軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おままごと

「あなた、おかえりなさい。お料理は出来てますよ!」

「ふぅー、疲れた疲れた。ただいま、お前。お前の料理か。今日も楽しみだなぁ」

「はい、こちらへどうぞ。すぐに用意しますからねー。……さ!お食べになって。おこめと、おみそのスープと、からあげとお刺身とちんじゃおろーすとらーめん!」

「お、おう、随分いっぱいあるな」

胃がもたれそうだぞ、そのラインナップ。

「おいしいものをたくさん食べて、あなたには元気になってほしいですから!」

「そ、そうか。……もぐもぐ、あぁ、お前の作る料理は美味しいなぁ」

「愛情たっぷりこめて作りましたからね」

にこにこしながらこちらを見ているイルーナに、俺は苦笑を浮かべながら食べる振りを続ける。

振りとあるように、本当に彼女が料理を作った訳では勿論なく、今しているのはおままごとだ。

セットは、幼稚園とか小っちゃい子向けの公園とかにある感じのファンシーな家のセット。カラーリングも色鮮やかで、我ながら会心の出来である。

この色に関してなのだが、最近ずっと土魔法を練習していたら、その土の質や色までも操れるようになった。

少し俺は勘違いしていたのだが、『土』とはつまり、大地のことを示す。そこには当然の如く、石や鉱石なども含まれる訳だ。そして鉱石には、数多の色がある。

そのことに気付いてから、「これ、もしかして色も付けられるんじゃないか?」と思って試行錯誤していたら、やがてそれが出来るようになったのだ。

前世にも鉱石を砕いて作られた着色料なんかがあったことだし、おかしなことではないだろう。

今回のことからもわかるように、やはり魔法というものを存分に使いこなすためには、柔軟な発想力が必要不可欠であるらしい。クリエイティブ魔王の本領発揮だな。その内、多彩な魔法を使いこなしてしんぜよう。

ちなみに、MPの方に関してはレフィの言う通り順当に伸びている。微々たるものではあるが、継続は力なり。

MPお化けになれるよう、これからも努力していくとしよう。

「……あの、魔王様ー。これは魔王様がお造りになられたんですよねー?」

「おう、そうだぞ」

俺とイルーナの娘役で近くにいたレイラが、思わずといった様子でそう問い掛けて来る。

「……レフィ様も当たり前のように大規模魔法を使いこなしていましたし、自身の中での魔法の基準が壊れてしまいそうですー」

そう言われてもな。俺の中の基準はレフィの魔法だし。

「俺、自分の以外にはレフィの魔法しか知らねーんだけど、そんな遠い目をする程おかしなもんか?俺達の魔法」

「そうですねー……お二人が使われている魔法、詠唱も何も無しに使われているところを見るに、恐らく原初魔法ですよねー?」

「おう」

「やはりそうでしたかー……。原初魔法というものは、 現在では失われた(・・・・・・・・) 秘術の扱いですー。使うことの出来る者はごく限られていて、世界でも数十人ぐらいしかいないでしょうねー」

「――えっ」

「今の魔法の形態は、詠唱に基づくものが基本ですー。詠唱で骨格を組み上げ、そこに魔力を流し込んで肉付けし、発動するんですー。そういう意味では、魔術に寄った形態と言えますねー」

教師然とした口調で言うレイラ。

う、失われた秘術と来たか……まあ、レフィが主として使っている訳だし、それぐらいレアなのは確かなのか?

「でも、お前の言い様だと詠唱が中心なように聞こえるけど、詠唱はあくまで補助で、大切なのは発動する魔法の『想像』そのものだって俺は教わったんだけど?」

「それは相当な魔力適性のある者でないと無理ですー。古の魔族達は皆、原初魔法を使用していたと記録が残っていますが、今の魔族の大半は詠唱が無いと全く発動しませんねー。時折、先祖帰りした者が少しだけ使える程度ですかー」

「……なるほどな」

ちょっと、わかったかもしれない。

レフィがいつか言っていたが、元々魔族というのは確か、魔素が凝結して自然発生した存在のことだ。

それが世代を重ねるにつれ、他種族と交流を始め、外部の血が混ざり始めたのではなかろうか。そのせいで魔力適性が弱くなっていき、今の魔族となったのでは、と。

恐らく、その代わりに発達したのが『詠唱』という概念なのだろう。今まで簡単に出来ていたことがだんだんと出来なくなっていき、それを補うために生まれた、新たな技術。

当然の発展だな。

俺が原初魔法を使えるのは恐らく、俺の身体が自然発生したタイプの魔族と近い身体構造をしているからだ。

全く、ダンジョン様様だな。今度ダンジョンコアにチューしてやろうか。

……それにしても、やはり俺は、まだまだこの世界についての知識が乏しいようだ。

決定的な事故が起こらないように、人間のところでも魔族のところでもいいから、一度人里に降りて情報収集した方が良いかもしれないな。

「もう!おにいちゃんもレイラおねえちゃんも、おままごと中だよ!関係ないことしゃべっちゃダメ!!」

と、思わず話に夢中になってしまった俺達に、イルーナがむー、と頬を膨らませる。

「すまんすまん、ええっと、何だったっけ。娘が不治の病を患って、それを嘆き悲しむ妻と娘のために、俺が治療法を探しに旅に出て、ようやく見つけて帰って来るも一歩間に合わなくて娘が死んじゃうんだっけ」

「そうだよ!もう、おにいちゃん、ちゃんとやってね!」

「悪い悪い。今からちゃんとやるからさ」

「……あのー、私が生存する道はないんですかねー?」

諦めろ。我が家のお姫様が所望した時点で、お前の死は確定なのだ。

骨は拾ってやるから、安心して逝ってくれ――。