軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シィの進化

「ほぉー……これはまた、ユキのどツボを突いたような容姿じゃな」

まじまじとシィを見詰め、ツンツンとその頬を 突(つつ) きながらレフィがそう溢す。

「お前の中の俺の人物像を今一度正す必要があるな。……あー、それで、どうしてシィがこんな……こんなことになっちゃったんだ?」

「うん!えっとね、シィがね、なんか出来そうだって言うから、やってみてって言ったら、出来たの!ねー!」

「ネー!」

俺から降りたイルーナは、ニコニコしながらそう言ってシィと顔を見合わせる。

超可愛い。超可愛いが、全然わからん。

とりあえずその後、幼女特有の――というより、子供特有の言いたいことをいっぱい喋るイルーナの話を聞いて、俺なりに解釈した結果が、こうだ。

どうやら、シィが 種族進化をしたらしい(・・・・・・・・・・) 。

少し前に、イルーナが遊んでいたら転んでケガをしてしまったらしい。そこにポヨンポヨンと跳ねて来たシィが、ケガが痛そうだったから「治れー、治れー」と傷に触れて念じていたら、急に身体が光り始め、そして気付いた時にはイルーナの傷が消えていたそうだ。

恐らくは、その時に種族進化を果たしたのだろう。

ちょっとイルーナに似ている幼女の姿になっているのは、進化した後に何だか出来ることが増えたような気がしたらしく、先程イルーナが言っていたように「出来そうだからやってみる!」とやってみたら、ホントに人型に変身出来てしまったそうだ。なんか通常のスライムの時のシィと、普通にコンタクトを取れている様子のイルーナについては、とりあえず今は置いておく。

……うん。まとめても何一つわからん。

名:シィ

クラス:治癒士

種族:ヒーリングスライム

レベル11

HP:130/130

MP:572/572

筋力:21

耐久:51

敏捷:32

魔力:256

器用:64

幸運:114

固有スキル:身体変化

スキル:捕食lvⅢ、再生lvⅢ、回復魔法lvⅡ

称号:魔王の眷属、癒しのスライム

……知らん間にすんごい数値が上昇してんな。魔力値などに限っては、街で見た人間どもよりも倍以上高い。

でも、シィは外の森には一緒に散歩する時ぐらいしか出していないし、そんなレベルを上げる機会などなかったはずなのだが……。

そう、まず何よりの疑問がそれだ。種族進化は……まあ、魔物は割とすぐに種族進化をするっていつかレイラが言っていたし、今回もレベルが上がったから、ということで無理やり納得しておくとして、そのレベル自体はいつの間に上げ――。

――いや、待て、そう言えばシィには捕食スキルがあったな。

捕食スキルの効果は確か、食したものに含まれる魔力を吸収し、自身の糧として取り込む、とか何とかってスキルだったはずだ。

シィは何でも食べて何でも喜ぶもんだから、俺もおやつ感覚で色んなものを食わせていたし、もしかするとそれが理由で体内魔力が高まり、ここまでレベルが上がったのだろうか。

……でもなぁ、それにしては上がり幅がデカすぎる気がする。

そんなんでレベルが上がり、種族進化をするようであれば、森に棲む肉食のヤツらなんか皆進化しまくりだろう。だって毎日魔物肉食ってんだから。

そうでなくとも、森にある自然の果物や野菜などには、魔力が多く含まれていることを魔力眼を通して知っている。

魔物だからといって、シィのようにすぐにレベルが上がって簡単に種族進化出来てしまうようなら、人間とかなんてあっちゅう間に駆逐されて滅亡待った無しだ。

「む……」

「何だ、レフィ、心当たりがありそうな顔だな?」

「いや、その……儂が時折、魔力をやっていたからかもしれん」

「……魔力を?」

そう聞くとレフィは、ちょっとだけバツが悪そうにしながら話し始めた。

「うむ。シィが何かを食べる時に、それの含む魔力を吸収しておるのを見てな。ならば儂の魔力も食べてみるか?とやっておったのじゃ」

「オエーチャン、ノ、アリョウ、オイシウテ、スキー!」

ニコニコしながらそう言うシィ。可愛い。

……なるほど、それなら納得かもしれない。

コイツの魔力を身体に流されたことがあるからわかるが、レフィの持つ魔力は密度が凄まじく、俺と同じ量の魔力を使用しても、発生する効果にデカい差が出来る。

簡単に言うと、俺が十の燃料を使って十の効果を生み出す時に、レフィは十の燃料を使って 百の効果を(・・・・・) 生み出してしまう(・・・・・・・・) のだ。

恐らくは、今の身体――いや、龍形態の時でさえも、その身を上回る莫大な魔力を体内に有しているために、俺達とは魔力の圧縮率が半端なく違うのだろう。

ちょっと前に、街でレフィがゾンビを倒すのに家ごと燃やしてしまっていたが、あれはその圧倒的な魔力の差故のことだ。彼女にとって、小規模な魔法を発動するのは至極神経を使うことであり、しかし本人の性格がズボラであるため、結果いらん規模の魔法が発動してしまう訳だ。

そんなものをおやつ代わりに食べていたのであれば、こんなすぐに種族進化を果たすことが出来て、ステータスの値の中で魔力値が飛びぬけて上昇しているのも頷ける。ドーピングアイテムみたいなもんだ。ポ〇モンだとふしぎなアメといったところか。

どうでもいいけどふしぎなアメって、アレ絶対何かの薬物だよな。

ヒーリングスライムへと進化を果たしたのは……別にいいか。シィは元々ダンジョンに癒しを振り撒く存在だったし、物理的にも癒しを振り撒けるようになったのだ。素晴らしい。

イルーナに似ている今の姿を取っているのは、恐らく新たに取得したらしい「身体変化」のスキルを用いているのだろう。

身体変化は確かリルも持っているスキルだったが……まあ、シィは元々不定形だからな。恐らくはアイツよりも取れる形状が多いのだろう。シィはスライムだから性別なんて無いし。

「そうか……そうか」

そう呟いて俺は、ポンとシィの頭に手を置く。

最初は驚きの感情しかなかったが、だんだんとシィが成長したことに対する喜びが、じわじわ胸に沸いて来る。

「? アルジ、ハ、シィ、シンカ、シテ、ウレシイ?」

「おう、とっても嬉しいぞ。シィが成長してくれてな」

本当に、感慨深い。

子供の成長を喜ぶ親とは、こんな気分なのだろう。

頭を撫でてやりながらそう言うと、にへら、と笑みを溢すシィ。

「シィ、モ、ミンアトイッショ、ノ、スガタ、ナレテ、ウレシイ!」

ヤバい。何この超絶可愛い生き物。

「ユキ、頬がすんごい緩んでおるぞ」

「う、うるせぇ。というか、お前だってにやけてるじゃねえか」

「ちっ、違うわ。これは不敵な笑みというものじゃ」

いや、それはそれでおかしいだろうに。

「……そういや、イルーナ。イルーナはシィが普通のスライムの時でも、何を言ってるのかわかってたのか?」

「うん!もちろんわかるよ!だって、お友達だもん!」

「オオ、モアチー!」

――あぁ、うん。もうホント、可愛いから何でもいいや。