軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特訓《2》

「先に、お前が考えてることってのを聞いていいか?」

「うむ、今は二案考えておる。まずは、杖じゃ。元々儂は、戦闘時魔法主体で戦っておったから、そっちを強化する方向性じゃな」

「杖、杖か……そう言えば、以前に来た精霊王のじーさんも杖を持ってたな」

「そうじゃの。今思えば、奴も儂と同じことを考えたのかもしれん。ヒト型の生物では、魔力の出力に制限があるのかもしれん」

と、旦那は微妙そうな表情で口を開く。

「……精霊王は、ヒト型の生物って考えていいのか?」

「……まあ、人に近しいさいずではあるじゃろう。五体も存在しておらんが」

「微妙なラインだと思うが、まあそこは今は置いておこう。それにしても杖、杖かぁ……魔法少女ステッキMk2なら――」

「燃やすぞ」

ボ、と炎を掌に生み出すと、ユキは引き攣った表情で空間の亀裂から取り出しかけていた、いつか見たことのある杖をしまう。

「じょ、冗談冗談。――なら、コイツはどうだ。一度最高の杖を作ってみようと、いつかの山のてっぺんで回収したやべぇ性能の杖を基に、お前の鱗とかを混ぜて造ってみたんだ。レイラに一回評価してもらったことがあるんだが、国宝級って評価してくれたから、それなりに良いもんだとは思う」

「ほう、それは期待が持てるの。お主は使わんのか?」

「あぁ。俺、杖使っても全然効果を実感できなくてさ。多少魔力の流れが良くなるのはわかるけど、その程度だったらエン使ってた方が戦いやすいし」

「まあ、儂らが使うのは原初魔法じゃしの。あまり、杖の恩恵を受けるような魔法の発動の仕方でないことは確かじゃな」

詠唱を伴う形態の魔法ならば、杖が詠唱代わりを果たす場合があり、加えて魔力量の少ない者ならば、少量の魔力で効率良く魔法を発動することが出来るようになる。

だが、自身も旦那も詠唱をしなければ、魔力量に関しても効率など全く無視して発動してしまえるだけの、圧倒的な魔力量がある。

故に、杖というものの恩恵を受けにくいのだ。

「それでも、杖を使うのか?」

「慣れたらそっちの方が魔法が使いやすくなるらしいからの。ただ、お主は無理に杖を使おうとせずとも、エンを使っておれば良いと思うぞ。エンもまた、能力で言えば本当に良い武器じゃからな」

そう言いながら、受け取った杖に魔力を込めて行き、杖の先に一つ魔法を発動する。

――発動したのは、それなりに使い慣れている火球。

と言っても、かなりの魔力を込めたために火の色が青色を放っており、ギュ、と拳より一回り小さいくらいのサイズに火が凝縮されているので、あまり一般的な火球とは言えないだろう。

それを、何もない岩肌に向かって放ち――瞬間、一帯がボンとはじけ飛んだ。

すぐに土煙が上がり、辺りの様子が見えなくなる。

「……相変わらずお前の魔法はデタラメだな。どうだ?」

少し呆れた様子の旦那に、渋面を作りながら答える。

「……正直、微妙じゃのう」

「ダメそうか?」

「慣れたら使いやすくなるらしいと言うたのは儂じゃが……本当にそうなのかと、儂自身が言いたくなってしもうた。もしや、使い方が違うのかの……?」

ほぼ、普段と変わりがない。

火球の魔法を発動する場合、魔力を全身から掌に集め、そこに魔法を顕現するというプロセスを辿る訳だが、今のだと魔力の集める位置を掌から杖の先へと変えただけで、威力も発動までの時間も何も変化がなかった。

理屈の上では、杖を使った方が効率が良くなっているはずなのだが……微々たる変化過ぎて、よくわからない。

「精霊王の爺は、精霊魔法に加え原初魔法を併用しておったから、奴が杖を愛用しておる以上意味がないことはないと思うのじゃが……これは、再度奴が訪れた時にでも、聞いてみるしかないの」

「そうだなぁ……その辺りに関しては、俺は知識が疎いから、何も言えんな……もう一つの案は?」

「うむ、この身体のまま、全身を鱗で覆ってみようと思っておる。とりあえずそうしておけば、生身で戦うよりはマシじゃろうからな」

借りた杖をユキに返した後、今度は自身の身体を変化させていく。

一部を、というのは今までに何度もしたことがあったが、全身を龍のものに変えるのはしたことがなかったので、いつもより神経を集中させ――少しして全身のほぼ全てが鱗で覆われ、爪が龍の鋭いものへと変化する。

いつの間にか、翼も生えていた。

体表面を変えるだけのつもりだったが、勝手に出て来てしまったようだ。

「ふむ、上手くいったか」

自身の身体を見回し、と、旦那が少し感動した様子でこちらを見ていることに気が付く。

「おぉ……すげーカッコいい」

「む、そうか?」

「あぁ。こう……幼女達の言じゃないが、変身ヒーロー――いや、変身ヒロインみたいで、すげーカッコいい。あの子らに見せたら多分、大喜びで正義の味方ごっこをせがんで来ると思うぞ」

旦那の言葉に、容易にその様子が想像でき、一つ苦笑を溢す。

「この姿では、ちと危ないから遊んでやれないの。大怪我させては敵わん、正義の味方ごっこをするなら、儂とお主で、じゃな」

「……その時は手加減してくれよ」

「安心せい。後で、儂がちゃんと治療してやる」

「ケガする前提で話すのはやめてくれたまえ」

二人で笑った後、旦那は言葉を続ける。

「その姿なら、魔法の発動とか早くなるんじゃないか? 元の姿に近い訳だし」

「む……確かにそうじゃの。試してみるか」

先程発生させたのと同じ火球を、今度は掌の先に出現させ――。

「ぬわぁっ!?」

「熱っ!?」

――想像していた倍以上の火球が生み出され、激しい熱が襲い来る。

いつもは魔力でコーティングし、自身が火傷を負わないようにするのだが、想像以上の威力になったせいでコーティングをはみ出してしまったようだ。

「は、早く消すか放つかしてくれ!!」

「う、うむ!!」

こんな規模の火球を放ったら大惨事になるのが目に見えているので、すぐに供給している魔力をカットし、ボシュ、と掌を握り締めて消し去る。

熱が消え去り、涼やかな空気が戻ったことに、安堵の息を吐き出す。

……服の至る所が、焼け焦げてしまった。

肌は鱗を纏っていたために何も問題なかったが、もうこれは着れないだろう。

旦那の方は発火してしまったらしく、慌てて服の裾をパンパンと払って消火し、ホッと一息吐いていた。

「す、すまぬ。思っていた以上の火力になってしもうた。火傷はしておらんか?」

「あぁ、それは大丈夫だ。ビックリはしたけどな。……なんか、初めてお前に魔法を教わった時を思い出したぞ。立場は逆だったけど」

「……カカ、そうじゃな。そんなこともあったの。あの時はお主の前髪が焦げたんじゃったか?」

懐かしい記憶だ。

何十年も前の話に思えるが……あれが、たった二年も経たないような頃だと考えると、面白いものがある。

「そうだったそうだった。懐かしいな。――んで、今のはいい感じだったんじゃないか? お前が魔法の威力調整に失敗したってことは、出力が想像より上回っていたってことだろ?」

「うむ。やはり、鱗の有無がこの差じゃろうな。鱗があるおかげで魔力が全く肌から逃げて行かず、操作も圧縮も無駄なく出来ておるんじゃろう。いつもより圧倒的にすむーずに魔力が動くもんで、つい込め過ぎてしまったようじゃ」

「なるほどな……あんまり俺が協力することもなかったが、形は見えたな。そのフォルムでの戦闘方法を今後磨いていくのが良さそうか」

「そうじゃの。これは、『龍人化』とでも呼ぶか。今の感じじゃと、慣れれば以前の龍形態の時と同じくらいの出力――いや、それ以上も行けるかもしれん。何とかなりそうじゃな」

これで、方向性は見えた。

後は、鍛えるだけだ。

「お前の龍形態も最高にカッコよかったが、正直今の姿の方が好きかもしれん。カッコよくて強いってもう、最強だな」

素直に褒めてくれる旦那に、少し照れ臭くなり、冗談めかして言葉を返す。

「ま、儂が本気を出せばこんなもんじゃ。お主はこんな素晴らしい女が嫁であること、誇って良いのじゃぞ?」

「へへぇ、我が嫁さんが最強最かわ最かっこよでもう最高っす!」

「微妙に馬鹿にされているように聞こえるのは気のせいかの?」

「何を言いますか! 心から賛辞を送っているというのに、信じていただけないとは……およよよぉ」

「あれじゃな、人の神経を逆撫でする、そこはかとなく気色の悪い泣き声じゃな」

「俺もそう思う」

――そう旦那とふざけあっていると、その時こちらに走り寄って来る足音が耳に入る。

「ご主じーん! あっ、レフィ様も一緒にいたっすか――ってうわっ!? ど、どうしたんすか、二人とも。真っ黒っすよ?」

走り寄って来たのは、リュー。

彼女の言葉に、旦那が答える。

「リューか。ちょっと今、レフィと魔法の研究をしててな。どうしたんだ?」

「ネルから、さっき連絡が入ったっす! ――『手を貸して欲しい』って言ってたっす!」