軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

子供達との海《1》

その日、俺はリウとサクヤの二人を抱っこして、最近見ていなかった幽霊船ダンジョンを訪れていた。

二人に、海を見せるためだ。

一緒の甲板に、レフィと、そしてリルとセツも共にいる。セツも海は見たことないはずだからな。

「どうだ、リウ、サクヤ。これが海だぞー! 綺麗なもんだろ?」

俺の問い掛けに、サクヤは珍しい光景に目を輝かせ、大海原に見入っていたが、リウはどうやら海の臭いが慣れないらしく、むずがり始める。

うむ、このままだと泣き出すな。

そう言えばリューを始めてこっちに連れて来た時も、「海の臭いが慣れない」って言ってたっけか。鼻の良い獣人ならではの問題だ。

「あー、あー、そのままでは泣くぞ。ほれ、リウは任せよ」

「おう、頼むわ」

俺からリウを受け取り、あやし始めるレフィ。

ぶっちゃけこうなることは予想していたので、コイツにも付いて来てもらって正解だったな。俺があやしても、全然泣き止んでくれないので。

「お、見ろ、サクヤ。あれがサメだぞ、カッコいいよな。ただ、今泳いでるのは父ちゃんの配下だから襲われる心配はないが、他のとこでサメを見たら逃げなきゃダメだからな? 昼とか深夜とかにやってるB級映画みたいになっちまうからさ」

「……あのような鮫がそこらで泳いでおるものか」

呆れたように呟くレフィ。

うん、まあ、スケルトン・シャークだからね、今下で泳いでんの。

日曜洋画劇場『スケルトン・シャーク~逆襲~』、始まりません。

コイツらは、俺が幽霊船ダンジョンを受け継いだ時、そのまま俺の配下になったアンデッドだ。

俺の命である「幽霊船ダンジョンを守れ」という指令を忠実に守る、餌要らずの番犬……番鮫である。

幽霊船ダンジョンの中にも骸骨とかゾンビが待機しており、コイツらには意思と呼ぶべきものがほとんど存在しないため、俺が面倒を見る必要が全くと言って良い程無い。

無いのだが、時折様子を見に来るようにはしているのだ。

アンデッドは嫌いなのだが……一応、俺の配下になったヤツらだからな。可愛がってはやらんと。

「おうお! あぅう!」

「あー、アイツらはダメだぞ、サクヤ。俺の配下ではあるが、リル達とは違うんだ。下手に手を出したら食われちゃうかもしれないぞ?」

「ぶぁう……」

骨鮫に興味を引かれたようで、両手を伸ばしてそっちに行きたがったサクヤだが、流石にアイツらと交流させる訳にはいかないので、諦めさせる。

リウもサクヤも、『マップ』上ではしっかりと味方を示す青点……つまりダンジョンから味方であると判断されているはずなので、攻撃されたりすることはないと俺も思ってるが、ちょっと不安だ。

もうちょっと大きくなってからだな、骨鮫と関わらすのは。

「くぅくぅ!」

と、一緒に連れて来ていたセツが尻尾をブンブンさせながら、「お船の中を見てみたい!」と元気良く鳴く。

「おう、いいぞ。けど、こっちは結構危ないから、リルと一緒にな。リル、中を案内してやれ」

「クゥ」

リルは幽霊船ダンジョンの管理にほとんど触っていないが、それでも内部構造はもう熟知している。

コイツはもはや、ダンジョンの一モンスターではなく、はっきり言って俺と同じ『管理者』の立場だからな。

で、真面目なので、俺のダンジョン領域がどうなっているかは把握しておきたかったらしく、幽霊船ダンジョンの中も一通り歩いて覚えているのだ。

「くぅ!」

「クゥ、クゥ」

セツは「お父さん早くー!」と言いたげな様子でててて、と走って行き、リルは「わかったわかった、あまり走り回るな。魔境の森とは別の方向で危ないんだ、ここは」と注意しながらダンジョンの中へと入って行った。

「カカ、彼奴も親になったのぉ。まあ、ユキという問題児の世話をしておったから、そう言う意味では慣れておるのかもしれんな」

「いや、言ってアイツ、娘にも結構振り回されてるけどな。セツはもう、立派なお転婆娘だし」

「父となっても苦労性は変わらず、か。カカ、大変じゃのう、彼奴も」

頑張れリル。

ダンジョンの明日はお前に掛かっている。

「そうだレフィ、今日はせっかくだし、海辺でバーベキューにするか。イルーナ達が帰って来たら、すぐビーチで食えるよう、準備しよう。リル一家も呼んで一緒にさ」

「お、いいの! あの子らも喜ぶ。ばーべきゅーをしながらの酒は、美味いんじゃよなぁ……」

「はは、わかる。いつもより酔いが回って、美味いんだよな。普段あんまり飲まないレイラとかも、ベロンベロンになるしさ」

いやはや、プライベートビーチがあるということの素晴らしさよ。

気が向いたら海辺でバーベキューが出来るというのは、人に自慢したくなる贅沢さだな。

何故、人はバーベキューを求めるのか。

何故、家で食べるよりも大自然の中で食べると美味いのか。

そこには確かに、真理があるのだ……知らんけど。

「そうと決まったら、戻って食材の準備をせんといかんな! 我が家の皆が食べる量となると、今の内に下ごしらえせんと間に合わん」

「オーケー、そうするか。今日は肉と海鮮、どっちメインにする? 魚食いたいなら、俺今からローガルド帝国の魚市場行ってくるぜ」

「ふむ……悩ましいの。お主の影響で、儂らも相当海鮮が好きになっておるからの。……うむ、両方用意しよう。その方がイルーナ達も喜ぶじゃろう。儂らがこちらで肉と野菜の用意しておくから、お主は好きな海鮮を買って来い」

「そうだな、それが良いか。よーし、バーベキューだぞ、リウ、サクヤ! 二人はまだ食べられんが、一緒に楽しもうな!」

リウは、よくわかってなさそうな様子で耳をピコピコ動かし、サクヤもよくわかってはなさそうだったが、俺達がご機嫌だということを感じたのか、楽しそうに笑っていた。