軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

決着1

それにしても――。

名:ハイエー

種族:人間

クラス:詐欺師

レベル:12

HP:0/290

MP:0/72

筋力:160

耐久:140

敏捷:81

魔力:26

器用:73

幸運:91

スキル:詐術lvⅠ

称号:誘拐犯、人殺し

名:スデダン

種族:人間

クラス:斧士

レベル:15

HP:0/331

MP:0/81

筋力:213

耐久:202

敏捷:98

魔力:27

器用:105

幸運:171

スキル:斧術lvⅠ

称号:強姦魔、人殺し

名:ケダンケ

種族:人間

クラス:会計

レベル:7

HP:0/181

MP:0/82

筋力:115

耐久:102

敏捷:126

魔力:31

器用:211

幸運:117

スキル:算術lvⅡ、速読lvⅠ

称号:強姦魔、逃亡者

弱い。

揃いも揃ってクズばかりで笑ってしまったが、そういう業界で生きているヤツらのくせに、どいつもこいつも弱過ぎる。

俺の初期ステータスですら600前後あったのに、コイツらと来たら、皆100から200前後しかない。MPと魔力値に関しては、イルーナにすら下回っている。

人間って、こんなに弱いのか。

そりゃ、ダンジョンに種族を勝手に変えられるわ。

「――で、オイ、どうなんだよ。魔族で金髪の女の子だ」

俺は、死体の散乱する、他の部屋と比べて一際豪華な内装をしている執務室らしい部屋の机に腰掛け、執務椅子にでっぷりと座っていた豚みたいな容姿の男に問い掛ける。

「貴様ッ、俺が誰だかわかッアギャアアァッ!?」

「悪いな、ブタ。俺はお前みたいな家畜の顔の区別はつかねーんだわ。そういうのは農家の人に言ってくれ」

死体から貰った短剣でブタの掌と机を縫い付けながら、そう言う。

「おっ、俺にこんなことしてどうなるかわかっているのか!?き、貴族連中が黙っヒギッ!?」

「ツバ飛ばすな汚ぇ。殺したくなるだろ。やめてくれ」

ブタの顔面を蹴って黙らせ、不快に顔を顰める。

こんな尋問紛いのことをしているのは、とうとうイルーナが見つからなかったからだ。

あの後、とにかく屋敷中を廻って、出て来るクソどもの首と胴体を泣き別れさせながら探し回るも全く見つからず、もう面倒臭くなったので、『索敵』スキルで生き残りのクソどもが待ち構えていることがわかっていたこの部屋に突撃した訳だ。

ここにいないリルは、どうにかイルーナの匂いを辿れないかと他で探し回っている。

「いいか、さっきは思い出せなかったみたいだから、もう一度聞くぞ。今度はちゃんと思い出してくれよ?」

スッとブタの首元に大剣の刃を当て、そこに魔力を流し込みながらそう言う。

瞬時に魔術回路が反応を示し、刀身全体に幾何学模様が浮かび上がった。

今まで敵が弱過ぎて毒効果を使う機会すらなかったが……まあ、脅しには十分だろう。

事実、刀身から時折ぽたり、ぽたりと落ちる毒の液体が床に垂れ、硫酸ばりにそこを溶かしている光景を見て、感電でもしてんのかと思わんばかりにブタがブルブルと震えだす。

「よおく思い出せ。これで答えられなかったら、俺は悲しくて刃がぶれちまうかもしれねぇ。金髪で、吸血鬼の女の子だ。年齢は七歳か八歳程。背丈はこんなもんか?」

言い聞かせるように、手ぶりを交えながら特徴を伝える。

――だが、ブタから返って来たのは望んだ答えではなかった。

「…‥し、知らない!!」

「……ア?」

「ち、違う!!本当に知らないんだ!!気付いた時には勝手に消えていた!!」

「…………へぇ?」

俺が少しだけ刀身を引いたことに生き残る道を見出したのか、ブタが面白いぐらいにペラペラと話し出した。

――どうやらイルーナは、自力で脱出することに成功したようだ。

わざわざあの森くんだりまで来るぐらい執着していたのだから、当然の如く逃がさないようにかなり高価な魔導具の枷をはめ、見張りも付けていたそうだが、ふと気づいた瞬間にいなくなっていたそうだ。

売り先が決まっている商品であったため、慌てて捜索するも、龍の大群――つまり俺達が森の方から襲いに来ていることを知ってそれどころじゃなくなり、今に至ると。

その時の話を聞きたいところだが、イルーナの見張りをしていた男二人はこの部屋に転がっている死体の仲間になってしまったので、残念ながらもう会話をすることは出来ない。ちょっと早まったな。

……そう言えば、俺が見つけた時もイルーナは自力で逃げて来たんだった。

本当に賢い子だ。このままここで捕まっているのはマズいと自分で判断したのだろう。

どうやって逃げられたのかはわからないが……まあ、無事ならそれでいい。

「――頭ァ!!増援集めてきやした!!」

と、その時、まだクソどもの仲間がいたらしい、男の一人が部屋へと入って来る。

「よくやった!!フハハハ、馬鹿が!!俺がただ臆しただけかと思ったか!!俺が時間を、稼い、で……いる間に……」

味方が現れ、途端に調子付いたブタだったが、その言葉が尻つぼみに消えていく。

「リル、どうやらイルーナはここにいないようだ」

男の次に現れたのは、リル。まるで蚊でも払うかのようなしぐさでペシ、と今しがた現れた男を吹き飛ばし、部屋に入って来る。

吹き飛ばされた男は、頭部を強かに壁に打ち付け、派手に赤色をぶち撒けて動かなくなった。

「……ま、まだだ!!まだ呼んだ増援が――」

「それってあれか?そこで臓物まき散らして転がってるヤツらのことか?」

リルがこっちに来がてら潰しておいたようだ。

俺が殺した覚えのない死体までもが廊下に転がっている。

「くっ……こ、コノオオオォォッッ!!」

もはや自分が助からないことを悟ったのだろう。

ブタは近くに転がっている、護衛らしい男の亡骸から剣を拾い上げ、その刃を振り上げるが――。

「おせえ。もっと運動しろ、ブタ」

俺はヒョイとその斬撃を避けると、スッとブタの肩口を少しだけ斬りつける。

「あぐっ……?――ぐあああぁぁあぁあっっ!?」

耳障りな悲鳴を上げて、のたうち回るブタ。

切り口から侵入した毒が、少しずつ浸食を開始したのだ。

ブタの頬に脂汗が浮かび、醜い顔に苦悶の表情を浮かべ、助けを懇願するかのようにこちらに手を伸ばす。

「それじゃあな、何だか具合が悪そうだが、お大事に」

そう言い残して俺は、どんどん身体が変色していくブタを後目に、部屋を後にした――。

* * *

屋敷を出ると――ズラリと半円状に並んだ、お出迎えの人間達。

皆武器を構え、一人と一匹に対して並々ならぬ警戒をしている。

……なるほど、あれだけ騒ぎになっていたはずなのに、屋敷に踏み込んで来るヤツが誰もいないなとは思っていたが……どうやら無暗に踏み込むことはせず、ここで警戒網を張っていたようだ。

恐らくは戦闘を生業とする者達なのだろう。装備が整っており、動きもキビキビしていて、さっきのバカどもとは違って流石に優秀だ。

……あぁ、クソ、面倒だ。

俺は、ソイツらを前に、ただスウッと大きく息を吸い込み――。

「――イルゥゥナアアアァァァ!!」

そう、遠くまで聞こえるようにと、声を張り上げた。

「――おにいちゃん!!」

声。

聞こえて来たのは、思ったより近くから。

バッとそちらに顔を向けると、やはり何らかの魔法で隠れていたようだ。誰もいない路地裏の物陰の方から、突如スッとイルーナが現れ、そのまま俺の方に走り寄って来る。

「イルーナ!!」

そのまま俺の胸に飛び込んで来たイルーナを、強く強く抱き留める。

「……よく頑張ったな、兄ちゃんはとっても誇らしいぞ」

「――うん!!頑張った、イルーナ頑張った!!」

途端にヒグ、と表情を歪ませるイルーナの頭を俺は、優しく撫でる。

そのままグリグリと頭を擦り付けるようにして抱き付いていたイルーナだったが、ハッと我に返ったようになり、泣きそうな表情で俺を見上げて懇願する。

「おねがいっ、おにいちゃん。私以外にもいっぱい色んな人が捕まってるの!だから、助けてあげて!!」

「……わかった。それは俺が何とかしよう。だから、イルーナ、お前はリルと一緒に、先に行っててくれるか?」

そう言うとイルーナは、パアッと顔を綻ばせ、大きく頷く。

「うんっ、ありがとおにいちゃん!!リルと一緒に、待ってるからね!!」

「おうよ、任せとけ。……リル、先に行ってろ。街の外だ。後で向かう」

リルは心配そうにこちらを見てから、しかしこくりと首を縦に振り、イルーナを背中に乗っけて走り去って行った。

「お、狼が逃げたぞ!!」

「いい!!そっちは放っておけ!!」

一瞬リルに気を取られた武装集団だったが、すぐに残った俺へと警戒を戻し、武器を向けてくる。

そんな彼らに対して、俺は――。

「――ぶち殺すぞ人間がぁッッ!!」

自分が元人間だということも忘れ、思わずそう、咆哮のような怒鳴り声を上げていた。

俺の怒気に合わせて勝手に全身から魔力が溢れ出し、周囲の建物のガラスが次々に割れる。

激しい破砕音。

ビリビリと震える空気。

同時―― 迸(ほとばし) る濃密な魔力に当てられたのか、俺を取り囲んでいた集団の多くが、バタバタと失神するかのように倒れていく。

イルーナの頬にあった―― 殴られた痕(・・・・・) 。

――ふざけやがって。

あんな幼い子供を殴るような種族が、よくもぬけぬけと生きていられるもんだ。

怒りが視界を真っ赤に染め上げ、そして奥底からなおもふつふつと湧き上がって来る。

俺はギリリと歯を食いしばり、大剣の柄が変形せんばかりに握り締め――。

――と、その時だった。

「――落ち着け、ユキ」

何か暖かいものが、フワリと背中を包み込む。

その温もりに、俺の中で渦巻いていた怒りが雪解けのように溶けていく。

「…………レフィ」

――その正体は、レフィだった。

いつの間にか近くまで来ていたレフィがキュッと俺の背中に腕を回し、背伸びして俺の肩に頭を乗っける。

何故だろうか……嗅ぎ慣れた彼女の香りに、ひどく安心感を覚える。

「落ち着け。もう、目的は達成したじゃろ?イルーナを傷付けた者にもそれ相応の報いを受けさせてやったじゃろ?ならば、帰ろう。このような場所に、もう用は無いのじゃからな」

「…………」

「それに、ユキ、儂はお腹が空いた。これだけの労力を払ったんじゃ、それなりに美味しいもの、当然食わせてくれるんじゃろ?」

聞き心地の良い声でそう言って、ニヤリと笑ったレフィに……俺は大きく深呼吸して、それから苦笑を漏らした。

「……そうだな、じゃあ帰ったら、とっておきを食わせてやる」

「ほう、お主がとっておきと言うってことは、これは相当期待が持てるの。じゃが、つまらんものを食わせたら承知せんぞ」

「バカ言え、俺のとっておきを食ったらお前、もう数日は他の菓子を美味いと思えなくなるぞ」

「な、なにっ……それはちょっと、心しておかんとならんな」

わざといつもの調子で話し掛けて来るレフィに、俺もまた、普段通りを装って答える。

俺の心はいつの間にか――普段の様相を取り戻していた。

「……は、話途中で済まない。貴殿は、魔族の者だな」

そうして軽口を交わしていると、殺気混じりの俺の魔力に当てられてバタバタと倒れていった中で、腰を抜かしてはいたが、一人だけ意識を失わなかった男が話し掛けて来る。

「……何か用か、おっさん」

「じ、自分はレイロー=ルルービアという。一応、この街の領主をさせてもらっている。今までの様子から察するに、貴殿は身内を取り戻しに来たのだろう?」

「そうだ。ウチの妹が攫われたから、迎えに来た」

「そ、そのことに関しては本当に申し訳ない。ど、どうか、謝罪も兼ねて、このまま領主館に来てもらえないだろうか」

……?

どうしてこの男は、俺が人類と敵対している魔族だと気付きながら、わざわざ誘いなんかするんだ?

と思っていたのだが、レイローと名乗ったこの男が、顔面を真っ青にしてチラチラとレフィの方を見ていることに気が付き、もしやと思って『分析』スキルを発動する。

……やっぱりか。

見たところ、この男も分析持ち。つまり――レフィの正体が覇龍であると気付いている。

レフィ、自分が人界じゃ伝説扱いされていると言っていたが……この様子から察するに、本当のことだったらしい。

そりゃ、そんな相手が今ここにいたら、これだけへりくだりもするか。

「どうするんじゃ?ユキ。儂は何でも構わんが」

「……受けよう。実はまだ一つだけ、用事が残ってんだ」

――イルーナのお願い、ちゃんと叶えてやらないとな。