軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

我ら、いたずらし隊

「よし、ここはこれでいいか」

暇があれば行っている、城の内装造り。

以前と比べ、かなり進んではいるものの、未だ手を付けていない居館もまだまだある。

この辺りはもう、一生使わないような気もするが、それでもこうして城の内装造りを続けているのは、半ば趣味みたいなものだ。

男ならば誰しも、ガ〇プラを組み立てたり、ミ〇四駆を組み立てたりしたことがあるだろうし、あれと同じだ。

……いや、ちょっと違うか?

まあ、大体同じようなもんだろう。

――と、作業を続けていると、その時城の陰からこちらを窺っている三人組の姿が視界の端っこに映る。

レイス娘達である。

空中に浮遊しながら彼女らは、何やら互いに顔を見合わせ、コソコソと話し合っている。

……と言っても、考えていることは大体わかる。

十中八九、俺に対して行ういたずらの話し合いをしているのだろう。

フッ、だが甘かったな、レイス娘達よ。

その姿が見えてしまった時点で、俺の心には余裕が生まれてしまった。

今の俺は、大河の中をひっそりとたたずむ大岩。

何者も、今の俺の心を動揺させることは――。

「――っておわぁっ!? び、ビックリした……」

いつの間にか目の前にいたレイス娘達が、ばぁ、と言いたげな様子で俺の顔の至近距離から覗き込んでくる。

……どうやら、城の陰で話し合っていた姿は、三人娘の次女、ルイが使える幻影魔法が生み出した姿だったようだ。

そちらで姿をわざと見せ、その間に本物の彼女達は俺を驚かせるために近寄ってきていた、と。

クッ……流石だ、レイス娘達よ。

日々、人の意識の空白を突くのが上手くなっているな……。

「一本取られたぜ、お前ら……」

そう言うと、長女レイは「うふふ、すごいでしょ!」といった感じでにこにこと笑い、次女ルイは「これくらい、私達の手に掛かれば余裕なのよ!」といった感じで胸を張り、三女ローはあんまり内心を窺わせないような微笑で、しかし嬉しそうに俺の周囲をくるくると回る。

うーん、可愛い。

レイス娘達の様子に和んでいると、彼女らは俺の両手をちょいちょいと引く。

――主も一緒に遊ぼう、と。

「ふむ……そうだな、一緒に遊ぼうか」

俺は、ニヤリと笑った。

* * *

「――いたぞ、ターゲットだ」

俺達の前にいるのは、何やら上機嫌そうな様子で洗濯物を干している、リュー。

「レイ、念力を操り、風で飛んだ 風(ふう) を装ってバスタオルを指定ポイントに飛ばせ。ルイ、ロー、幻影魔法と精神魔法の準備を――」

「えへへぇ……ご主人が、とっても可愛いって、お前がいないとダメだって……全く全く、ご主人は相変わらず誑しの才能があるんすからぁ」

鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌さで、彼女は腰をクネクネし、口元をニヨニヨとさせている。

……昨夜は、彼女と二人だけで旅館の方で寝たのだが、それがよほど嬉しかったようだ。

「……な、何だよ、お前ら。何か言いたいことでもあるのか?」

揃ってこちらを見上げてくるレイス娘達に、俺は誤魔化すようにゴホンと一つ咳払いしてから、彼女らへと指示を出す。

「行け、作戦開始だ」

俺からゴーサインが出ると同時、レイが念力を発動し、なびかせるように動かしながらバスタオルをこちらまで飛ばしてくる。

「あっ、ちょっと、待つっすよー、バスタオル君」

リューは油断し切った様子で、のんびりと下に落っこちたバスタオルを取り上げ―― その下にある(・・・・・・) 落とし穴(・・・・) に、そのまま転げ落ちる。

「へ? ――うひゃあああ!?」

勿論、こんな短時間で落とし穴は作れないので、実際に穴が開いていた訳ではない。

ルイが幻影魔法で大穴の幻影を生み出し、ローが精神魔法で落下の感覚をリューに植え付けただけだ。

だが、それを知らないリューは、恐らく今、本当に大穴に落っこちているような錯覚を覚えていることだろう。

まあ、あんまり深い精神魔法を使用してしまうと、気分を悪くさせてしまう可能性があるため、精神魔法の掛け具合は軽ーくだ。

実害のあるいたずらはいたずらじゃないので、その辺りの線引きはしっかりするよう、レイス娘達には言い聞かせている。

と、やはり魔法が軽かったからか、五秒もしない内に魔法が解けたようで、両手と両膝を地面に突き、ゼーゼーと呼吸を繰り返すリュー。

「ワハハ、まんまと引っ掛かったようだな、リュー!!」

「ご、ご、ご主人!! ご主人っすか、このいたずらを考えたのは!!」

「如何にも」

「如何にも、じゃないっすよ、もう!! ご主人がレイスの子達と一緒にいたずらすると、一気にいたずらの度合いが鬼畜になるっす!!」

うむ、いい褒め言葉である。ありがとう。

「フフフ、ビックリしたか?」

「そりゃあ、ビックリしたっすよ!! 謝罪と賠償を要求するっす!! ぐ、具体的には、その……今日も添い寝を要求するっす!!」

「え? う、うむ……いいだろう」

「え、えへへ……そうっすか。なら、今のいたずらに関しては、不問にしてあげるっす!」

俺の言葉にリューは、少し頬を赤くしながらパァ、と咲いた花のような綺麗な笑顔を浮かべ、こちらを見上げた。

……やめろ、レイス娘達よ。

そんな顔で、こっちを見るんじゃない。

俺だって、そんなつもりじゃなかったんだ。

* * *

「――見つけた、次のターゲットだ」

我ら『いたずらし隊』が、リューの次に定めたターゲットは――レイラ。

現在彼女はキッチンにて、包丁を使いトントントンと小気味良い音を立て、手際良く料理をしている。

フフフ、いつも冷静沈着、余裕のあるにこにこ顔を崩さない彼女が、どんな慌てるサマを見せるのか、今から楽しみだなァ!

あ、けど、包丁や火を使っている時は危ないので、狙うはそれ以外のタイミングだ。

「よし、今だ! レイ!」

レイラが野菜を切るのを一段落させ、包丁を置いた瞬間を見計らってレイは念力を発動すると、キッチンの台に掛かった台拭きをハラリと下に落とし――が、レイラは、特に見もせず落ちて来た台拭きを空中でキャッチすると、台の上に戻し、何事もなかったかのように料理の続きに戻る。

な、何……!?

キャッチした、だと……!?

「クッ、レ、レイ、もう一度だ!」

俺達のいたずらは、大体全てレイの念力を起点にして行われるので、彼女の魔法が通らないと作戦が続行出来ない。

レイは俺の言葉に従い、もう一度念力を発動して、今度は台拭きと同時に木製コップを落とし――しかしレイラは、それが床に落ちる前に両手を使って両方ともキャッチし、台の上に戻すと、何も気にした様子もなく再度料理へと戻る。

なっ……ど、どういうことだ!

ヤ、ヤツは、フォースの使い手だとでも言うのか!?

……フォースはメイドと共にあり、メイドはフォースと共にあり……フォースは、おとぎ話ではなかった、ということか。

だが、ジェダイのメイドよ……貴様は理解していない。

最後に勝つのは、我ら、帝国軍である!!

「こ、こうなれば直接干渉だ。レイよ、レイラのスカートをめくるんだ。そうして気を逸らしている間に、作戦を決行するぞ!!」

ク……クックック、流石のレイラも、自身のスカートがめくられそうになれば、慌てふためくに違いない。

彼女が羞恥に顔を赤くする瞬間を、是非とも拝ませてもらおう!!

「今だ! スカートをめくれ――」

「あー! おにいちゃんがレイちゃん達にお願いして、レイラおねえちゃんのスカートめくりしようとしてるー!」

――その声に後ろを振り返ると、いつの間にかそこにいたイルーナが、キッチンの方をこっそり窺っていた俺達に、糾弾するように指を指していた。

「ばっ、こ、声がデカい、イルーナ! ターゲットに気付かれるだろう!」

「いけないんだー! おにいちゃん、女の子のスカートはめくっちゃいけないんだよー?」

「ち、違う。それは誤解だ、イルーナ。俺達はただ、レイラにいたずらを――」

「うふふ、そうですかー、私にいたずらをー」

「そう、お前にいたずらを――待て、レイラ。ち、違う。違うんだ。あっ、ず、ズルいぞ、お前ら!」

いつもの微笑を口元に携え――氷のような笑みを浮かべるレイラを見て、形勢悪化と判断し一目散に逃げ出すレイス娘達。

脱兎の如く、という言葉がピッタリくるような、とても手慣れた見事な逃げっぷりである。

だが、そのせいで残されたのは、俺と、腕を組んでちょっと怒った様子のイルーナと、悲しそうな顔をするレイラ。

「私は真面目に働いていたというのに、ご主人は私にいたずらを、することに夢中になっていたとー」

「あ、あの、レイラさん、いたずらの部分をそんな強調されると、微妙に誤解を生みそうな気がするので、やめていただけると嬉しいかなーって……」

「おにいちゃん、言い訳しない! ほら、レイラおねえちゃん、泣いちゃったじゃない!」

「い、いや、すまん、その、ちょっと脳内での銀河戦争が白熱してしまいまして――ていうか、レイラお前、実は意外と楽しんでるだろ!?」

「さぁ、何のことですかねー」

泣くような素振りを見せていたのに、イルーナが俺を怒り始めた瞬間、ケロッと表情を変え楽しそうな笑みを浮かべるレイラ。

こ、コイツ……俺をからかってやがるな!

主人をからかうとは、何てメイドだ!

「もう、おにいちゃん、そうやって話を逸らそうとするのは、よくないんだよ! レフィおねえちゃんとリューおねえちゃんに言いつけちゃうんだから!」

「あ、ま、待ってください、イルーナさん。それは勘弁していただけると……わ、私も、反省していますので……」

「ごめんなさいは?」

「ごめんなさい」

幼女に怒られる俺を見てレイラは、それはもういい笑顔をしていたのであった。