軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

海鮮バーベキュー《2》

「それにしても、ご主人の迷宮はどんどんおっきくなっていくっすねぇ……これ、もう世界でも有数の迷宮って言える規模になりつつあるんじゃないっすか?」

アツアツのエビの殻剥きに悪戦苦闘しながら、幽霊船ダンジョンに視線を巡らしてそう言うリュー。

「え、マジで?」

「魔境の森をあんなに支配して、こっちの海の方にもこんなおっきな迷宮があって、二つ合わせれば相当な規模と言えると思うっすよ。ね、レイラ」

「そうですねー……四百年近く攻略が続いている『孤島迷宮』や、もはやいつから存在するのかさえわからない『火山迷宮』などと比べると、魔王様は非常に若い迷宮の主と言えるでしょうが、リューの言う通り規模で言えば上から数えた方が早いぐらいかとー」

「おおー……それは嬉しいな」

確かに今では、魔境の森の南エリアはほぼ完全に支配領域にしており、北エリアと東エリアが半分程、一番魔物が強い西エリアがちょこっと組み込んだぐらいといったところなのだが……いつの間にか俺も、 一角(ひとかど) の魔王となっていた訳か。

これで木端魔王からは、出世したと言えるだろうか。

「……いえ、規模だけではないですねー。考えてみればレフィ様がいる時点で、恐らくこの迷宮は、攻略の難しさに関しても世界一と言ってもいいと思いますよー?」

そう言ってレイラは、我が嫁さんの方へと顔を向ける。

「ネル! しっかり守るんじゃぞ!」

「わっ、ちょ、ちょっと、揺らさないでよレフィ!」

「えー、おねえちゃん達、肩車ずるーい!」

「ガったいだー!」

「……むしろ、辛そう」

「クックック、見よ、童女ども! この戦術的な作戦を! これで儂らに死角無しじゃあ!」

レイス娘達を加えた幼女連合に対し、ネルを肩車したレフィが胸を張り――そのままバランスを崩して、二人一緒に後ろに倒れた。

「わああ!?」

「ぬわあ!?」

「あっ……おねえちゃん達、大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ、イルーナちゃん。心配してくれてありがとね。――もう、レフィ! ビックリしたじゃないか!」

「ぬ……す、すまん」

……彼女らはボール当てをやっていて、壁の一定範囲に当てたら幼女連合の勝ち、それを防いだらレフィ達の勝ちで勝負をしていたようだが……エンの予想が当たりだったな。

まあ、何も言うまい。

「……アイツがいる限り、世界一だろうとは確かに俺も思うが。何かこう……迷宮も魔王も、全く大したことないんじゃないかって思えてくるから不思議だな」

「あ、あはは……ま、まあレフィ様も、頼りになる時はすごく頼りになるっすから」

そうフォローするリューに、ただ黙して、意味深にニコニコしているレイラ。

俺と君達は今、多分同じことを考えているだろう。

それにしても、レフィとネルのあの二人、相性がいいのか、結構仲が良いんだよな。

基本的にレフィが振り回し、それに対してネルが、困った様子でやれやれと付いて行く感じだ。いいコンビであると言えるだろう。

彼女らの旦那である身としては、二人が仲良くしているサマを見るのは、なかなかに嬉しいものがある。

「……そう言えばレフィ様の伝説の一つに、侵略に精を出して様々な国と数多くの戦争を起こした災厄級の魔王、『死王』に勝負を挑まれ、返り討ちにしたというものがありましたねー。あれは、実話なのでしょうかー?」

「へぇ……どうなんだ、レフィ?」

そう俺が声を掛けると、転がっていたところからのそりと身体を起こしたレフィは、こちらに聞き返す。

「む? 何じゃて?」

「死王とかってヤツ、お前が倒したのか?」

「死王……あぁ、いつかの阿呆じゃな。あの阿呆、儂が少し離れていた間に儂の 塒(ねぐら) を破壊しおったんじゃ。腹が立ったもんで、仕返しで奴の支配領域を全て根こそぎ灰にしたら、知らん内に一緒に死んでおったの」

「……なるほど、勝負を挑まれたという訳でもないのですねー」

「すごい哀れな最期だな……そういう話を聞いた時にいっつも思うんだが、わざわざお前にケンカを売ろうとするヤツの気が知れんわ」

最強の称号でも欲しいのだろうか。

「ほう、そうか。むしろ、儂に喧嘩を売った数で言うとこの世で一番のお主ならば、その辺りはよくわかるのではないかと儂は思っておるんじゃが?」

「いやいや、俺のはほら、愛情表現みたいなもんだからさ?」

「フン、面倒な愛情表現もあったものじゃの」

飄々と答える俺に、鼻を鳴らすレフィ。

「でもレフィ様、ご主人とそうやって言い合いするの、実はすごい好きって前言ってたっすよね」

「ばっ、リュー、お主、このっ!」

横から口を挟むリューに、かぁっと顔を赤くし、上手く言葉にならない感じで焦るレフィ。

その彼女の様子に俺は、ここぞとばかりにニヤニヤ笑みを浮かべる。

「ほーほー、そうかそうか。実はすごい好きか。なるほどなるほど」

「何をニヤニヤしておるんじゃ、このあほたれ!」

「おわっ!? おま、俺まだ食ってんだから、食事中はやめろよ!」

真っ赤っ赤のレフィが豪速球で投げてきたボールを、手に持ったままの皿を揺らさないよう、胴体だけを捻って回避する。

レフィがこういう反応をするだろうと、半ば予想していたから避けられたが、そうじゃなかったら確実に食らってたぞ。

「知らぬわ! 勝手に食ってろ、阿呆め!!」

そう吐き捨ててレフィは、しかしリューの言葉に対する否定は最後までせず、プリプリと怒って幼女連合の方へと戻って行った。

「うーん、レフィ様の反応、いつ見ても可愛いっすねぇ」

「うむ、よくやったぞ、リュー。後でアイツが仕返しに来たら庇ってやろう」

「あ、ホントっすか! その時は是非お願いするっす。まあでも、今のウチにはレフィ様をいじるネタが結構あるっすからね、そう簡単に仕返しされたりしないっすよ!」

「ほう……リューよ。君と少し、取引がしたい。色々と聞かせてもらえないかね?」

「げへへへ、ご主人、ご所望は?」

「……二人とも、活き活きしてますねー」

小芝居を続ける俺とリューの様子に、隣にいたレイラが、呆れた様子でそう言った。