

確かにセーフエリアがないってことは気が休まる場所がないってことだもんな。

しかも高ランクの魔物ばかり出てくるんじゃ、一瞬たりとも気が抜けないしね。

普通の森で野営するのとは訳が違うわ。

『まぁ心配するな。我の結界があれば大丈夫だ』

確かに。

今までのことを考えると、フェルの結界なら余程のことが無い限り心配ないだろう。

「じゃ、ここで飯にするか。フェル、結界頼むな」

『ああ、分かったぞ』

フェルに結界を張ってもらったら、飯の用意を開始だ。

何にしようかな……。

あ、よし、あれにしよう。

作り置きしてたトロットロに煮込んだ煮豚だ。

それを使って煮豚丼にしよう。

まずは煮豚を厚めに切ってと。

そしたら深めの皿に飯を盛ってその上に厚めに切った煮豚を飯が見えないくらいにぎっしりと並べたら、ちょろっと煮汁をかけてと。

その後に端っこに半熟味卵を半分に切ったものを添えて、煮豚丼の出来上がりだ。

「はい、出来たぞ」

フェルもドラちゃんもスイもガツガツ食っていく。

『おおっ、これは美味いぞ。肉が柔らかく口の中で溶ける。それにこの味付けもなかなかだな』

煮豚はフェルも気に入ってくれたようだ。

『うんめぇーっ! 何だこの肉、トロトロに柔らけぇ。やっぱお前が作る飯はウメェなぁ』

ドラちゃんも気に入ってくれたみたいだね。

『この甘くってしょっぱい味が染みた柔らかいお肉が美味しいな~』

スイも気に入ってくれたようだ。

スイはこういう甘じょっぱい味が大好きみたいだからね。

好評で良かったよ。

作った甲斐があるってもんだよね。

さて俺も煮豚丼食いますか。

俺用には飯の上に千切りキャベツを載せてから煮豚を並べた。

この方がさっぱりいけるだろうからな。

では、パクリ。

おお、自分で作っておいて言うのも何だけど、かなり美味い。

オークジェネラルの肉はトロットロに煮込まれてるし、この甘じょっぱいタレも染み込んでご飯によく合う。

飯・キャベツ・煮豚が混然一体となって最高に美味い。

思わずガツガツいっちゃったよ。

半熟味卵も味が染みててうんまい。

『『おかわり』』

フェルとスイのおかわりだ。

おかわりを出してやると、またガツガツ食い始める。

その後も何度かおかわりして、フェルとスイが満足するころには煮豚もなくなっていた。

けっこう多めに作ってたんだけどなぁ。

それにしても今回の煮豚は上手く出来た。

これならまた作ってもいいな。

食後の休憩をとった後、再び俺たちは森の中を進んだ。

エンカウントした魔物を、フェルとドラちゃんとスイが順々に倒していく。

大量のドロップ品を回収しながら、暗くなってきたところでこの日の探索を終了にした。

「ダンジョンの中なのに暗くなったり明るくなったりするんだな」

『ああ。こういう様相の場合、外と同じように昼と夜があるな。そして、暗くなると夜行性の魔物も活発になる』

「げッ、そうなのかよ。フェル、結界の方は大丈夫なんだろうな?」

『フンッ、もちろん大丈夫に決まっているだろう。前にも言ったようにドラゴンでも襲ってこない限り大丈夫だ』

なら安心だな。

いや、待てよ……。

「ドラゴンでも襲ってこない限りって、ここにドラゴンっていないんだろうな?」

『いたら良かったのだがな。ドラゴンほどの気配はこの階にはいない』

いやいや、いなくて良かったから。

これで安心して眠れるよ。

「それにしても、この階層は広いよな。これじゃこの階層全部回るなんて無理っぽい」

『この階層をくまなく回るとしたら、我らでも一月以上かかるだろう』

「えっ、そんなにか?」

『ああ。それも面白そうではあるのだが、今は早くベヒモスと戦いたいからのう。この階層の 階層主(ボス) らしき強い気配に向かって移動しているのだ。ドラもスイもいるから大分早い進み具合ではあるのだが、あと2日はかかるだろう』

広いとは思ってたけど、一月以上とはね。

そこまで広いとは思ってなかったよ。

この階層もいろいろ見て回って、宝箱なんかも探し出したかったけどちょっと無理そうだね。

残念だけど、ここは諦めるよ。

速いペースで移動しててもあと2日か……ってか、ここのボスって何なんだろうね。

そっちの方が気になるぜ。

この日の夕飯はから揚げにメンチカツをメインに、あとは残ってた豚汁を出してやった。

から揚げとかメンチカツとか揚げ物類はフェルもスイも大好きだからな。

バクバク食ってたよ。

揚げ物初となるドラちゃんもすごく気に入ったみたいで、口いっぱいにから揚げを頬張ってたよ。

夕飯も食い終わって、さて寝床をと土魔法で家を作ろうとしたら、何故か魔法が発動しなかった。

「あれ? 何でだ? 家が作れない……」

『ダンジョンの中で土魔法、それも家を作るようなものが発動するわけなかろう』

…………へ?どゆこと?

『前にもダンジョンは生き物だと考えられていると言っただろう。この土なども謂わば土ではなく、ダンジョンの体の一部なのだ。だからダンジョンの中で土魔法は石礫の魔法くらいしか発動せんぞ。それゆえにダンジョンでは土魔法使いは不遇職だと言われておるのだぞ』

えーっ、そんなの聞いてないよー。

ってか、ダンジョンの中では土魔法が使えないなんて理不尽だーーーッ。