軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヴェルモア大森林遺跡《8》

最終的に、SFアルマジロを十体くらいはスクラップに変えただろうか。

一気に十体来た訳ではなく、後から追加が増えていったのだが、割とキツかった。

やっぱ数が出て来ると、強い。質の伴った量は脅威そのものだな。

その俺の戦闘を観戦していたフィナルは、大喜びで手を叩きながら「いやはや、君の戦いっぷりは派手で面白いねぇ。お酒が飲みたいところだ」なんて言ってやがった。お前な。

ただ、そこから数日の間は、ちょっと暇になる。

頭脳労働ではなく、純戦闘要員である俺は、SFアルマジロを使って技術者達が作業している間はやることがほとんど無いので、エンと共にサクヤの世話をし、フィナル夫妻と雑談に興じるくらいである。

こういう時に、本来は周辺領域の安全の確保をするのだろうが、一日目に大規模な間引きをやったおかげで、対処しなければならないような魔物の気配は一切無く、平穏そのもの。

あと、フィナルが地底世界を妻に見せてあげたいと言うので、警備が出て来ない辺りまでは観光に付き合ったりもした。

フィナルがクアラルカ奥さんを大事にしている様子を見て、思わずニヤニヤしていたら、ヤツに「……うーん、普段ならユキ君に対してこんなことを思わないんだけど、今だけはちょっと、腹が立つねぇ」と珍しくピキつかせることに成功した。

煽り耐性マックスのヤツを苛立たせることが出来たのなら、俺も大したもんだ。

なお、隣のクアラルカ奥さんもフィナルを煽る方に乗っかり、するとフィナルは困ったような顔をしながらも、「やれやれ」といった様子でそれを受け入れるのだ。幸せそうで何よりである。

なんか、本当に旅行に来たって感じで、満喫している二人だ。みんなが忙しくしてる中でちょっと悪いとは思うが、実際することが無いので、フィナル夫妻と酒盛りなんぞもしたしな。なかなかそれも楽しかった。

まあ、普段は王として、それはもう目も回るような忙しさなのだろうし、これくらいのんびりした時間も必要だろう。

一種の超人と言えど、ヒトはヒトだ。休息は必ず必要である。

そして、大分暇していた俺達とは違って、レイラの方は本領発揮といった様子で超忙しそうにしていたのだが、とても良い笑顔であった。

一分一秒が勿体ないとばかりに研究に従事しており、食事もテキトーで夜もほぼ徹夜みたいな感じだったので、飯はちゃんと食えと珍しく俺の方が苦笑しながら注意したくらいだ。

そんな俺達の様子を見て、エンなんかも「……主が注意してるとこ、初めて見た」なんて興味深そうにしており、レイラはちょっと恥ずかしそうにしていた。

我が妻よ。そんなお前も俺は愛しているぞ。

「サクヤ、悪いな。レフィ達に会えなくて寂しいかもしれないが……もうちょっとだけ付き合ってくれ」

「ぶぅ、あうぅ」

「ま、お前も興味があんだろ? あの城の先に、いったい何があるのか。俺もお前も、男だからな。こういうものにワクワクするのは、よくわかるぜ」

しばらくレフィ達に会っていないサクヤだが、やはりそれが寂しく感じる時があるらしい。

多分レフィを探してんのかな、と思うような感じでキョロキョロしてから泣く時があるのだが、ただレイラがあやすと泣き止むので、彼女のこともしっかり母として認識してくれているようだ。

なお、いつも通り俺があやしても泣き止まない。まあわかってたことだが。

ちなみに、エンがあやした時は、泣き止む時とそうじゃない時がある。

本気で泣いている時は彼女では泣き止ませられないが、軽く泣いているだけの時なら何とかなる感じだ。

あと、少女組の中で、リウとサクヤを泣き止ませるのが一番上手いのは、実はシィである。次がレイス娘達。

二人がペットの中だとセイミに一番懐いているように、シィのあの独特の身体が二人には見ていて面白いらしく、すぐに泣き止むのである。

レイス娘達も、常にふよふよしているのが面白いようで、彼女らが近くにいるとそちらを目で追いかけ、泣いていることを忘れるのだ。

それでイルーナとエンが、ちょっと悔しそうにしている様子を数回見たことがある。可愛いものだ。

「――ユキさんー、ユキさん、いますかー?」

「お、どうした、レイラ?」

サクヤの世話をしていると、最近ニッコニコな様子の、そして今もニッコニコなレイラが俺のところへやって来る。

「お師匠様が、呼んでいますー」

「! ということは……」

「はい。――試作品が、完成しましたー」

◇ ◇ ◇

「来たかい、魔王。よし、これを着てみてくれ」

そこにあったのは、有り体に言えばスクラップで構成されたような、継ぎ接ぎだらけの鎧だった。

装飾など一切存在せず、恐らく無駄もまだ多いであろう、有り合わせの品で造られた感満載の品である。

SFアルマジロを思わせる部位も幾つかあって、ただそれでも最低限『鎧』として機能するだけの形にはなっている。

鎧か……考えてみれば俺、この世界で防具を装着するのって、初めてかもしれない。

動き難さのせいで、今まで毛嫌いしてたし。

「うわ、重ぇ……これ、俺ならまだ何とかなるが、他のみんなじゃ動けなくなるだろ」

レイラの手を借りて装着してみるも、かなりの重量がある。

これを着たまま戦闘はしたくないな……やってやれないことはないだろうが、機動力マイナス二十パーセント、って感じだ。

「そこはまだ考え中さ。ただ、まずはその鎧が効果を為すかどうか。そこを確認しないとね」

「これが効果を及ぼすことを切に願うね。――よし、それじゃあさっそく試そう」

そうして、流石にもう慣れて来た通路を辿り、再び俺はエンと共に地底世界へと降り立つ。

皆はかなり後ろに離れ、鎧を装着した俺だけが、ゴーレム警戒網に引っ掛かる領域へと入り込む。

すると、やはり感知はされたようで、SFアルマジロが数体出現するが――。

「……おぉ」

襲われなかった(・・・・・・・) 。

俺の存在を見ても反応を示さず、どこかのお掃除ロボットみたいな挙動で周囲をキョロキョロと動き回り、敵を捜索している。

なるほど……ウチのダンジョンで言うならば、ダンジョン領域内に敵が入り込んだことは感知出来た。

が、それを排除するリル達が、敵を感知出来なかった。

そういう状態なのだと思われる。

ウチの面々なら、各々で機転を利かせて――というか、リルが『マップ』機能を利用出来るので、それで判別が付けられるだろうが、ゴーレムにそんな融通は利かせられないのだ。

面白い。また一つ、ゴーレムの脆弱性が見えたな。

『……透明になったみたい』

「な。この鎧、しっかり効果があるようだ。ただ、やっぱり重量がネックだぞ、これ」

『……技術者の人、すごかった。きっと、何とかすると思う』

「……そうだな。そこは俺が考えるところじゃないか。何より、レイラがやる気満々だったし、何とかするか」

この結果を戻って伝えると、皆はしっかり成果が出たことにまず喜び、それから再び、調整の日々が始まる。

どうも、装甲に宿る魔力を利用してゴーレムどもに味方と誤認させる仕組みであるようで、故にここからは、どこまで削っても問題ないかの確認をするようだ。

なるほど、それで最初はあんな、ずんぐりむっくりな、明らかにデカい形状をしていた訳か。

俺は、新たな試作品を着込んでは何度も地底世界に入り、チキンレースが如く、どんどん軽くなっていくスクラップ鎧の性能を試していく。

最終的には、最初の鎧の二分の一くらいの重量となり、これでもまだ少々重いが、ギリギリ許容の範囲内だろう。ここからさらに、軽量化の魔法も掛けるみたいだしな。

そして、すぐに同じものが調査隊の人数分用意され、物資等も整い。

――ヴェルモア大森林遺跡の、本格的な攻略が開始される。