軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔力紋

「そうだ、おねーさんさっき、魔物素材の買い取りもしているって言ったよな?」

「はい。今お売りになるものがあるのであれば、承りますが」

どうせだ、勇者に奢らせてばかりじゃ悪いから、ここで手持ちの魔物の死体、換金させてもらおうか。

と、いつものようにアイテムボックスを開こうとしたところで、ふと思いとどまる。

「ネル、アイテムボックスは人間の間じゃどんな扱いなんだ?」

「『収納』の魔法のこと?それなら、適性のある人だったら使えるから、珍しいものではあるけど特別おかしなものじゃないかな」

そうか。なら遠慮なく使わせてもらおう。

俺は虚空の裂け目を出現させ、その中に手を突っ込んで手頃な魔物の死体を探す。

リルと組んでじゃないと倒せないような結構強いヤツは、総じて肉が美味いので残しておくとして……そうだな、俺でもワンパンで倒せるようなヤツを数体出すか。

虚空の裂け目から選んだ死体を取り出し、それを指定された場所にドサドサと降ろす。

「お、おい……あれ、もしかしてホーンタイガーじゃないか?」

「あっちのはブラッディ・ベアだぞ!?」

「マーモドルティスまであるじゃねえか!」

こっちの様子を何となくで見ていたらしい数人が驚きの声を漏らし、その声に反応した者達がさらにこちらを向いて、同じ驚きの声を漏らす。

いつしか、会館の中にいた者達の大半が、「おお……」という感嘆とともにこちらを向いていた。

「フッ……」

そんな人間どもを前に、俺は腕を組んで、笑みを溢す。

いやー、気持ちが良いね。

どうよ、凡人ども。これが圧倒的な力の格差というものなのだよ。

フハハハハハハハ。

「ユキ。そんな馬鹿丸出しの表情しておらんで、さっさと済ませろ」

「……なあレフィさんや。今ちょっと良い気分に浸ってたんですよ。いいじゃないですか、ちょっとぐらい」

「わかったわかった、何でもいいから早く終わらせろ。ここ、飽きた」

良い気分でいたところをレフィに水を差され、渋々と俺は目を見開いて固まっていた受付のおねーさんを促し、換金を進める。

「――お、お待たせいたしました。こちらが代金となります」

「どーも」

「ま、またのご利用をお待ちしております」

頭を下げるおねーさんを後目に、俺達はギルド会館を後にした。

* * *

「ほら、ネル」

「えっ?――と、おわっ!?」

建物を出ると俺は、すぐにもらった金を二つに分け、片方はアイテムボックスに、もう片方は貰った袋に入れたままポンと勇者に投げ渡した。

「これは……?」

「道中の飯代」

「えっ!?こ、こんなにいっぱい、もらえないよ!?」

袋の中を二度見してから、そう驚きの声を漏らす勇者。

「俺、そんないっぱい金持ってても使い道ないし。まあ、色々教えてもらったから、その代金ということで」

「い、いいの?ホントに?後で返してって言っても返さないからね?」

「言わないって」

そう言うと勇者は、アワアワとしながらその袋をどうしまおうかと悩み始める。

どうもこの勇者、金銭感覚がエラく庶民的である。コイツぐらいの強さがあれば、俺が倒した魔物ぐらいは余裕で倒せるだろうに。金に苦労したことでもあるのだろうか。

「なあ、それよりネル。これ、何だ?」

俺はそう言って、彼女に冒険者ギルドでもらったカードに刻まれている紋様を指差す。

「それ?それは個人の魔力の波紋だよ。『魔力紋』とか呼ばれてる。一人一人で必ず形が違うから、個人の特定が出来るんだ。ちょっと、魔力流してみなよ」

腰に袋を括り付けることでようやく落ち着いた勇者に言われた通り、カードへと魔力を流し込んでみると――突然、ふわ、とその紋様が溝に沿って仄かに発光し始める。

「それ、他人がやると光らないから、偽の身分証とか持ってると一発でバレちゃうって訳」

「へえ、上手くできてんな……でもこれ、魔力無いヤツだったらどうすんだよ」

「? 何言ってるのさ。魔力の無い人なんている訳ないでしょ?魔力が上手く循環させられないって人はいるけど、そういう人達には専用の身分証が与えられるし」

不思議そうな表情でそう言う勇者。

あぁ……そうか、こっちはそういう世界だったな。

それにしても、思っていた以上に制度がしっかりしてやがる。ちょっと侮っていた。

と、感心していたのだが、聞くところによるとこの制度が導入されているのはどうやらまだこの街だけであるらしく、他のところはもっとずぼらな管理体制らしい。

前に一回会ったこの街の領主のおっさん、実は結構やり手だったようだ。

「あと、紋様の形には何か意味があるのか?」

「それは、その人が得意とする魔法の系統を表しているって言われてるね。でも、はっきりと形が浮かぶ訳じゃないし、まだよくわかってないって話だよ」

なるほど、確かに俺の一番得意とする魔法は水の系統だしな。この紋様が、何となく水とか川とかを想起させるものであるのも頷ける。

……よし、今度からは『武器錬成』で俺が作成した物には、この紋様を刻むとしよう。ちょっとこの紋様、気に入った。

「レフィの方はどんなのが刻まれてたんだ?」

「儂か?ほれ」

そう言って、彼女は服のポケットからカードを取り出し、俺に見せる。

「これは……火、か」

「うむ。お主にはあまり見せたことがないが、儂も確かに火を一番得意としておるな」

「へぇ?そうだったんだな。その割にはあんまり見たことねえけど」

「……火は汎用性が低いからな。燃やすだけじゃ。それに、お主の適性も水と土に偏っておったし、ならば別の魔法を教える方が良かろうと、あまり使ってこなかった」

苦さの垣間見える表情を浮かべるレフィ。

……何か、思うところがあるのかもな。

「まあでも、普通にカッコいいと思うぞ、火。お前にも合ってるし。情の女って感じで」

「そうか?」

「あぁ。お前の火だったら、あたたかそうだしな」

俺がそう言うと、彼女は片頬を少しだけ吊り上げて「フッ……」と笑い、俺との距離を一歩分だけ縮めた。