軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

我が息子との一日

俺は、我が息子、サクヤを抱っこしながら、言った。

「さて、我が息子よ。お前のツボは、なかなか難しい」

「あうぅ?」

よくわかっていない様子で、こちらを見返してくるサクヤ。

我が息子は、本当によく人の顔を見る。こちらの顔を見て、こちらの感情の機微を繊細に感じ取っているのがわかるのだ。

「お前は、喜びはするが、大喜びってあんまりしないだろ? 楽しそうにはしてても、リウみたいに大はしゃぎはしてくれないからな」

「うばぁ」

「だが、それでは親として思うところがあるんでな! そこで――コイツらだ!」

やって来た魔境の森にて、ばばーんと我が息子に見せたのは、我が相棒リルと、我がペット達が個人的に配下にしている魔物軍団の一部。

特にリルに忠誠を誓っている、狼の群れだ。

「どうだ、モフモフ天国だぜ!」

この狼軍団、リルの薫陶篤いというか、もう絶対服従をしているので、リルが「大人しくしていろ」と命じれば絶対に大人しくしている。

リルが「川で身体洗ってこい」と言えば全匹で川に飛び込むし、「触り心地が良いようにちゃんと毛並みを整えろ」と言えばしっかりと己らでグルーミングを行ってくるのだ。

……なんかすまん。

狼型の特徴なのか、知能が他の魔物と比べて高めであるため、リル程でなくとも十分に賢いのだ。身体がデカいから、脳味噌の容量も物理的にデカいのだろうとは思っている。

以前も、迷い込んだ人間の怪我人を襲わず、どうするのかリルに確認を行ったこともあるため、俺もサクヤを連れて来てもいいかなと思う位には信用している群れである。

「あうぉ!」

と、目の前のモフモフ軍団を見て、サクヤは嬉しそうにきゃっきゃとはしゃぎ始め、腕を伸ばしてそちらに行きたがる。

うむ、やっぱり我が息子は、魔物達が大好きなようだな。

リウもサクヤも我が家のペット軍団と会うと喜ぶが、リウはそれ以外の、我がダンジョンの勢力圏で暮らしているペットじゃない魔物達には、ちょっと怖がったりすることもある。

まあ普通の反応だろう。

で、サクヤはウチのペット達のみならず、そういう魔物達にも全然怖がらず、全てと仲良くなろうとしているような印象だ。

不思議なのは、その魔物達が、意外と普通にサクヤに懐く、という点だろうか。

ペット軍団達が厳しく躾けてるから、という理由もあるかもしれないが、何だか見ているとしっかりサクヤのことを注視して、自然と傅くような、従うような姿勢を見せるのだ。

今も、リルに言われたからというより、各々の思いからジッと我が子を見詰め、待っているかのような印象を受ける。

我が息子が持つ、『魔物達の王』って称号に関係があるのかもしれないが……まあ、その辺りは別にどうでもいい。

大事なのは、サクヤが何を好むのか、という点だけだ。

サクヤが動物好きなら、俺達は動物をいっぱい見せて、関わらせてやるだけである。幸いウチにはいっぱいいるし。動物園とか、個人的に開けるくらいにはいる。

「あぶぅあ!」

群れの中心まで連れて行って降ろしてやると、サクヤは元気良くハイハイで彼らに近付き、一生懸命手を伸ばしたり、顔を擦り付けたりして、喜びを全身で表現している。

あの歳でモフモフの良さがわかるのは、なかなかやる息子である。まあここの狼どもは、リル一家程毛並みは良くないがな。

我が息子が触れるのを、狼達は嫌がらず大人しく受け入れ、慈愛の表情で舐めてやったり、息子を中心に周囲に集って、何だか楽しそうにワイワイやっているのだ。

「クゥ」

「おう、やっぱウチの子には、魔物に対する何かがあるっぽいな。この子が大きくなったら、お前らの世話はサクヤにやらせてもいいかもな」

とか言って、別に俺もペット軍団の世話なんてほとんどしてないのだが。

週に数回、顔見に来たり、リウとサクヤを連れてくるくらいだし。

別に餌の用意とかしてないからな、俺。時折美味い食材を差し入れに持ってくるくらいだ。

以前と比べると、リル達のおかげで魔境の森は随分平和になったので、あんまりこっちの様子を見る必要もないという理由もある。

最強の生物達が生息している西エリアだけは、まだまだ油断大敵であるが、それでもリルがとんでもない強さになった上に、積極的に我がペット達が境界線付近で狩りを行っているため、西エリアとこちらの境目にはあまり魔物が近付いて来なくなったのだ。

だから、リルを頭にした戦力だけで十分に事足りていて、ぶっちゃけ大分ペット達は暇しているようだ。

最近は、遠くまで遠征に出て魔物狩りをやることもあるようで、そこに俺の配下ではない魔物達も連れて行って、レベル上げをしてやっていることもあるらしい。

……ちょっと前ネルから、「聞き覚えのある特徴の狼をトップにした、聞き覚えのある魔物の軍団が行進してて、『百鬼夜行』だなんだと大騒ぎになってる街があったんだけど……ま、まあ、ウチには関係ない話だよね!」とか聞いたんだが、か、関係ないです。はい。

実際のところ、リル達が狩るのは危険な魔物ばっかなので、むしろ魔物被害は減ってるはずなんだけどな。

あと、遠征にはセツの訓練のためって理由もあるようだ。とにかく経験を積ませる時期のようで、魔境の森の魔物のみならず、色々と戦わせているようだ。

「クゥウ」

隣で、リルは話す。

己の主は、俺だと。

だが、己達の 王(・) となるは……もしかすると、この子なのかもしれないと。

「はは、ま、称号にもあるしな。ただ、こうして見る限り、この子の『王』としての在り方は、そう悪くない気がするんだ。そこは俺達の教育次第な部分もあるかもしんないが……」

と、狼達に囲まれていたサクヤが、ふと俺を見る。

「だあ!」

そして、満面の笑みで、こちらに向かってハイハイを始めた。

俺もまた、我が息子の求むるままにそちらへ向かい、抱き上げる。

「おう、満足したか? みんな、お前のことを歓迎してくれて、守ろうとしてくれてんだ。だからお前も、ちゃんとみんなを守ってやってかないとダメだぜ? それが男の役目ってもんだ」

「あうぉう!」

「おう、良い返事だ。――よし、そんじゃあこのまま、みんなで散歩にでも行くか! リル、あとリルの配下ども! 付いて来ーい!」

「クゥ」

『ガウッ!』

俺の返事の後、リルが狼達に向かってクイ、と首で合図を出し、すると俺達の周囲を守るように一斉にやって来る。

いっぱいの白いモフモフが動く様子は、我が息子には大ウケだったようで、きゃっきゃと喜び、そして喜び過ぎて散歩を初めて数分くらいで、疲れて眠ってしまった。

俺は笑って、リルと狼達に「今日はありがとな、またウチの子と遊んでくれ」と声を掛けた後、サクヤを抱っこしたまま家に帰ったのだった。

サクヤ、お前にはモフモフ以外にも、サラサラとか、フワフワとか、ツルツルとか、いっぱい会わせてやるからな!