軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな敵

僕たちは裏路地を東に進んでいた。

細く入り組んだ道を抜けると、広場らしき場所に出る。

「よし! 誰もいないぞ!」

先頭を走っていた月光の団の団員が言った。

その言葉に僕は安堵の息を吐いた。

骸骨兵士の数が減ったおかげで、ここまでは楽に移動できた。

あとは別行動しているコリンヌたちと合流して、東側にある通路から上のダンジョンに逃げることができれば……。

僕たちは無人の広場を警戒しながら進む。

その時――。

「がああっ!」

僕の後ろにいた月光の団の団員が叫び声をあげた。

振り返ると、団員の男が倒れていて、その後ろに巨大な黒い蜘蛛がいた。

蜘蛛は背丈が五メートル以上、横幅も七メートル以上あった。八つの目は赤く輝いていて、全身に紫色のトゲを生やしていた。

「魔鋼蜘蛛の女王だ!」

キナコが叫んだ。

「気をつけろ! こいつがいるってことは……」

周囲から、無数の魔鋼蜘蛛たちが現れる。

三百体以上の魔鋼蜘蛛を見て、全員の顔が蒼白になる。

「これは……マズイかも」

隣にいたアルミーネが掠れた声を出した。

「ここで魔鋼蜘蛛の群れに襲われるなんて、運命の神ダリスに嫌われちゃったかな」

「でも、諦めるわけにはいかないよ」

僕は魔喰いの短剣の刃を女王蜘蛛に向けた。

なんとか、ここを切り抜けて合流場所に向かわないと。

「キシャアアア!」

魔鋼蜘蛛たちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。魔鋼蜘蛛が出した白い糸が宙を舞い、月光の団の団員たちの体に降りかかる。

「ちっ! もう酒は残ってないぞ」

キナコは伸ばした爪で糸を斬りながら、飛び掛かってきた二体の魔鋼蜘蛛を左右の肉球で叩く。

ピルンと月光の団の団員たちも四方から飛び掛かってくる魔鋼蜘蛛と戦い始める。

とにかく数を減らさないと。

僕は数百本の紙の短剣を具現化する。

数が多いのは……右側か。

宙に浮かんでいた紙の短剣が一斉に動き出した。幅が一ミリ以下の短剣が次々と魔鋼蜘蛛に突き刺さった。

よし! これで右側から女王蜘蛛を狙える。

僕は魔鋼蜘蛛の死体を飛び越え、右側から後方にいる女王蜘蛛に突っ込んだ。

女王蜘蛛はすぐに僕に気づき、黒い毛が生えた前脚を振り上げる。ブンと音がして、前脚が振り下ろされた。

僕は地面を転がりながら、その攻撃を避けて女王蜘蛛の側面に移動する。

その瞬間、女王蜘蛛の紫色のトゲが飛び出した。

僕は魔鋼蜘蛛の死体を盾にして、その攻撃を防ぐ。

「ヤクモくん! 離れて!」

アルミーネの声が聞こえると同時に女王蜘蛛の頭上に巨大な魔法陣が具現化した。

僕が女王蜘蛛から離れると、魔法陣から光の雨が降り注いだ。女王蜘蛛の体が光で焼かれ、白い煙が立ち上る。

「キュアアアアア!」

女王蜘蛛は甲高い鳴き声をあげると、八本の脚を動かしてアルミーネに突っ込んでいく。

まずい! アルミーネを守らないと!

先端が鋭く尖った前脚がアルミーネに振り下ろされた。

間に合えっ!

僕はアルミーネに抱きつき、そのまま二人で転がりながら女王蜘蛛から離れた。

「アルミーネは下がって!」

僕は十本の紙の鎖を具現化して、女王蜘蛛の動きを止める。

「キュアアアアーッ!」

女王蜘蛛は無数のトゲを八方に飛ばす。そのトゲが月光の団の団員と魔鋼蜘蛛の体に突き刺さった。

「があ……っ……」

団員の男と魔鋼蜘蛛が同時に倒れる。

「くっ……」

僕は唇を強く噛んで、女王蜘蛛に突っ込んだ。

こいつは危険だ。周囲に味方の魔鋼蜘蛛がいても、お構いなしに広範囲攻撃をしてくる。犠牲者が増える前に倒すしかない。

僕は女王蜘蛛の真下に潜り込み、魔喰いの短剣に魔力を注ぎ込む。青白い刃が一メートル以上伸びた。その刃で女王蜘蛛の脚の関節部分を斬る。黄色い体液が飛び散り、女王蜘蛛の巨体が僅かに傾く。

「もう一本っ!」

僕は渾身の力を込めて、魔喰いの短剣を振った。

その瞬間、女王蜘蛛が七本の脚をぐっと曲げて、高くジャンプした。黒い巨体が数十メートル離れた場所に着地する。

距離を取られたけど……逃がさない。