軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

攻略開始《1》

「陛下、アンタも付いて来るのかい?」

「勿論さ。ここまで来たのならば、最後まで付き合うよ。ねぇ、クア」

「……申し訳ありません、エルドガリア様。我が夫は、こう言い始めたら翻意を促すことは非常に難しく」

楽しそうな魔界王に対し、妻のクアラルカ奥さんは、微妙に申し訳なさそうに頭を下げる。

なお、奥さんの方は俺達には同行せず、調査キャンプにて待機である。まあ、それはしょうがないだろう。

当然のことだが、はっきり言って魔界王も奥さんも、調査という点で言えば何の戦力にもならんからな。

それを二人ともわかっているが、それでも引かないのが魔界王である。

……つっても、多分コイツがこうやって言う時は、それが必要なのだと思っているからなのだろうが。

「あー、わかりますよ、クアラルカさんー。私の夫も、そういうところがありますのでー。良くも悪くも、こうと決めた時は曲げないのですよねー。殿方であれば、多少頑固なところも持っていてほしいものですが、それが悪いところで働くんですよー」

「えぇ、えぇ、わかります。殿方は基本的に見栄っ張りなところがありますが、そこに頑固が合わさると少々面倒になるのですよね」

「ユキさんも、魔界王陛下も似たところがありますものねー」

おっと、こっちにも飛び火してきたな。

妻達の言葉が耳の痛い我々は、スッと視線を逸らす。

ちなみに、サクヤの分の鎧もしっかり造られ、実は最も手の込んでいるのが我が子のではないかと思わなくもない。

幼児が着ても、不愉快さで泣かないよう、それでいてしっかり効力を及ぼすよう、限りなく軽く造りながらも関節部分などに非常に細かく手が加えられており、サクヤのだけ普通に実用品という感じである。

加工を行った技術者達が、腕の見せどころだとなんかすごい張り切って造ってくれたのだ。

おかげで、大人でも不便さの感じる鎧を着せても特にぐずることなく、ただ不思議そうに自分の身体を見ていた。

そして、鎧着用幼児という姿を見てみんな可愛い可愛いとデレデレになっており、サクヤはもう羊角の一族には大人気である。

この遺跡の、地底世界を見つけたのもサクヤだし、それもあって一気にウチの子の名が広がった感じだ。

「オホン、それより、準備が出来たのならさっそく行こう」

「そうだね、そうしようか。――さあ、アンタら、いよいよだ。ここに、特大の未知と神秘がある。それを解き明かすチャンスが、目の前にある。気合入れて行くよ!」

エルドガリア女史の言葉に、皆は「おぉ!」と声を張り上げた。

――そして、遺跡攻略は開始。

先頭は、いつも通り俺。すでに顔なじみとなった調査隊の面々を連れ、向かう先は、以前に逃げ帰った隠し通路の下水道。

羊角の一族の面々は城下町の方も調べたいようだが、何はともあれ、まずは遺跡最奥へ辿り着くことを目指す。

「へぇ……ここは下水道なのかい。現代ともほとんど変わらないか、それ以上の技術力を感じるね。後世に伝わらなかった技術もたくさんここにはありそうだ」

「あぁ、今なら再現可能なものも多いが、当時のものとしてはあまりにも隔絶した技術力さね。まさにロストテクノロジーだ」

魔界王とエルドガリア女史の会話を聞きながら、横で俺は思う。

神代の技術っていうか……多分、 異世界(・・・) から持ってきた技術なんだろうけどな。

その辺りを家族以外に話すことはないが、俺は元々異世界人であり、ダンジョンでは同じように異世界の技術が使用出来る。

そして、この世界そのものである『ドミヌス』と『ダンジョン』は本質的には同じものだ。

違いと言えば規模の差くらいで、である以上『ドミヌス』の『原点』たるこの場所でも、同じことが出来たはずだ。

だから、その気になればもっと近代の技術も使えたはずなのである。それを、やらなかっただけで。

他所から完成した技術を持ってくるのではなく、一から文明を発展させていくために、わざと石積みの文明から始めたのだと思われる。

まあ、エンシェントゴーレムとかいるし、都市自体も大分先進的な造りになっているが……うん、我慢出来なかったのかもしれない。

どっちにしろ、急に現れた超文明な訳だし、そりゃあ後世に伝えられず消え去った技術は、たくさんあったことだろう。

と、そんなことを考えていた俺は、そこで警戒態勢に入る。

「――来た、ゴーレムどもだ」

前回と同じ辺りの場所まで来たところで、やはり同じようにゴーレム達が現れる。侍ロボも一緒だ。ここだとセット運用なんだな。

ただ、前回と違うのは、向こうが俺達に気付いていないという点だ。

しっかり鎧が効果を及ぼしているようで、ゴーレムの顔らしき部位がこちらを向くが、何のリアクションもなくまた別の方向を向く。

こうなることはわかっていた訳だが、うむ、すごい。よくまあ、この短期間でこんな偽装を可能にしたものである。

皆、ちょっと緊張した面持ちであったが、ゴーレム達がこちらを気にしていないのを見て、ホッと安心した様子だ。

仮に急に敵対でもされれば、普通に死ねるからな。そういう反応になるのも無理ないだろう。

「……行くよ、アンタ達。ただ、油断しないように。道具はあくまで道具。過信し過ぎるんじゃあないよ」

それから、しばらく下水道を進む。

時折ゴーレム達とかち合うが、その横をすり抜けて奥へ奥へと向かう。

一本道ではなく入り組んでいるが、そこで力を発揮するのがサクヤレーダーだ。

ここまでと同じように、的確に道を指し示し、もはや誰一人それを疑うことなく我が息子に従って歩く。

いや、初めてサクヤがレーダーぶりを発揮する様子を見た魔界王だけ、非常に興味深そうにしていたが、特に問い掛けてくることはなかった。

そうして進む内に、やがて俺達が辿り着いたのは、上への階段と、その先にある扉。

ここまでと同じように、俺が先頭となってそれを昇り、奥の扉を開き――。

「ここは……城内に出たのか」

半ばそうだろうとは思っていたが、やはり下水道の繋がっていた先は、あの城だったようだ。

――無人の城。

壁に存在する無数の松明が煌々と燃え、内部を照らしている。

かなり広く、天井も高いが、どうやらここはただの通路のようだ。壁にはステンドグラスがはめ込まれ、地面に綺麗な絨毯が敷かれている。

ゴーレムは、今のところいない。俺の警戒に引っ掛かるものもない。

どこか、兵器工廠のようなところから派遣されてきているのだろうか。

「……みんな、大丈夫そうだ。出て来てくれていいぞ」

そう呼ぶと、全員が俺の出て来た扉から中に入ってくる。

「ここは……あの城の中ですかー」

「あぁ。やっぱりここと繋がってたみたいだな、下水道」

「……ものすごい魔素の濃さだね。外の空間と比べても一層濃い。これが神代の通常だとしたら……いったいここで暮らしていた人々は、どんな強さを持っていたことか」

「はいです……魔力関係の能力は、一般人でもかなり秀でたものになると思うです」

俺は、サクヤを見る。

「サクヤ、行き先は?」

「あうよ!」

「オーケー、こっちな」

「……そろそろ、君の可愛い息子の、不思議能力について問いたくなってきたよ」

ポツリと呟く魔界王に、俺は肩を竦める。

「サクヤレーダーだ。原理は俺達も知らん。神のみぞ知る、だな」

サクヤの示す通りに歩いていた俺達は、だがすぐ行き止まりに辿り着く。

まず目につくのは、壁にある四つの巨大な扉。

一つ一つに何か記号らしきものが描かれており、そしてこの部屋の床にも、同じく何か記号らしきものが描かれている。

これは…… 謎解き(・・・) 、か?

ヒントと思しき壁画っぽいものもあり、頭脳労働が必要な場所のようだ。

「はは」

「? どうしましたー?」

「いや……遊び心満載だと思ってな」

こんなデカい空間用意して、そこを丸々謎解きに使うとは。

参考になるぜ。俺も作ろう、今度。

「さて、お師匠さん。ここはアンタらの本領発揮――」

「あうぅ! うぅ!」

「――と思ったが、すまん。先にウチの子が解いちまったようだ」

「あはは、しょうがないね。こりゃあアタシら、廃業しないといけないかもしんないね」

サクヤが示すのは、一つの扉。ここまでと同じように、アレが正解なのだろう。

悪いな、製作者の神。多分地の女神ガイア。

ウチの子……なんか不思議な力が使えんだ。本来ならここで頭を使ってほしかったんだろうが、ズルさせてもらうぜ。