軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百七話 ドワーフのギルドマスター

フェルの言っていたとおり、翌日にはクレールの街に到着した。

街に入るのに冒険者ギルドのギルドカードを提示したんだけど、特に問題なく入れた。

従魔のフェルとスイの確認と、従魔が何か問題を起こした場合は従魔の主である俺が罰せられるって説明は受けたけどね。

クレールの街は紡績の街というだけあって、糸や布の専門店や服屋が軒を連ねていた。

「フェル、まずは冒険者ギルド行ってみるか」

『うむ。依頼も受けんといかんしな』

近くの店の店員さんに冒険者ギルドの場所を聞いて向かった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

冒険者ギルドに入ると、フェルがいたから注目はされるが、特に突っかかられることもなかった。

窓口でギルドカードを見せると、受付の女性(犬耳のかわいい感じの獣人さんだ)が「ちょっとお待ちください」と言って席を立った。

「おーう、来たかぁ待ってたぞい」

デカい声でそう言いながら俺の方へ向かってくる髭もじゃの小さいおっさん。

ありゃドワーフか?

話には聞いてたけど、見るのは初めてだな。

「カレーリナのヴィレムから連絡が来とるぞ」

カレーリナのヴィレム?

あ、確かカレーリナの冒険者ギルドのギルドマスターがそんな名前だったような気が。

それにしても小さいおっさん、背小さいのに筋骨隆々だなぁ。

髭もじゃもじゃしてるし。

イメージ通りのドワーフにちょっと感動。

「ん? 何だ、お主、ドワーフを見るのは初めてか? この国にいりゃドワーフなんぞ珍しくもないぞ。この街の後にダンジョン都市ドランに向かうんだろ? あの街にゃドワーフの冒険者や鍛冶師がわんさかいるぞ」

へー、そうなんだ。

ドワーフの冒険者もいるんだな。

カレーリナでは獣人の冒険者はチラっと見かけたけど、ドワーフは見かけなかった。

エルフもいるみたいだけど、今までは見かけてないな。

ダンジョン都市ドランに行けばいろんな人種を見れるかもしれないな。

エルフもイメージ通り美男美女なのかな?

美男エルフはどうでもいいけど、美女エルフは非常に見たい。

そして、できればお知り合いにもなりたい。(願望)

「おお、そうだ自己紹介がまだだったのう。儂はここクレールの街の冒険者ギルドのギルドマスターでロドルフォっちゅうもんだ。よろしくな」

そう言って小さいおっさん改めロドルフォさんが俺の手をつかんでブンブン振る。

「んじゃ、ここで話すのも何だから儂の部屋に行くぞ。付いて来い」

俺たち一行はのしのし歩くロドルフォさんに付いていった。

「まぁ座れや」

ロドルフォさんに付いて入ったギルドマスターの部屋、ロドルフォさんの向かいのイスに座った。

フェルはイスの横の開いてるスペースに伏せている。

「いろいろ噂は聞いとるぞ。フェンリルを従魔にのう。最初は何を馬鹿なこと言ってるんじゃと思っておったが、ヴィレムから話を聞いて、しかも方々からも同じような話も舞い込んできて、半信半疑ながらもこりゃ本当の話かと思い始めとったが……本当に伝説の魔獣が見れるとはのう。しかも、お主はべらぼうに強いスライムも従魔にしとると聞いたぞ」

ロドルフォさんがチラっとフェルを見ながらそう言った。

半信半疑か。

フェルのことを聞いても実際に見るまではそんなもんだろうな。

なにせ伝説の魔獣だし。

スイは進化もとげてどんどん強くなってってます、主の俺もびっくりするくらいに。

「それで、着いたばかりで悪いんじゃが、早速依頼の話をしてもいいかのう?」

「はい」

「実はの……」

何でもヴェノムタランチュラ(見てくれはデカいクモみたいだ)の糸が早急に欲しいということだった。

ここの冒険者ギルドの大口取引先のブルーノ商会という商会からの依頼らしいのだが、このヴェノムタランチュラの生息地がまたやっかいなところなのだそうだ。

この街の北にあるイシュタムの森にそのヴェノムタランチュラはいるそうなんだけど、そこがまたやっかいな森らしいのだ。

この森、とにかく毒持ちの蟲系の魔物が多いうえに、Aランクのジャイアントセンチピード(デカいムカデ)が出るという。

「蟲系の魔物は元々取れる素材が少ないからのう。そのうえ毒持ちとなれば誰も行きたがらなくてな。しかも、Aランクのジャイアントセンチピードが出るとなれば受ける奴など皆無じゃわい。ブルーノ商会からはまだかまだかとせっつかれるし、ほとほと困ってたんじゃ」

ヴェノムタランチュラの糸で作る布は最高級と言われていて、貴族の礼服やドレスに使われているんだとか。

どうもそのブルーノ商会が懇意にしている貴族から急な注文が入ったらしいのだ。

ちょうどヴェノムタランチュラの糸で作った布の在庫がないときでの注文でブルーノ商会も慌てたらしい。

手を尽くしてヴェノムタランチュラの糸を集めたが、今一歩足らないらしいのだ。

そこで今回の依頼となったということだった。

イシュタムの森にそのヴェノムタランチュラがいることは分かっていたが、やっかいな場所ゆえに今まで放置されていたけど緊急事態ということで目を付けたらしい。

「何とかこの依頼受けてくれんかのう? 冒険者ギルドとしても大口取引先のブルーノ商会を無碍にできないんじゃ」

本当に困っているらしく、ロドルフォさんも困り顔だ。

「フェル、どうだ?」

『蟲のう……蟲は食えるやつが少ないから嫌いなのだ。ヴェノムタランチュラは食えるし不味くはないからマシな部類ではあるが、あの殻がどうもな』

は?クモ、食えるのか?

「あの、ヴェノムタランチュラって食えるんですか?」

「ああ。フェンリルの言うとおり、蟲系の魔物は食用には適さないもんが多いんじゃがな、食える蟲系の魔物の中ではこのヴェノムタランチュラが1番美味いと言われてる。塩ゆでにすると美味いぞ」

クモ、食えるんだ……。

先も言ったとおり蟲系の魔物は取れる素材が少ないが、ヴェノムタランチュラは糸、肉、毒袋と取れる素材が蟲系の魔物にしてはある方なんだそう。

ちなみにヴェノムタランチュラはBランクだが、魔石はないことの方が多いらしい。

「報酬も多少は色を付けるから、何とか頼めんかのう?」

本当に困ってるみたいだから、何とかしてやりたいのは山々なんだけど、実際にやるのはフェルだからねぇ。

「フェル、難しい依頼なのか?」

『馬鹿を言うな。我にかかれば難しい依頼などないわ。うーむ、お主が料理すればあれも多少は美味く食えるか。よし、分かった。その依頼受けよう』

「大丈夫みたいです。依頼受けますよ」

「おおっ、そうかそうか。助かるわい」

「それで、早急というからには早い方がいいんですよね?」

「申し訳ないが、そうしてくれるとありがたいのう」

うーん、でも今日の今日ってわけにはねぇ。

日が暮れるまで、そんなに時間もなさそうだし。

「フェル、明日はどうだ?」

『うむ、いいぞ』

「それでは、明日行きます」

「そうか。早くて助かるぞ」

「あ、聞きたいことがあるんですが、従魔連れでも泊まれる宿でおすすめのところ教えていただけますか?」

「それなら、“糸車”って宿がおすすめじゃな」

ロドルフォさんから“糸車”の場所を聞き、俺たちは冒険者ギルドを後にした。

「フェル、宿に行くまでにちょっとこの辺の服屋見ていくから」

宿に着くまでの間に気になっていた服を見て歩いた。

紡績の街ということで、店に飾られている服はどれも前に俺が買ったものよりも数段品質が上のようだ。

この街で売られている服は、地味だが染色もされていて作りもしっかりしていそうに見える。

「あ、これいいな……フェル、ちょっとこの店入ってみるぞ」

俺が目を付けたのはオリーブ色のズボンにアイボリーのシャツだ。

今持ってる服はくすんだ茶色っぽいのばかりだから、こういう色合いのものに目を引かれる。

いいな、これ。

「お気に召しましたか? 他の街と違い、この街のものはほとんどが新品なんですよ。もちろんそちらも新品です。シャツが金貨1枚と銀貨5枚、ズボンが金貨2枚となります。他の街に行きますと、同じような品でも倍近くはすると思います。しかしながら、この街は紡績の街ですからね、この価格でお売りできるのですよ。とてもお買い得となってます」

お買い得……分かってるな、店員さん。

その言葉を言われると買いたくなるぜ。

肌触りも、今着てる俺の服とは比べ物にならないしな。

ちょっと高い気もするけど、懐も温かいし買っちゃうか。

俺は結局シャツとズボン3枚ずつ購入した。

シャツは3枚ともアイボリーでズボンはオリーブ色と紺色とダークグレイのものを購入。

ちょっと衝動買いっぽいけど、満足だ。

明日早速着てみよう。