軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法大学《3》

お師匠さんとの話を終えた後、俺は彼女の研究室を後にし――と、すぐに待っていてくれたらしいレイラが声を掛けてくる。

「魔王様、お話は終わりましたかー?」

「おう、待たせたな。エミューは?」

見ると、先程まで一緒にいた彼女の妹分、エミューの姿がなくなっていた。

「あの子は、授業の時間になっちゃったので、先程学校に向かいましたー。ここ数日はずっと一緒にいましたが、あの子、普通に学校がありますのでー。本人はもうちょっと、私達と一緒にいたがっていましたがねー」

「あぁ……考えてみりゃあそうか。……ウチの子らも、ここの学校くらいのところに、通わせてあげられるようにしてぇもんだ」

勉強は、基本的にはウチでレイラが教えてくれているが、それでも限度がある。

色んな経験を積ませてあげられるようにするには、やはり、外に出て学び舎に通わせるのが一番だろう。

だから、もう少ししたら、どこか寄宿舎のあるような学校に出すのがいいのだろうが……いや、けどそれはそれで、ちょっと心配だったりする。

ダンジョン帰還装置を渡しておけば、すぐにウチに帰って来れはするが……うん、彼女らを外に出すことになったら、それまでにダンジョン領域をその場所まで広げるか。

そうすりゃ扉を繋げられるし、イルーナ達もいつでも帰って来られるだろうし。

そう、これは過酷なこちらの世界で、子供を守るための措置であり、決して親バカではない。

親バカではないのである。

「そうですねー……エミューはもう、ここの幼年学校に通っていますが、イルーナちゃん達の歳を考えると、あと二年くらいしてから中等学校に通うのがいいかもしれませんねー」

「そうか……よし、それで考えとこう。通うのは……ウチに一番近いのは人間の街の学校だが、やっぱり魔界にある学校の方がいいか。今後、他種族同士で交流が深まるっつっても、偏見はそう簡単に消えるもんじゃねぇだろうし」

「確かに、イルーナちゃん達のことを考えると、そうするのが良いかもしれませんー。魔王様は、魔界王様とご縁が深いですから、彼に言えばポンと入学までの手続きをしてくれると思いますよー。この里の学校は、学び舎としては最高峰なのでオススメなのですが、ちょっと遠いですからねー」

……レフィのこともあるし、帰り際にもう一度、俺だけアイツんところに相談しに行くか。

今更だが、あの王と縁を結べたのは、俺にとって大きなプラスだったな。

奴も長命種で、今後数百年くらいは付き合いがあるだろうし。

こうして思うと、俺は人脈にはかなり恵まれているかもしれない。

ウチの面々と出会えたことは元より、それ以外の知人も、大体有能なヤツばかりだ。

この人脈は、大きな財産だ。

今後も大切にしなければならないだろう。

「今更だが、俺は人に恵まれたって心底思うよ」

「フフ、魔王様の人徳があるからこそですよー」

「いやぁ、そう言ってくれると嬉しいが、俺は俺に人徳があるとは思えねぇなぁ。基本的に自分勝手な男だし」

「そうですかー? 魔王様は、我が家の皆のことをとても大事にしていらっしゃいますし、どちらかと言えば自分は後回しにされているような気がするのですがー……」

「いい大人に見えるよう、振舞ってるだけさ。俺自身は自己中のどうしようもない男だ。――だから、運が良かったのは、間違いない。レイラやリューがウチに来ることになった経緯なんかも、ほとんど偶然だしな」

そう、運が良かったのは、間違いない。

この過酷な世界で、俺は恵まれていた。

「……改めてだが、みんなと出会えて本当に良かったよ。レイラと出会えたことも、俺に取っちゃ何物にも代えられない財産の一つだ」

「フフ、口説いていらっしゃるのですかー?」

「えっ、あー……ま、まあ、そうだな」

別にそういうつもりじゃなかったのだが、先程のお師匠さんとの会話を思い出し、俺は歯切れの悪い言葉を返す。

「? 魔王様、どうされましたかー?」

「い、いや、ちょっとな……」

ただそれだけを答えると、彼女は俺の内心を見透かしたような顔で、クスリと微笑む。

「なるほど、さては師匠に、私のことについて何か言われましたねー?」

「……ウチの女性陣に嘘は吐けそうにないな。あぁ、もう正直に言うが、口説いてくれっつわれたよ。このままだと、レイラが一生独身のままになる可能性が高いからって」

「もう、師匠もお節介なんですからー……すみません、魔王様ー。レフィが妊娠したという時にー……」

「……よし、わかった。お前、レフィのことを様を付けて呼ばなくなったし、とりあえず俺のことも、『魔王様』って呼ぶのはやめるところから始めようか」

そう言うと、レイラは目をパチクリさせ、それから口元に微笑を浮かべ、口を開く。

「わかりました、では、何とお呼びしましょうかー?」

「ユキでもおにーさんでもご主人でも、何でもいいぞ。好きなように呼んでくれ」

「……ユキ、と呼び捨てにするのは、何だか気恥ずかしいものがありますねー。では、ユキさんとお呼びしてもいいですかー?」

「あぁ、わかった。じゃあ今後は『魔王様』は禁止な」

「はい、わかりましたー、ユキさん」

ニコッと笑う、羊角の少女。

「……なんか、それはそれで、ちょっと気恥ずかしい感じがあるな」

「フフ、私もちょっと、照れてしまいそうですー」

俺とレイラは、顔を見合わせ、笑った。

――レイラのことについて、どうするかはわからない。

ウチの嫁さん達にも、相談しなきゃいけない。

ただ……もう彼女のことは、身内として見ているのだ。

だから、何があっても幸せにしてやりたい。

そんな思いが、俺の胸に湧き上がった。