作品タイトル不明
飛行場にて《3》
どうやら敵の攻撃は、火の悪魔で打ち止めだったらしい。
魔力の変異も感じられなくなり、状況が治まったと判断した俺は、魔界王達と協力して後始末に移る。
全体の被害は、やはり、それなりに出てしまっていた。
人的被害に限って言えば、迅速な避難誘導により、起きた爆発の規模に比べれば圧倒的に少なく済んだようだが、それでもゼロにはならなかった。
特に、二度起こった爆発の内、最初の爆発は……完全に意識外のところを狙われたからな。
また、その二度の爆発で、飛行船の管制塔と、それに隣接した建物が倒壊。
まあ、片方は爆発というか、俺の魔法によって壊したようなものなのだが……人死にを出さないための措置だったので、許してもらうとしよう。
付近に泊まっていた飛行船は、魔界王が乗ってきたものと整備中で置かれていたものがそれぞれ中破、だが修繕は可能な範囲内の壊れ方だったらしく、特に魔界王の船の方は技術者がすでに修復に取り掛かっているため、一週間で航行可能状態まで回復させられるとの話だ。
魔界王の乗って来たものは、民間船じゃなく、アイツの専用船らしいので、最優先で扱われているようだな。
いざとなったら、ウチの扉経由で魔界に返すことも考えていたが、そこまでする事態にはならなそうだ。
この国の警察組織や消防組織の者達も、俺が魔物を月まで吹っ飛ばした二十分後くらいには現れ、今現在も瓦礫の撤去や現場検証などで、非常に忙しくしている。
俺達にも話を聞きたいとのことだが、ぶっちゃけ今相手をするのは面倒だし、魔界王と色々相談する方を先にすべきなので、事情聴取は後にしてもらった。権力万歳。
「フー、何とかなったかな。助かったよ、ユキ君。君がいてくれたおかげで、被害が相当抑えられた」
状況が落ち着いたからか、一息吐いたような様子で、魔界王がそう溢す。
「逆に言やぁ、俺がいたせいで巻き込んだ可能性もあるがな」
「それをユキ君のせいにする馬鹿な子がいたら、僕の部隊総出で、懇々と説得しても良いね」
「一般的にはそれ、説得じゃなくて脅しって言うんだぜ」
「そうなのかい? いやぁ、僕は初めて知ったよ」
肩を竦めてみせる魔界王に、俺は笑い声を溢す。
気遣いの上手いヤツめ。
「さて……また厄介な事件に巻き込まれたものだね。ここまでしっかりとテロを起こしてくるのは、流石に予想外だったけれど、でも規模が大きくなればなる程、証拠というのは増えるもの。例えば――」
その時、フィナルの部下らしい魔族がこちらにやって来たかと思うと、魔界王へと報告を入れる。
「フィナル様。爆発物の残骸、発見しました」
「――タイミングが良いね。ユキ君、見に行こう」
フィナルの部下が発見したのは、ほぼ炭化している、何かのカスのようなものだった。
もはや分析スキルすら通らない程で、辛うじて何か、記号? っぽいものが書かれているのはわかるのだが……しかし、フィナルはそこに、何かしらの情報を見出したらしい。
「ふむ。――そこの君! こっちに来てくれるかい」
そう、魔界王が声を掛けたのは、ローガルド帝国の兵士らしき男。
どうやら隊長とかそういう立場であるらしく、周囲の他の兵士に矢継ぎ早に指示を出していたのだが、フィナルに呼ばれたことですぐにこちらへとやって来る。
「はっ、何でありましょうか」
「これ……僕の記憶違いじゃなければ、この国の 武器に記す管理番号(・・・・・・・・・) だと思うんだけれど、どうかな?」
そのフィナルの言葉に含まれる意味を察し、彼は若干頬を引き攣らせながら、俺達が見ていたものを確認する。
そして――頷いた。
「……えぇ、その通りかと。詳細は調べなければわかりませんが、武器保管庫にしまわれていたはずの、『魔塵爆』の爆薬である可能性が高いと思われます」
「魔塵爆?」
俺の問い掛けに、彼は答える。
「はい、特殊な魔力の調合を必要とする爆薬であります。軍所属の、研究者達でなければ作れないものであるため、外では流通しておらず……」
となると、それが今回悪用された、と。
「わかるかい、ユキ君。魔物の出現に合わせて、この爆発物が意味するところが」
「…… 管理責任(・・・・) 、ってところか?」
フィナルは、頷いた。
「そう。テロを起こした者は非難されるが、そのテロに国の物品が盗まれて使用されたとあったら、杜撰な管理をしていた者達も当然槍玉に挙げられる。――つまり、僕達さ」
「なるほどな」
責任者とは、責任を取るためにいる。
そして、現在のこの国、特に軍の責任者と言えば、フィナル達であり、さらに俺である。
いや、総責任者ならば、やはり、俺か。
何故なら、名目上と言えど、この国の皇帝は俺なのだから。
こっちとしちゃあ、知らんがなと言いたくなるが、世間はそう見ないだろう。
「どうやら敵は、俺達を徹頭徹尾貶めたいらしいな」
「そのようだ。僕らの足を引っ張る手段としては、合理的だと言わざるを得ないね。大した悪だくみの仕方さ。ただ……今回のこれは、流石にやり過ぎだ。あわよくば僕を葬りたかったのかもしれないけれど、これで幾らか敵の候補が絞れた」
「順当に考えるなら、軍事物資にアクセス出来る、この国の高官とかか?」
「そう、その可能性が高いと僕も思う。単純に盗まれた可能性も考えないといけないだろうけど、武器保管庫にアクセス出来る者は限られる。そこを絞れたなら、後はそう難しく……」
そこで、魔界王はふと考えるような素振りを見せる。
「魔界王?」
「……後は、そう難しくない。本当に? ここまで陰湿に、そして大規模に事件を起こした相手が、自身を特定されるような痕跡を残す?」
深く、何事かを考え始めるフィナル。
「敵の動きは派手だ。魔物に、軍製品。けど、その派手な動きに僕らは気付けず、阻止出来なかった。しっかりと計画を練り、数多の偽装を行ったはず。にもかかわらず、自身へと繋がる証拠だけは現場に残すなんて、あまりにもこちらに都合が良い話だ」
しばらく、自らの考えを纏めるかのようにブツブツと呟いていた魔界王は、瞳の焦点を俺へと戻す。
「……とにかく、ここからは今ある情報を辿っていくとしよう。ユキ君、協力してってさっきお願いしたけど、ちょっと時間が欲しい。一週間程、情報収集させてくれないかい。君には、その後に動いてもらうことになると思う」
「ん、わかった。正直俺も、一旦家の方の様子を見たかったから、ちょうど良いかもしれん」
ダンジョンに帰ってない訳ではないが、今は本当に忙しく、こっちにいる時間がすごい長くなってるからな。
レフィ達の様子も見たいし、少し、家でのんびりしたいところだ。