軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

嫁会議

――夜。

草原エリアの旅館に集った彼女らは、もはや何度目かわからない嫁会議を今日もまた行っていた。

メンバーは、ユキの嫁三人に加え、レイラ。

幼女達は今回参加していなかった。

「では、これより嫁会議を始める! まずは、向こうの戦争での話をしようと思うが……とりあえず此度は、女関係は何も無かったようじゃの」

「ご主人、そういうとこあるっすもんねぇ……しかも皇帝って、本当に何がどうなったらそうなるんすかね。無事に帰って来てくれたから良かったっすけど」

「ローガルド帝国なる国の皇帝が代々魔王で、そこのダンジョンを支配したことにより、次期皇帝となったようじゃの。とは言うても、一つ呼び名が増えただけのことじゃ。彼奴の性格上、国に関する面倒な仕事なんぞせんじゃろうし、彼奴自身が言っていたように、特に儂らに関係はないじゃろうな」

「魔王様は、いったいどこを目指しているんでしょうかねー……」

「それはもう、自らの望むままに、っすよ。思うがままに我が道を突き進むのがご主人っすから」

「考え無しじゃからの、彼奴は。行き当たりばったりとも言う」

辛辣なレフィの言葉に、ネルが何とも言えない曖昧な笑みでユキのフォローをする。

「ま、まあ、彼なりの信念というか、自分がこうしたいっていう意志はしっかりしてるからさ。リューとの結婚式も、絶対に盛り上げるって固い意志が感じられるし」

「魔王様、張り切ってますよねー」

「必ずリューを喜ばせたいという強い思いが感じられるの」

「……あ、あの、恥ずかしいんで、それくらいで勘弁してほしいっす」

かぁっと顔を赤らめ、もじもじするリューに、彼女達は微笑ましそうに笑った。

――と、話が一段落した段階で、レフィが切り出す。

「それと……ずっと言おうと思っていたことがある。関係性が一つ変わる良い機会じゃから、聞いてほしい。――リュー、レイラ」

「は、はいっす!」

「はい、何でしょうー?」

改まった様子のレフィに、姿勢を正すリューとレイラ。

「そろそろ儂を、『様』を付けて呼ぶのはやめろ。以前は気にしておらんかったが……様付けじゃと、儂が目上であるかのように聞こえるじゃろう。儂らの関係は対等じゃし、儂はお主らのことをかけがえのない友人であり、身内であると思っておる。故に、関係性を 違(たが) うような呼び方はやめてほしいんじゃ。それとも、そう思っておるのは儂だけか?」

少し寂しそうにするレフィに、感じ入った様子でリューが言葉を続ける。

「レフィ様……そんなことないっす! ウチも、ウチもレフィ様のことは大切な友達で、家族だと思ってるっす! だから……これからは、レ、レフィって、呼ぶっすね!」

「あはは、リュー、何だか初々しいカップルみたいな感じだね」

「……まあ、レフィ様、じゃなくてレフィもウチも旦那さんがご主人である以上、実質的にウチらも恋人同士みたいなもんっすよね!」

「いや、どういう理屈じゃ、それは――って、こ、これ、引っ付くでないわ」

「えへへぇ……相変わらずスベスベで、抱き心地最高っすねぇ」

「あ、わかる! レフィ、すごい抱き心地いいよね」

そんな会話を交わす二人に、レフィはギュッとリューに抱き着かれたまま苦笑を溢した。

「フフ、なるほど……それは、あれですねー? 今後、お子が生まれた際のことを考えてのお話なのですねー?」

微笑ましそうに笑みを浮かべるレイラに、銀髪の少女は照れくさそうに答える。

「む、う、うむ……そうじゃな、そういうことじゃ。儂らが子持ちになるのも、そう遠くない未来になりそうじゃしな。その時、母親となる儂らの間に差があれば、子らにも影響があるじゃろう。それは、良くない」

「そういうことなら、わかりましたー。少し気恥ずかしい感じはありますが、これからは私も、レフィって呼ばせてもらいますねー」

「そっか……そんなところまで考えてくれてたんだね、レフィ」

「流石、正妻っす……ウチ、レ、レフィみたいな包容力のある女になるっす!」

まだちょっと慣れていない様子で『レフィ』と呼ぶリューに、クスリと笑ってネルが言葉を続ける。

「フフ、うん、頑張ろう、リュー!」

「……何だか、儂もちと、面映ゆいものがあるの。――あと、そうじゃ、レイラ。お主には一つ聞いておきたいことがあったんじゃが……」

「はい、何でしょうかー?」

「その……結局お主は、ユキのことをどう思っておるんじゃ?」

「魔王様を、ですかー?」

レフィは、言い難そうに少し口籠りながら、彼女の反問に答える。

「う、うむ……これまでの様子からしても、ユキとお主が仲良うやっていることはわかっておるのでな。お主にそういう気があるのならば、儂らは後押しするし、ユキの奴にも言い含めておこうと思っての。まあ、これが完全に儂の早とちりであるならば、何を頓珍漢なことを、という話になるんじゃが……」

「……それに関しては、僕もちょっと聞きたいかも。胸に秘めておきたいこととかだったら、全然無理に言わないでくれていいんだけど……」

「……確かに、聞いてみたい気はするっすね」

遠慮するような彼女らの言葉に、レイラは困ったような苦笑を浮かべる。

「え、ええっと、そうですねー……正直に言いますと、旦那様がいれば幸せだろうとは思いますが、いないならいないで別に、構わないと言いますかー……それはそれで研究が捗りそうなので、いいかなと、そんな風に思ってしまっているんですよねー」

珍しく、言葉に悩んだ様子を見せる、羊角の少女。

「魔王様がとても魅力的な男性であることはわかっているのですがー……好きなだけ好きなことをさせていただいている今の状況も十分幸せに感じてしまっていて……我ながら、実にどうしようもない性分だとは思っているのですがー……」

その彼女の本音に、どう答えたものかと悩ましい表情を浮かべるレフィ。

「あー……なるほどのう。実にお主らしい感じじゃのう」

「……こればっかりは本人の気持ちなので、何とも言えない感じっすねぇ……けどレイラ、これだけは言わせてほしいっすけど、嫌っすよ! ここでの研究に満足して、急にどっか行っちゃったりしたら……ウチ、レイラのことももう、家族みたいなものだと思ってるんすからね!」

「それは大丈夫ですよー。ここに来るまでは好奇心の赴くままにフラフラと知識を貪っていましたが、今はもう生涯研究のテーマを『魔王及び迷宮の生態調査』に決めてしまいましたのでー。皆さんのお邪魔にならない限り、ずっと一緒にいさせていただけたら、と思っていますー」

「邪魔なんて、そんなこと思う訳ないよ! レイラのこと、みんな大好きだから!」

「うむ、ユキの奴もレイラのことはかなり頼りにしておるしな。お主は、儂らの精神的支柱じゃ。共にいて心休まることはあれど、疎ましく思うことなどあり得ん」

「そうっすよ! イルーナちゃん達もとっても懐いてるし、ネルの言う通り、ウチらもレイラのことは大好きっすから! だから、これからもずっと一緒にいて欲しいっす!」

「皆さん……本当に私は、幸せ者ですねー……」

彼女らの言葉に、レイラは心底から嬉しそうに微笑んだ。