軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰宅

獣王の歓待を楽しんだ翌日は、リューの案内で、獣人族の里の観光を楽しんだ。

リュー曰く、獣人族は散らばって里を形成しているそうで、ウォーウルフの里も少し離れた位置にあるのだそうだが、獣王の治めるこの里が彼らの首都なのだそうだ。

ちなみにウォーウルフの里は、リュー曰く「ここの規模を、四分の一くらい小さくして、観光名所を全てなくしたような場所なので、何にも面白くないっすよ。ホントに。ただの集落っす」なんて真顔で酷評していた。

それでもリューの生まれ故郷な訳だし、そちらも見てみたい思いはあったのだが、そこまで予定を入れると帰りが一週間くらい遅くなるとのことだったので、残念ながら諦めた。

また、日程に余裕がある時か、リューが里帰りしたくなった時に来るとしよう。

結構、長居しちまったからな。

――そうして、ドワーフの里と獣人族の里訪問は、終了した。

「ただいまー!」

「「ただいまー!」」

「……ただいま」

ダンジョン帰還装置を発動し、ダンジョンに帰ってきた俺達を、我が家の皆がすぐに出迎える。

「! おかえり、みんな!」

「おかえりー!」

真っ先にイルーナとシィが飛びついてきた後、レフィとレイラも寄ってくる。

「おかえり、お主ら。その様子じゃと――うむ、その様子じゃと、色々収穫はあったようじゃな」

「おかえりなさい、皆さんー。そして……ユキさん、もしや、種族進化を……?」

「おう、やっぱりわかるか。色々あってな。んで……とりあえず、レフィ。体調はどうだ?」

俺の問いかけの意味を理解し、レフィははにかむような笑みで答える。

「うむ、特に変化はないのう。いつも通りじゃ」

「そうか。……あー、その……ただいま」

微妙に照れくさい気分で、俺はレフィの腹部に手を触れ、そう言った。

レフィもまた、やはり気恥ずかしそうに、だが優しく微笑んでいた。

* * *

それから、買ってきたお土産を渡したり、それを見てワイワイ騒いだりした後、一段落したところで俺は、レフィとレイラに向こうでの話をする。

レイラが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、飛行船に乗ったところからの話を全てだ。

「――んで、その神、ルィンが力を貸してくれたみたいでな。こうして、種族進化したんだ」

俺は背中に翼を生やし、種族進化したことで増えた三対目を見せ――というところで、パシッと伸びてきたレフィの腕が、俺のその翼を触る。

「……あの、レフィさん。今、真面目な話をしていたところなのですが」

「そうじゃな。儂も真面目に聞いておるぞ。じゃから、気にせず続きを話すが良い」

キリッとした視線で、だが口元をだらしなく緩めさせ、そんなことを言うレフィ。

……まあ、そういう反応は、半ば予想してたんだけどさ。

翼フェチめ。

「……では、私もー」

「れ、レイラさん?」

スッと伸びて来たレイラの指が、同じように俺の翼を触り始める。

「なるほど……これは、良い手触りですねー……レフィが夢中になるのもわかる気がしますー」

レフィとは違い、少し遠慮するような、優しく撫でるような手つきだ。

それが、こう、ちょっと落ち着かなくなるものがある。

「カカ、レイラも、よくわかっておるではないか! ほれ、ユキ。儂らは気にせず、続きを話すんじゃ」

途中、風呂に入ってサッパリしてきたらしいネルとリューが、こちらを見てニヤリと笑みを浮かべ、「ごゆっくり~」「ウチらは向こう行ってるっすよ~」とそれぞれ言って、去って行った。

俺は苦笑を浮かべ、彼女らに翼を触られながら、話を続ける。

「……まあ、そういう訳で、俺は今魔王じゃなくなって、レフィに近い『覇王』になったんだ。つっても、力はまだまだレフィより下なんだが」

「ふむ……確かに、ヒト種の枠からは外れた、桁違いの存在感を放っておるの。魔境の森の魔物どもでも、ほとんどは逃げ出すじゃろうな。西えりあの、深層に住まう魔物どもなら変わらず気にせんじゃろうが」

「そうなんだ。バチバチに魔力が漏れてるみたいで、これ、早いところどうにかしたくてさ。だからレフィ、気配の上手い誤魔化し方、教えてくれないか? お前も、いつも抑えてるんだろ? 今のままじゃあ、ロクに外を出歩けなくなっちまう」

「そうじゃな、明日から、お主に魔力の扱いを教えてやろう。今のお主なら、まあ何とかなるじゃろう。……それにしても、シセリウスの婆様から始まって、阿呆の人間の攻撃に、神の一柱との遭遇し、果ては魔物の軍勢か。お主は、あれじゃな。いわゆる、とらぶるめいかーという奴じゃな」

「ユキさん、大体どこに行っても、騒動に巻き込まれてますからねー」

……確かに、行く先々で毎回何か起こってる気はする。

そして、半分くらいは俺が原因だったりするのだ。

……い、いや、元々能動的に動こうとして、起こったことばかりだ。

つまり、俺の方から問題を起こす意識を持って起こしたことなので、何かトラブルが偶発的に起こっている訳じゃない。

全ては、起こるべくして起こっていることなのである。

――トラブルメイカーとは、そういうヤツのことを言うのではないだろうか。

「……き、気を付けるよ」

「うむ、そうせい。……と言うても、お主がいくら気を付けていても、何か起こる時は必ず起こるんじゃろうがな。お主は、そういう男じゃ」

「神との遭遇など、普通はあり得ませんからねー……どのような神様だったのでー?」

「愉快な神様だったよ。まあ、神っつっても、そういう力を持った種族っていうだけで、俺達とそう変わりはしないんだろうな。――この中に、いたんだ。もう、いなくなっちまったんだが」

俺は、アイテムボックスから神槍ルィンを取り出し、二人に見せる。

「それは、儂と龍の里へ行った際、受け取った槍か」

「あぁ、魂の欠片みたいなのがこの中に残ってたみたいで、俺みたいな後輩のために、知識と力を残してくれてたんだ」

「……後輩、ですかー?」

きっと、高速で思考をしているのだろうということがわかる、深い知性を相貌に覗かせるレイラに、俺は頷く。

「あぁ。ダンジョンは、この世界の種子らしい。始まりの神ドミヌスと、ほぼ同質のものだ。んで、その管理者である魔王は、立場としては女神ガイアや、その他の神達と同じになる。……いや、やっぱり一番近いのは女神ガイアだな。だから俺は、彼らの後輩って言える存在なんだ。そう教えてもらった――おわっ」

ズイ、と顔をこちらに近付け、俺の手を両手で掴むレイラに、一瞬心臓が跳ねる。

瞳が爛々と輝いている。

……レイラさんは、我が家で一番色気があるので、こういうことをされるとドキッとするんだよな。

「ユキさんが聞いた神のお話、もっとお聞きしてもいいですかー?」

「お、おう、俺が向こうで知ったことは全部教えてやるから、それは後でな。確実に長くなるだろうから」

「ウフフ、ありがとうございますー! 迷宮に加え、まさか神の知識についても、知る機会を得られるとは……ウフフフフ……!」

ウットリした顔で、妖しい――『怪しい』ではない――笑い声を溢すレイラ。

……うん、君のその表情も、素敵だよ。

レイラが自分の世界に飛んでしまったので、俺は彼女に手を握られたまま、レフィと話を続ける。

「こっちの様子はどうだ? 何かあったか?」

「特に変わりは――あったの。お主、後でリルの様子を見てくると良い」

「え、顔を見せるつもりではあるが……なんかあったのか?」

「うむ、恐らくお主が種族進化した影響が、彼奴にも表れたんじゃろうな。他のペットどもに変化はなかったようじゃが……ま、お主自身で確認するんじゃな。なかなか面白いことになっておるからの」

もったいぶった様子で、ニヤリと笑みを浮かべるレフィ。

何だ、超気になるんだが。

俺の種族進化が、アイツにも影響を……?

「――さて。では、儂らもそろそろ、風呂に入るとしようか。ユキ、儂が背中を洗ってやろう」

「ん、あ、あぁ、じゃあ頼むわ」

「それと――レイラ。お主も来い。共に此奴の身体を洗ってやるぞ」

「! ……はい、わかりましたー」

レイラは、恥ずかしそうに頬を染めながらも、拒否せず微笑む。

「えっ……あの……いいのか、レイラ?」

「はい、ユキさんがよろしければ、ご一緒させていただければとー」

「何じゃユキ、緊張でもしておるのか? うん?」

「……うるせ」

煽るようにニヤニヤと笑みを浮かべるレフィに、俺はそれだけしか返せなかった。