軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヴェルモア大森林遺跡《5》

「フー……何とかなったか」

今のところ、追加が来る様子は無い。

ただ、警備があることがこうして確定した以上、これだけの広さがあって、守りがドローン三体のみ、なんてことはあり得ないだろう。

数百、いや数千の規模で同じものがあったとしても、おかしくないと思われる。

それこそ、あの阿修羅ゴーレムと同型機が数十台いる可能性すらあるだろう。

「……とりあえず、この超技術で、ここが神代遺跡であることは確定したな。ゴーレムか……魔力の高まりで何とか気付けたが、非生物は気配が無いからわかり辛いな。警戒してたのに不意打ち食らったぞ。いや、警戒してたからこそ気付けたと言うべきか」

『……ん。厄介』

ゴーレムは、生物ではない。

物だ。

内部魔力こそ多いかもしれないが、周囲の木々や建物などが放つ魔力と似た気配しか持っておらず、それ故に建物の影などに隠れられていると、ほぼ見分けが付かないのだ。

特にこの場所は……空間に満ちる魔素が濃い。そのせいで、ゴーレムとその他の差が、さらにわかり難い環境なのである。

――これは、本当に厄介だぞ。

とにかく、一旦戻ることにした俺は、サンプルとして比較的綺麗に撃墜したSFプテラの一体をアイテムボックスに入れ、待機していたレイラ達の下へと戻る。

「ユキさん、先程戦っていたようですがー……」

「あぁ、やっぱり警備がいたみたいだ。――これだ」

俺は、回収したSFプテラを皆に見せる。

彼女らは一瞬たじろぐも、しかし好奇心の方が勝ったようで、すぐに解析らしきことを始める。

「……これは、とんでもないね。この一機を持ち帰っただけで、ゴーレム分野の研究は数十年分進むだろうよ。実際戦ってみた感じはどうだい?」

エルドガリア女史の言葉に、俺は考えながら答える。

「一機二機程度なら問題ない。いや、攻撃食らったら多分普通に死ぬし、機動性もなかなかだったが、ゴーレム故に融通が利かんって感じだな。ただ、今言ったようにコイツはゴーレムだ。それも、どちらかと言うと小型のな。なら、同じのが数百あっても驚かん」

まあ、小型と言っても、人と同じくらいのサイズはあるのだが、どう見てもコイツらは数で運用するのが前提の設計だろう。

仮に十体でも出て来ていたら、それだけでヤバかった可能性はある。

少なくとも、こんなあっさり撃破は出来なかっただろうな。

「……なるほど。予想はしてたが、コイツはとんでもなく厄介だね。入口を見つけるまでも苦労したモンだが、これは、見つけてからの苦労の方が長くなりそうだ」

「あぁ。正直、正攻法でここを進むのは……無理とは言わないが、相当難しいと思うぞ。変に警備が作動しちまったら、目も当てられん結果に――」

そこで、ふと思う。

……正攻法じゃ無理、か。

その時、俺が見るのは―― サクヤ(・・・) 。

レイラの腕の中にいる我が息子は、今ちょっと機嫌が悪そうだ。

「レイラ、サクヤの様子はどうだ?」

「はい、依然として興味を示しているのは、城の方ですねー。全身で行きたい行きたいと示しているのですが、私達が動こうとしないから、むくれて泣いてしまいましてー」

あぁ、なるほど……それで機嫌が悪そうなのか。

次に俺は、我が息子の顔を覗き込む。

「――サクヤ、どうだ? 何か……先へ行ける場所、ないか?」

「あぅう! うぅ!」

俺の言葉に、だがサクヤが指し示すのは、レイラの言う通り城の方で――いや、いや、待て。

この方向に、まず最初にあるのは、 城壁だ(・・・) 。城ではない。

サクヤレーダーは、俺達ではわからない謎の能力だ。

だが、確かにそれはある。

ここまでの感じを見るに、最善の道を常に指し示しているように見え、そして俺達には遺跡の警備という壁が今、立ちはだかっている。正面からでは、突破は困難ではと思わせるものが。

ここを突破するのが最善ならばそうするしかないだろうが……この規模の遺跡だ。

ならば、 裏道(・・) なども存在して然るべきではないか?

「……探してみる価値はあるか。お師匠さん、この方向に、何か裏道みたいなものが無いか、みんなで探してみてくれないか?」

「……わかった、そうする価値はあるだろうね。――よし、アンタ達、そのおもちゃの解析は後にしな! 魔力の痕跡、隠された道、何でもいい、今からそれを探すよ!」

俺達は、総出でサクヤの指し示す方向に何かないか探っていく。

そして、俺の予想はどうやら当たりだったらしい。

サクヤが指し示していたのは、城ではなかった。

息子を抱えて横の方に飛んでみると、その興味を示す方向が変化したのだ。

三点から確認し、サクヤが示していた正確な場所は、城ではなくやはり城壁。

一見するとただの壁でしかないが――羊角の一族が解析を行えば、一発だった。

「! ここ、隠し通路です!」

興奮した様子のエミュー。

彼女らが調べている内に、その壁が消え去り、奥への道が突如として現れる。

恐らくは、幻影魔法のようなものが張られていたのだろう。

「……アンタの息子、本当にすごいね。まさかここまでだとは思わなかったよ。ちょっと研究させてくれないかい?」

「サクヤが成長したら、本人と交渉してくれ。俺は別に反対せんぞ」

「よし、言質取ったよ。将来が楽しみだ」

「ダメですよ、お師匠様ー。サクヤが大きくなったら、私が研究するんですからー」

「……正直、サクヤの研究は、私もしたいです!」

「……サクヤ、モテモテ」

「はは、そうだな」

サクヤ、お前羊角の一族の里に行ったら、それはもうモテるだろうな。ツラも俺ではなくレフィ似だし。

だが、一つだけ教えておこう、我が息子よ。

女性の相手をするのは、大変だぞ。心して対応するように。

◇ ◇ ◇

その後も、十分に注意しながら隠し通路を進む。

どうやらここは、下水道のような場所であるらしい。

と言っても、人がいないために流れている水は綺麗なもので、底が見える程に透き通っている。多分普通に飲めるだろう。

暗めではあるが、足元が見える程度の最低限の明かりは、謎の発光植物などで確保されており、まさしく『ダンジョン』とでも呼ぶべきおどろおどろしさがここにはあった。

……いや、そもそもだが、この場所に下水道などというものは必要なのだろうか。

我が家でもそうなのだが、生活排水のようなものは全てダンジョンに吸収され、消滅する。恐らくはDPや魔素などに変換されているのだろう。

だから、我が家に上下水道などというものは存在しないし、この場所がダンジョンと似通ったものであるのならば、下水道なんてものは本来いらないはずなのだ。

となると、この下水道は…… 雰囲気作り(・・・・・) のために存在するのではないだろうか。

「…………」

「? ユキさん、何かありましたかー?」

「いや……ちょっとな」

考え込む俺を、不思議そうに見てくるレイラ。

その時俺が感じたのは―― 遊び心(・・・) 。

ここにこんなものがあったら楽しい、こんなものがあったらワクワクする。

俺が、イルーナ達が楽しんでくれるかと思って、草原エリアに色んなものを造ったのと同じように……ここには、そういうものが溢れているように感じる。

この隠し通路の他にも、城を囲うように存在する城壁だってそうだ。

それが必要なのか必要じゃないのかと言えば……全くもって、必要じゃないように思う。

壁とは、敵がいるから用意するもの。だが、神々に敵などというものが存在したのか。

いや、神々同士で争った過去があるのは知っているが、それは神代でも後の方の話であるはずだ。

この場所が『原点』であるのならば、その争いが起こるより前にこの街は存在するはずで、そしてここの城壁は街と一体化して造られている。

要するに何が言いたいのかと言うと――本当にここは、 ウチのダンジョンと(・・・・・・・・・) 同じものなのだ(・・・・・・・) 。

必要とか、必要じゃないとか、そういうことではなく、ただその方が面白いからそういう風に造ってあるのだ。

ふと俺は、神代の人々が――いや、神々がここを放棄した理由がわかった気がした。

ここは、 便利過ぎる(・・・・・) 。

ここにはきっと、全てがある。

だが、全てがあるが故に、発展が無い。

全てがあるが故に、ここで暮らすだけでは文化が育たない。不自由が無ければ、それを解消しようとする思考は生まれない。

長い長い生を送る龍族の文化が、現在停滞してしまっているように。

我が家はまだ良いだろう。その便利さを享受しまくっている俺達だが、我が家は言わば、ただのデカい一軒家だ。外の世界との繋がりも存在し、『差異』が存在している。

だが、ここが国となってしまったら……そこに『混沌』は生まれないだろう。

ここが『原点』である以上、外には他の文明など、一切存在していなかったはずなのだから。

「だから、この場所を……放棄したんだな」

ここは始まりの場所であって、終わりの場所とすべきではない。

故に、途中で役目を終え……ここは、滅んだのだ。