軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊王とシセリウス《3》

その後、精霊王とシセリウス婆さんと、皆で雑談が続く。

精霊王が体験した不可思議な話や、シセリウス婆さんが見たおかしな光景、それからレイラの世界に対する考察や、俺の話、レフィの話、ネルの国の話、リューの里の話、リル達の森での生活の話。

会話は盛り上がり、リウとサクヤ、そしてセツの世話をしながらも止めどなく続く。

茶菓子を食べ、美味い茶を飲みながらの、気心知れた者達との雑談。

こういう、何の変哲もないような、明日には忘れているような会話をして過ごす時間の、何と楽しいことか。

「あははは、そ、それで旦那をしばき倒したのかい!」

「そうじゃ、此奴はほんに、阿呆でのう。それが子に遺伝せんか、今から皆で戦々恐々としておるところじゃ」

「この人、しっかりしているように見えて一つ抜けてるところがあるから、外出た時とか結構心配なんすよ」

「ねー、イルーナ達のことを見てる時とか、気を張ってる時はしっかり者なのにね!」

「リル君などを連れている時は、一人ではないので安心出来るのですけどねー」

『ク、ク……言われておるぞ』

「……ノーコメントで」

なんて、大人組で話していた時、部屋の扉がガチャリと開かれる。

「「ただいまー!」」

「……ただいまー」

帰ってきたのは、少女組。

三人の言葉の後、レイス娘達もまたこちらに手を振る。

どうやら、学校が終わったようだ。

と、彼女らはすぐに、家族ではない姿が家にあることに気付く。

「! 精霊せんせー! と……龍族だから、お姉ちゃんのお客さんかな? こんにちは!」

シセリウス婆さんの角と尻尾を見て、イルーナはそう判断したらしい。

彼女の次に、シィ達も元気に挨拶をする。

「せんせー、こんにちは! おきゃくさんも、こんにちは!」

「……お爺ちゃん、お婆ちゃん、久しぶり」

『うむ、邪魔しておるよ。元気そうで何よりだ、幼子達よ』

「はい久しぶり、剣の嬢ちゃん。他の子達は初めましてだね、アタシはシセリウス。レフィシオス嬢ちゃんの……ま、親戚さ。遊びに来させてもらってるよ。……うん、随分個性的な子達だねぇ!」

同じように挨拶するレイス娘達を見ながら、そう溢すシセリウス婆さん。

『ク、ク……吾輩も、初めてここへ来た時は、同じことを思ったものである。どうだ、幼子達よ。学び舎へ行っていたと聞いておるが、学問は楽しいか?』

「楽しい! いっぱい色んなこと知れて!」

「べんきょーはそんなにだけど、ともだちとあそべるから、がっこーはすき!」

「……羊角の一族の里はすごい。熱量がすごい。己が欲望に突き進み続ける。エンも見習いたい」

「そうかいそうかい。いいね、好きに学び、好きに遊ぶことが、子供の仕事さ。存分に、やりたいようにやって、生きるといい」

『羊角の一族の里、であるか。うむ、良き学び舎である。吾輩の知っている偉人の幾人もが、あそこの影響を受けている。貴公らならば……フッ、そのような者達の一人になれるかもしれぬな』

ニコニコと表情を綻ばせる二人。

精霊王には顔などないが、しかし笑みを浮かべているのだろうということが、様子からしてよくわかるのだ。

このまま、少女組も加えて雑談、といきたいところだが、ただすでに結構時間が経っているので、一旦俺は話を切り上げる。

「さて、そろそろ晩飯にするか! 二人も……精霊王は物を食べないかもしれないが、一緒にいてくれよ」

『うむ、そうさせてもらおう』

「ん、ありがたく、ご相伴に預からせて――というか、アタシが作ろうかね! これでもヒト形態で過ごすことはままあるから、それなりに料理は覚えてるんだ。任せてくれないかい」

「それなら、私がお手伝いしましょうー」

「あ、じゃー、僕もそっち組! みんなはゆっくりしてて!」

「ん、わかった、ならお願いするか。シセリウス婆さん、ありがとう」

「ほう、シセリウスの料理か。楽しみじゃの!」

「ありがとうっす、シセリウスさん!」

それからその日は、飯を食いながら大人組は酒を飲み、宴会かの如く夜遅くまでワイワイと騒ぎ続け――。

◇ ◇ ◇

「――いやぁ、楽しかったねぇ、爺様よ。長生きはしてみるもんだ」

『うむ、良き時間であった。こうして友人らと過ごす時が……悠久の生の中で、どれだけ光り輝くことか』

「あはは、あぁ、あの何気ないただ語らうだけの時間を、きっと千年経ってもアタシは覚えているんだろうね。特に、レフィシオス嬢ちゃん! 話には聞いていたけど、あの子があんな風に家庭を持つとは思わなかったよ。しっかり母親の顔になってまあ、こっちが嬉しくなっちまったもんさ」

『ク、ク、そうであるな。覇者たる龍が、母親に。驚天動地と言うても怒られんだろうよ』

片や、数々の歴史書に登場し、伝説の存在として名を残している、精霊の王。

片や、世界の神秘を解き明かさんと遺跡を巡り、千金に値するであろう記録を取り続けている龍族の女傑。

だが今だけは、まるでただの祖父母であるかのように、友人家族と過ごした楽しかった時間に思いを馳せていた。

「そうだ、爺様よ。レフィシオス嬢ちゃんの子……サクヤが持つ称号。アタシにも見えてなかったんだけれど、アレ、何なんだい? あと、種族も『龍人』に読めない括弧書きが追加されてて、よくわからなかったんだけれど……」

『ふむ、まあ、貴公にならば話しても良かろう。ただこれは外には漏らさぬようにな』

「わかってる、胸に秘めておくよ」

精霊王は、言った。

『あの子の種族は、「無王」。そして持つ称号は、「変革を齎す者」である』