軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

炎竜の名づけと元パーティー仲間たち

「ふははははは! まさか勇者の封印を一撃とはな! これで私は自由だあああああ!」

大広間の中で封印から解放された竜が喜びの声を上げて走り回る。

巨大な竜がドタバタと走り回っている姿がとてもシュールだ。

ちょっと威厳が台無しなことになっているが、三百年もここでジッとする羽目になっていたので仕方がないだろう。

とはいえ、さすがに五分も走り回れば十分だろう。

「おーい。解放的な気分に浸っているところ悪いが、そろそろ話を進めてもいいか?」

「おお、そうだったな!」

「とりあえず、お前は必要な時に呼べば、力を貸してくれるっていう認識でいいか?」

「違うぞ。私もお前についていって冒険者になる」

てっきり普段は別のところで過ごし、俺が呼びつければ必要な時に力を貸してくれると思っていたのだが違うらしい。

「いや、そうは言っても、その姿じゃ間違いなく街には入れないぞ?」

そのままの姿で人里に降りてみろ。間違いなく街はパニックとなるだろう。

そして、竜を討伐するために冒険者たちが大挙して押し寄せる。

「安心しろ! こういう時に役立つスキルがある!」

自信満々に告げると、竜の体が赤い光に包まれた。

眩い光量に思わず目を細めると次の瞬間には頭部に竜の角を生やし、ダークレッドの長髪に翡翠の瞳をした美少女が目の前にいた。裸で。

「これなら問題ないだろ?」

竜が胸を張り、形のいい双丘がぷるんと揺れた。

「問題ないけど問題あるわ! とりあえず、服を着ろ! なんかないのか!?」

「服? あー、人間たちが纏っている布か……」

少女の身体が一瞬発光した。

「これならどうだ?」

おそるおそる振り返ると、少女は黒を基調としたフリルのついたワンピースを纏っていた。

「……問題ないな。どうやって作ったんだ?」

「鱗を変質させたのだ」

「そ、そうか」

聞いたこともないスキルだが、使い勝手は良さそうだ。

「というか、お前女だったのか……」

「体つきや艶やかな鱗を見ればわかるだろ?」

素直な驚いたことを告げると、少女が不満げな表情を浮かべる。

いや、そもそも竜なんて初めて見たし、雄か雌の違いなんてわかるか。

「えーっと、そういえば自己紹介をまだしていなかったな。俺はアキトだ」

「アキトだな。覚えたぞ!」

「そっちの名前は?」

「勝手に人間がつけた名前ならあるが、それは可愛らしくないので使いたくない」

「じゃあ、どう呼べばいいんだ?」

「私の名前はアキトが考えてくれ」

「はぁ? 俺がか?」

「うむ! 私が人間として活動するのに相応しい名前を考えてくれ!」

にっこりとした笑みを浮かべながら難しいことを言ってくる少女。

俺に人の名前をつけるセンスなんてないんだが……。

「……エレンというのはどうだ?」

「その名に何か意味はあるのか?」

「俺の故郷ではじまりを意味する言葉だ」

この瞬間に少女は新しい一歩を踏み出そうとしている。

あまり竜らしい名前とはいえないが、今の彼女にエレンという名前は相応しいのではないかと思った。

「……悪くない名だ。私は今日からエレンだ!」

どうやら気に入ってくれたらしい。

「さて、後は活性化した魔物をどうするかだな」

「活性化?」

小首を傾げるエレンに俺は北山脈の周囲で魔物が活性化していたことを伝え、その調査でここにやってきたことを告げる。

「ああ、それは私の魔力が原因だな」

「それはわかることだが、どうして急に魔力が漏れるようになったんだ?」

エルダニアには長いこと住んでいたが、この辺りの魔物がエレンの魔力によって活性化したのは初めてだ。

「おそらく、勇者が私に施した封印が劣化したのだろう」

あー、三百年も経過しているからな。恐らくはエクストラスキルの類だと思うが、それでも三百年も効力が持続するとは凄まじいものだ。

「うん? ということは俺が封印を解かなくてもいずれは解放されたってことか?」

「緩んでいたと言っても後百年は出られなかっただろうし、その時まで私の肉体が保っていたかも微妙なところだ」

どうやら俺が封印を解錠していなかったら結構危なかったらしい。

それを考えると、エレンにとって俺は命の恩人のようだ。

「私の魔力が原因なのであれば、それを散らしてやればいい」

エレンが勢いよく腕を動かすと周囲を漂っていた濃密な魔力が綺麗に消え去った。

「あとは数日もすれば、魔物たちも落ち着くはずだ」

「それは助かる」

いずれ魔物たちが沈静化するのであれば、この件については問題ないだろう。

マグルには悪いが調査に赴いたが、異常はなかったと報告させてもらうしかないな。

山脈にある洞窟の中には古代の勇者が封じた炎竜がおり、魔物たちが活性化していたのは炎竜の魔力に充てられたせいでした。なんて報告できるわけもないし。

こうして俺は炎竜あらため――エレンと行動を共にすることになったのだった。

「くそ! なんでだ!」

エルダニアの街から南に位置する【獣の迷宮】の二十階層にてジェイドたちは魔物たちと対峙して

いた。

「今まで通じていた攻撃が急に通じなくなってやがる! 一体どうなってやがるんだ!?」

「ヒヒヒイイイイインッ!」

ジェイドが剣を構えて炎馬と向き合う中、横合いからブルホーンが突撃してきた。

ジェイドはいつもより反応が悪い身体に苛立ちながらも何とか反応し、ブルホーンの突撃を回避する。

「おい、ハロルド! しっかり魔物を引けつけろ! それがタンカーとしてのお前の役目だろ!」

「それならすでにやっている!」

「はぁ!? たった三体を抑えてるだけじゃねえか! 前は十体に囲まれようが平気だっただろ!」

「今日は魔物の攻撃がやたらと重いんだ! それにスキルも調子が出ないのか、発動できないものが多い!」

ジェイドの後方ではハロルドが息を荒げながら大盾を構え、グレイウルフたちを抑えていた。以前は大勢の魔物に囲まれようが完璧に魔物のヘイトを逸らすことのない、頼もしいタンクだったが今の

姿はどうしてかへっぴり腰で頼りない。

「ったく、舐めたこと言いやがって! ジュリア! 魔法だ!」

「わ、わかった!」

ジェイドは仕方がなく炎馬とブルホーンの相手し、ジュリアの魔法による状況の打開を試みる。ジュリアが魔法を放ちやすいように射線を意識して時間を稼ぐが、いつまでたっても魔法が飛んでくる

気配はなかった。

「おい! なにちんたらやってんだ! いつもみたいにさっさと魔法をぶっ放せよ!?」

「うっさいわね! 黙ってて!」

炎馬の蹄を躱しながらジェイドが声を張り上げるが、ジュリアは真剣な表情でなぜか詠唱している。

「ちっ」

ジェイドがなんとか魔物の攻撃を捌きながら注意を引きつけていると、後方にいたジュリアの魔法がようやく完成した。

「いくわよ! 【火炎槍】ッ!」

赤い魔法円が輝くとジュリアの周囲に炎の槍が二本生成され、それらが炎馬とブルホーンへと射出されて突き刺さる。

しかし、炎馬にはまったく効果はなく、ブルホーンは少し痛痒の声を上げたが、表面の毛皮が少し焼けた程度であった。

「ジュリア、ふざけてんのか!?」

「今日は調子悪くてできないのよ! 魔力の通りも悪いし、なんか詠唱もしないといけないし! ていうか、さっきから文句ばっかり言ってるけどジェイドこそなにやってんのよ! いつもみたいに

【雷閃斬】を使って前を切り開いてよ! アタッカーでしょう!?」

「うっせえな! 今日は妙に身体が重いし、【雷閃斬】は使えなくなってんだよ」

ジュリアが指摘をすると、ジェイドはバツが悪そうに言い返す。

「ねえ、これってアキトがいなくなったせいじゃないの? アキトがいなくなってから獲得できるスキルもかなり少なくなっちゃったし……」

「そうかもしれないな。アキトがいなくなって俺たちのスキルが大幅に減少している」

「そんなわけねえだろ! あいつはただのお荷物で俺たちをロクにサポートする力なんてねえ!」

「ちょっ! ジェイド! ちゃんと前を見なさいよ!」

激昂し、注意を逸らしてしまったジェイドへと炎馬が炎を纏いながら突撃してくる。

「ぐあああああっ! あちいっ! ちくしょう!」

ジェイドが吹き飛ばされ、前衛がいなくなったことにより炎馬とブルホーンのヘイトがハロルドへと向かう。

「これ以上はマズいぞ! この数は俺も抑えられない!」

「ジェイド、一旦引き返すわよ! これ以上魔物に囲まれたらシャレにならないわ!」

「くそっ……! 退くぞ!」

ジェイドが苦渋の表情を浮かべながら決断すると、二人を連れて十九階層へと引き返すことになるのだった。