軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

奥地へ《4》

「――さあ、始めるぞ。トンネル工事の時間だ!」

掘る地点を決めた俺は、トンネル製作を開始する。

マップで阿修羅ゴーレムの位置を確認しながら、土を削除し、穴をあけ、崩れないようそこを『硬化』で固める。

落とし穴にする予定の部分以外は、硬化で固めないと怖いからな。

こういう地形変更系の機能は、DP使用量が多いため、一キロ半のトンネルとなるとふんだんに使うことになってしまうが、すでに嫁さんらには事情を説明し「オーケー」を貰っている。

フフフ、そこに抜かりはない。

気分は蟻だ。地下帝国を……別に建国はしないが、まあそんな感じで工事をしていくことにしよう。

……蟻か。

そう言えば昔、魔境の森で蟻軍団に追われたことがあったっけか。

あの時の記憶は……今もまだ、トラウマとして残っている。

大量の蟻がワラワラと這い出し、地面を埋め尽くし、俺とリルを食らわんと追ってきた。

この森のヤバさを実感した、初めての経験だ。

ちなみに、俺のトラウマの中での圧倒的第一位は、ネルと一緒に攻略した幽霊船ダンジョンでの、蛆虫たっぷり宝箱だ。

アレはマジで最悪だった。

開けた俺の指を、ヤツらが次々と這って来て……ぐぅぅ、今思い出しても鳥肌が。

この記憶は封印しておこう。

『……? どうしたの?』

「ちょっと嫌な記憶を思い出してな……エンはよく、どんな虫を相手にしても、平気でいられるよな……」

『……ん。だって、虫はワンパンだから。毒があるのはちょっと気を付けなきゃだけど、基本的には弱き者。怖がる必要はない』

あ、そういう……。

ウチの子の逞しさがすごくて、我が身がとってもちっぽけに見えます。

と、そこでリルが、俺をフォローするように鳴く。

「クゥ」

「……そ、そうだよな! 魔境の森の虫どもは、デカいし強いしキモいし、さらにキモいから、怖がっても普通だよな!」

『……大丈夫。主は、エンが守るから。どんな怖い相手でも、一緒にいる』

「ありがとう、エン。情けない限りだが、虫の時はよろしく頼むよ」

そんなことを話しながら、トンネル工事を進めていた俺だったが……その時、何か空洞らしきものと行き当たる。

ライトは持っているが、暗くてよくわからない。

? 何だ、この穴?

俺は、中を覗き込み――見えたのは、黒いモフモフ。

魔境の森サイズでデカく、皮膚が厚く。

特徴的なのは、爪か。

手足の爪が太く、土を掻き分けやすそうな形状をしている。

それは、 モグラ(・・・) だった。

のそりと頭が動き、こちらを向いたか思うと――俺と目が合う。

こんにちは。

「ぬわぁっ!?」

俺は、とっさにエンを振るい、一刀を叩き込む。

『ピギィッ!?』

モグラ大王にとっても、想定外の邂逅だったようで、その一撃は上手く入れられたのだが、相手が巨躯で、しかもトンネル内だったせいでエンが上手く振り抜けず、攻撃が浅い。

モグラ大王は怒ったようで、前足の鋭い爪で俺を攻撃しようとするが、その前に飛び込んだリルが、的確に首筋へ、ガブリと噛みつく。

「グルルゥッ!!」

穴に入るため身体を小さくしていたリルだが、その 咢(アギト) の強さは変わらない。

リルの牙は、分厚い皮を貫き、その下の肉を貫き、鮮血が迸る。

怯むモグラ大王。

「突きならこの狭さでも行けるかッ!!」

リルが作ってくれたその隙を逃さず、俺は、頭部へとエンを突き込む。

今の俺なら、超重量のエンを片手で持って、威力のある突きを放てるのだ。

その刃は防がれることなく、脳味噌を貫き。

モグラ大王はビクンと痙攣した後、目から光を失い、動かなくなった。

「フゥ……リル、大丈夫か?」

「クゥ」

問題ありません、と答え、モグラ大王の首筋から牙を抜くリル。

……土の中に魔物がいる可能性も考慮はしていたが、まさかホントにぶち当たるとは。

っていうか、この戦闘音で阿修羅ゴーレムに気付かれてないだろうな?

結構深く掘っているので、大丈夫だとは思うが……。

俺は、距離を離して監視させていたイービル・アイの映像を、すぐに確認し……よし、問題ないな。

ヤツは定位置で、動いていない。

聞こえていなかったのか、それとも音を感じ取る機能がないのか。

もしくは、聞こえていたが、土の下を処理するという能力がないのか。

――これが、ゴーレムの面倒なところだ。

一応戦闘用ゴーレムもDPカタログには載っているが、俺が一切それらを使わず、索敵用ゴーレムしか使っていないのも、ここに理由がある。

やらせることの出来る幅が決まっており、設定されたことしか出来ず、成長性が一切ない。

そんなのは、ただのでくの坊である。

フフフ、ヤツがどれだけイカれた攻撃能力を持っていようが、勝つのは常に、知恵ある者!

「真の勝者になるのは、我々だ……!」

「……クゥ」

『……主、油断は、メッ』

「わ、わかってるって、大丈夫だ、大丈夫。別に油断はしてないから」

――その後は問題なく、予定地点までを掘り終わった俺は、出来る限りで上の土を削り、そこにDPで用意したありったけの罠を仕掛けていく。

まず、縦に長く、広い穴。

天井部には、大量の爆薬。

横の壁にも、金属片が飛び散るタイプの爆弾を仕掛け、そして落下し終わった位置に剣山付き濃硫酸毒池だ。

触れると鎖付き銛が飛び出し、対象に突き刺さって固定する罠も底に用意してある。

これで無理だったら……逃げて、大人しくレフィに助力を願おう。

全てを仕掛け終えた俺は、来た道を戻り、周囲に魔物がいないことを確認してから、偵察ポイントで待機。

「やるぞ」

「クゥ」

『……ん!』

俺は、トラップを起動させた。