軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旅行準備

「みんなで旅行!? 行きたーい!!」

「ちょっと大変そうな感じではあるんだがな。ただ、レイラのお師匠さんとそういう約束をしたから、出来れば行きたいんだ」

「ふむ、レイラが良いのならば良いのではないか? もちろん儂らは構わんぞ」

「私は、魔王様にご迷惑でなければー……皆さんと暮らしていたら、妹の顔も恋しくなってきましたのでー」

ワクワクが隠せない様子で俺達の話を聞いているイルーナの頭をポンポンと撫でながら、そう答えるレイラ。

レイラの妹というと、以前魔界で会ったあの子だな。

元気で利発な良い子だった。

「なら、決まりだな! ネルの予定を見て、準備しようか」

リューとの結婚式の後に、ネルは仕事に戻ってしまったので、彼女が休めそうな時に行くとしよう。

ま、ただ、今の俺は割と偉い役職に就いた、割と偉い人なので、彼女の仕事があんまり長引きそうだったら、わがまま言っちゃおっかな!

そういうのはネルが嫌がりそうな気もするので、緊急性が高そうならばこっそり俺も手伝ったりして、帳尻を合わせるとしよう。

と言っても、今は戦争終わりで平和になったばかりであり、我が嫁さんの仕事は治安維持や魔物討伐なんかの雑事がメインになると思うので、ぶっちゃけ彼女が必要になるような危険度の高いものはあんまりないんじゃなかろうか。

通常の軍じゃあ、相手に出来ないような魔物の討伐くらいか。

「羊角の一族の里、楽しみっすねぇ! 彼女らのところは学者一門だから、研究資料として色んな面白いものがあるそうなんすよ! それで観光業なんかもやっていて、研究のための資金にしているとか何とかって話っす!」

「ほう、それはいいな! 是非ともレイラに案内役を務めてもらって、色々見せてもらわんと!」

「うふふ、わかりましたー。皆さんに満足していただけるよう、向こうに着いたらいっぱいご案内させていただきますねー」

「お旅行だー! うわぁ、嬉しいなぁ!」

「……みんなが一緒は、初めてだから楽しみ」

「おりょこー? って、なーに?」

シィの言葉の後に、レイス娘達が揃って不思議そうに首を傾げる。

イルーナとエンは大喜びな様子だが、ダンジョンの魔物組は、ダンジョンから離れたことがないのでよくわからないのだろう。

フフフ、その楽しさは、実際に旅行に行った際に、存分に感じるといい……。

「よし、そうと決まればさっそく準備せねば。レイラ、羊角の一族の里は、魔界の海辺近くの地域って話だったな?」

「そうですねー。魔王様とレフィのお二人なら、飛んで三日程だと思いますが……徒歩ですと、ひと月は掛かってしまうでしょうかー」

「どうするんじゃ? 流石に、その長さじゃと童女どもが疲れてしまうぞ?」

「疲れないもーん! だって、楽しみでワクワクが爆発だから!」

「そうは言うても、日を跨ぐ旅となると、少々大変じゃぞ? お主、草原で遊んでいる時も夕方になるとウトウトしておるじゃろう」

「むむむ……確かにそうかも。いっぱい楽しんだら、疲れちゃうかも」

レフィに諭され、「うむむむ」と唸るイルーナ。可愛い。

「んー……よし、乗り物から作るか!」

確か……以前、レフィと行った空島でゲットした飛行石の余りが、それなりにアイテムボックスにあったはず。

揺れさえなければ、疲れやストレスは軽減するだろうから、DPで馬車か何かを出してそれに飛行石を組み込み、浮かせられるようにするとしよう。

動力は……俺とレフィだな。

ヤタのヤツにも行きは付いて来てもらって、頑張って飛んでもらうか。

「DPカタログに馬車は……あるな。おぉ、キャンピングカーみたいなのもあるのか! いいな、せっかくだし、でっかいのを用意しちまうか」

「……お主、無駄遣いは良くないぞ」

「乗り物は無駄にならないからいいんですー。今後もどこかへ行く時はそれを使って――いや、待て。待てよ?」

そう言えば、つい最近の戦争で知り合った者達の中に、飛行船乗りがいた。

移動用の乗り物は一台くらい持っていてもいいかもしれないが、今こそ俺は、コネを使用するべきか……?

* * *

しばらく来るつもりはなかったのだが、そんな訳でやって来たのは、ローガルド帝国。

「あぁ、いいぞ」

どうにかアポが取れた、知り合いの飛行船乗り――エルレーン協商連合という国の軍人、ゲナウス=ローレイン大佐は、二つ返事で頷いた。

「……えっと、自分で聞いといてアレだが、本当にいいのか?」

「戦争より以前に、ユキ殿には船を救ってもらった恩がある。その礼はいつかしたいと思っていたし、実は魔界には我々も用があってな。あの魔界の王が、飛行船の技術にいたく興味を示し、交渉の末一隻譲ることになったのだ。それに同行してもらう形ならば、多少の寄り道くらいは一向に構わん」

「へぇ……売ったのか。あの王、大分強かだが、良かったのか?」

「無論、我々にも多くの利があるからこそ交わした契約だ。代わりに、彼らが秘する幾つかの技術や魔術を教えてもらうことになっていてな。――もう、人間が空を仰ぐ時代は終わりだ。これからは我々も、他種族達と同じように大空を舞うことが出来るようになるだろう」

そう言って彼は、ニヤリと笑みを浮かべる。

……どうしてこっちの世界のヤツらは、こんなにもカッコいいんだろうな。

「それに、魔帝ともなるお方に乗船していただけるのなら、船に箔が付くというもの。何より――安全だ。万が一途中で魔物なんぞに襲われ、墜落しようものなら目も当てられん」

「おう、VIP待遇を期待しとくぜ。代わりに警備に関しては、災厄級が来ても撃退出来るようにしてやろう」

実際、レフィも乗るので。

龍の姿に戻れなくなり、弱体化したとか何とか言っていたが、どうもみんなが見ていないところで力の出し方を訓練しているらしく、魔境の森の西エリアで魔物狩りをしている様子を、以前から『マップ』でちょくちょく見掛けている。

覇を打ち立てた龍が、戦いの術を学び始めたのである。

誰が何と言おうと、今の彼女こそが、何人も届かない最強なのだ。

アイツ程の良い女は、やはり、世界を見渡してもどこにもいない。

張り合えるのは、きっとウチのダンジョンの面々だけだろう。

「ハハハ、それは頼もしいな。万が一があった際には、是非とも頼らせてもらうとしよう。――では、出航に関する話をしようか」

「了解。そちらさんの日程を教えてくれ――」

そして俺と大佐は、細かい日程についての話を進めたのだった。