軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

洞窟9

最後の一体のアーマーゴーレムをメルトが倒すと、周囲にいた冒険者たちが息を吐き出した。

僕も額に浮かんだ汗を拭って、荒い呼吸を整える。

なんとか倒せたけど、犠牲者も十人以上出たか。

僕は倒れている冒険者たちを見て、唇を強く噛む。

「ヤクモ」

Dランクのライザが近づいてきた。

「あなた、強いのね。一人で何体もアーマーゴーレムを倒してたでしょ」

「何度も戦ってアーマーゴーレムの動きがわかってきたから」

「アーマーゴーレムの動き?」

「うん。腕の攻撃範囲とか、光球を発射する前の手の動きとか、いつも同じだから。集団での連携のパターンも同じだよ。ただ……」

僕はグレッグと話しているメルトを見る。

「十体のアーマーゴーレムが一斉にメルトさんを狙ったんだ。今まで、そんな動きをしたことがなかったのに」

「それって、メルトさんがリーダーってわかってたってこと?」

「うん。そんな気がする」

「もし、そうなら……」

ライザの眉間にしわが寄る。

「ドールズ教の信者が近くにいて、アーマーゴーレムに指示を出していたんじゃないの?」

「その可能性は高いと思うよ」

僕は穴が開いた壁に視線を向ける。

穴の数は三十以上あるし、隠れて指示をすることはできるか。

僕は唇を噛んで、アーマーゴーレムの死体を見つめる。

アーマーゴーレムがリーダーであるメルトを狙う動きをしたのは事実だ。それまでは近くにいた冒険者を狙う戦い方をしていたのに……んっ?

「どうかしたの? 変な顔して」

ライザが僕の顔を覗き込んだ。

「……いや、ちょっと気になることがあって」

「全員、聞いてくれ!」

メルトが声をあげて、みんなを集めた。

「アーマーゴーレムの襲撃で十二人の犠牲者が出て、私たちの数は八十人になった。これ以上、犠牲者を出すことはできないので、全員で行動する」

「全員で出口を探すんですか?」

ライザが質問する。

「そうだ。効率が悪くなるが仕方ない」

メルトは壁際に並べられた冒険者たちの死体を見つめる。

「今から休憩を二時間取る。その後に出発だ。全員、準備をしておいてくれ」

メルトが離れると、冒険者たちが小さな声で話し始めた。

「後手に回ってるな」

「ああ。アーマーゴーレムがここを攻めてくるのは予想外だったんだろう」

「だが、犠牲は最小限に抑えられていると思うぞ。Sランクのメルトがいなかったら、俺たちは、とっくに全滅していただろう」

「でも、このままじゃ、どっちにしても全滅だわ」

「そうだな。出口が見つからなければ、食料がなくなって餓死することになる。水は地底湖があるからなんとかなるが……」

その言葉に冒険者たちの表情が暗くなる。

「ヤクモっ!」

ピルンが僕に駆け寄った。

「休憩だから、一緒に寝るのだ」

「いや、その前に、ピルンにお願いがあるんだ」

「わかったのだ」

ピルンは唇をすぼめて、僕に顔を近づける。

「こんな時にちゅーしたいなんて、ヤクモは大胆なのだ」

「いや、キスじゃないよ」

僕はピルンに突っ込みを入れながら、彼女の耳に口を寄せた。

◇ ◇ ◇

メルトはグレッグと会話をしていた。

「出口がありそうなのは地底湖があった場所だな。上部に裂け目も見えた」

「そう……ですね」

グレッグは地図を見つめる。

「たしかにこの辺りは調べていない通路も多くあります。それに靴跡もありました

し」

「ドールズ教の信者の靴跡の可能性があるか」

「はい。そして信者がいるのなら……」

「出口もあるか」

メルトはオレンジ色の髪に触れながら考え込む。

「……よし! まずは地底湖を目指す。全員に伝えておいてくれ」

「わかりました」

グレッグが離れると、キナコがメルトに声をかけた。

「メルト、一応、伝えておくぞ。俺たちのパーティーのヤクモとピルンは別行動している」

「別行動?」

メルトは首をかしげる。

「どういうことだ?」

「前に倒したアーマーゴーレムが気になるので調べたいと言ってたな」

キナコは白い爪で頭をかく。

「まあ、あの二人なら問題ない。アルミーネが遠話の魔道具も渡しているから、離れていても連絡は取れる。後から合流できるだろう」

「……そうか。たしかにヤクモは強かったからな。Bランク程度の力はあるようだ」

「Bランク程度か」

キナコはふっと笑った。

「お前もヤクモをわかってないな」

「わかってない?」

「そうだ。ヤクモの強さはSランク……いや、もしかしたら、十二英雄レベルかもしれない」

「……ほぉ。『魔族殺しのキナコ』が、そこまでヤクモを認めているとはな」

メルトは自分の腰ほどしかないキナコを見つめる。

「しかし、それなら、Aランクのお前よりもヤクモが上になるぞ」

「もう、そうなっているかもしれん。単純な白兵戦なら俺のほうが上だが、ヤクモは紙が使えるからな」

「たしかにヤクモは紙を目くらましに使って、アーマーゴーレムを倒していたな。あの技は見事だった」

メルトは頭をかいた。

「まあ、強い者が仲間にいるのは有り難い。まだ、多くのアーマーゴーレムがいるかもしれないからな」

「……そうだな」

キナコは休憩を取っている冒険者たちを見回した。