軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

超絶精霊合体! レヴィアタン!

「――よし、いいぞお前ら! そのまま囲んどけ!」

俺の指示に従い、ペットどもが距離を取って周囲を囲む。

俺達の前にいるのは――ゴツくトゲトゲした甲殻を、手甲と脛当てのように身体に纏っている、熊。

コイツの名前は、『パンツァーウルス』。

俺の背丈の二倍程はあるが、魔境の森の魔物はコイツよりデカいヤツはいっぱいいるので、ここだと標準サイズである。

やはり、デカいは強いなのだろう。まあ、小さくて強いもいっぱいいるんだけどね、この森。

西エリアの魔物ではあるが、強さ的に言うと、コイツもまだ下から数えた方が早いレベルの敵だ。ただ、当たり前のように強いので、油断したら普通に死ぬ相手である。

熊君は、周囲の俺のペットどもが気になるらしく、しきりにキョロキョロと自身の周りへ警戒の視線を送っているが……お前の相手は、今回は俺だ。

「ゆっくり休んでいたところを悪いな、熊君。運が悪かったと思って諦めてくれ。――さあ来い、『レヴィアタン』!」

その呼び声に反応して、俺から大量の魔力を受け取った数多の精霊達が一か所に集まり出し――やがて現れたのは、一体の巨大な、魚を思わせるヒレや鱗を持った、『龍』。

いつも俺が使う水龍と同じく、ヘビのような身体、東洋龍の形状をしているが……コイツはそれとは比べ物にならない程大きく、そして水色一色ではなく多彩な色が付いている。

より、龍に近い姿をしていると言えるだろう。

「フーハハハッ!! これが俺の本気、超絶精霊合体『レヴィアタン』だぁ!!」

説明しよう! 『超絶精霊合体』とは、数多の別々の種の精霊が集合し、そこに惜しみない魔王の魔力を注ぐことで、複合属性の強大な力を持つ合体精霊を生み出す技である!!

やはり俺が、『水』との親和性が高いらしく、水の精霊がよく懐いてくれて他の精霊よりも多くの魔力を渡すことが出来たため、基本的な属性は『水』。

だが、火の精霊から始まり、土の精霊、風の精霊、闇の精霊など、数種の精霊達が合体しているために使える魔法が水魔法だけにとどまらず、コイツ一体で数多の魔法を放つことが可能なのだ!!

おかげで、俺の魔力を三分の一も持って行ったけどな!

「クックック、どうだ、見たか獣畜生! この偉大なる姿に恐れをなすがいい――っておわぁ!? テメ、この、口上唱えてる途中で攻撃すんのはズルいぞ!!」

俺がこの合体精霊の使役者であると理解しているらしく、喋っている途中で熊とは思えない機敏な動きで攻撃して来たので、慌てて回避する。

少し前まで俺が立っていた地面が、大きく裂ける。

当然ズルくも何もなく、テンション上がった俺がアホなことを言っている隙に攻撃するのは当たり前と言えば当たり前なのだが……半ば逆切れの様相で声を荒らげた俺は、腐ったデカい兵士を率い、襲い来る蟲どもをビームで一薙ぎにさせた、どこかの国のお姫様のような恰好で合体精霊に指示を出す。

「薙ぎ払え!」

レフィが放つ『龍の咆哮』程の威力は出ないが……レヴィアタンから放たれるのは、地形を変える程の威力を持つブレス。

さながら怪獣映画の悪役怪獣染みた様子で周囲を破壊しながらブレスを連発し、さらにはその巨体で存分に暴れて木々をなぎ倒し、熊野郎に向かって超重量級の攻撃を仕掛ける。

攻撃の連打、連打、連打である。

だが、相手もまた西エリアの魔物。

一発掠った攻撃はあったようで、左腕が吹っ飛んでいるが、実質的なヒットはそれだけ。

なお止まぬ闘志を見せ、レヴィアタンに向かって噛み付いたりぶっとい筋肉の腕で反撃していやがるが―― 俺の存在が(・・・・・) 、 見えて(・・・) いない(・・・) 。

「エンッ!」

『ん!』

ヤツの背後に回り込んだ俺は、エンを頭上からその首目掛け、振り下ろす。

その段階となり、気配でも感じ取ったのかようやく俺の存在に気が付いた熊野郎が、流石の反射神経で回避しようとするが、もう遅い。

刃が皮膚と接触したところで一瞬抵抗を感じたが、しかしそのまま無理やり力を込めることで刃が通り、ブシュ、と血を爆ぜさせながら熊野郎の首を斬り落とす。

そして、首を無くした胴体はズゥン、と地に倒れ――動かなくなった。

「HPも全損……よしよし、いい感じだ」

倒した魔物を前に、俺はエンにこびり付いた血糊を振って落としながら、満足げに一つ頷いた。

――西エリアの魔物っつーのは、伊達じゃない。

幾つもの同時攻撃をしても、その中に 不可視の攻撃(・・・・・・) を混ぜてみても、しっかりと察知するし、全てを避けて反撃さえしてくる。

にもかかわらず、熊野郎があの世行きになる直前まで俺の存在に気が付いていなかったのは――俺が、『隠密』スキルと、つい最近新たに得た『意識誘導』スキルの両方を発動していたためだ。

意識誘導スキルで熊野郎の意識を一瞬でも俺から逸らさせ、その隙に隠密スキルを発動し、忍び寄る。

今回の場合、注目対象となるレヴィアタンがおり、熊野郎の意識の多くがそっちに向いていたため、スキルレベルが『1』の意識誘導スキルでも上手く発動し、俺の存在をヤツの意識からシャットアウトすることに成功したのである。

フフフ、これで俺は、この異世界にて『NINJA』へとより近付いた訳だ。

異世界人どもに、忍術の恐怖を植え付け、「アイエエエエ、ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」と言わせる日も近いだろう……。

「と……あー、まあ、全部が全部上手く行く訳じゃねーか」

俺の総魔力の三分の一を持って行ったレヴィアタンだったが、あの巨体を保つだけでも相当な魔力を消費しているのだろう。

見ると、今の一戦だけで俺の渡した魔力が切れてしまったらしく、合体を維持出来なくなりそれぞれの精霊へと戻ってしまっていた。

強力なのは間違いなさそうだが……ちょっとピーキーだな、この使い方は。派手で好みではあるんだが、燃費が悪過ぎる。

一体相手に戦うならまだしも、魔境の森で連戦することを考えると、使い方は考えなければならないだろう。サイズダウンさせるとかな。

ま、切り札が一つ増えたとして、喜ぶとしよう。

強力な手札であることは間違いないし。

「よし、んじゃ、次の魔物に――って、あ? お前……ちょっと変わったか?」

俺の視線の先にいるのは、我がペットの一匹である、赤い血のような色の巨大蛇、オロチ。

俺の言葉にオロチは、「あ、気付いてなかったんですね」とでも言いたそうな顔で苦笑を浮かべている。

苦笑っつっても、蛇だからほぼ顔の変化はないんだけど。

「――って、オロチお前、 種族進化(・・・・) しとるやんけ!」

今気が付いた。

以前は『ジャイアント・ブラッド・サーペント』という種族だったはずなのだが、今見ると『クリムゾン・イービル・サーペントキング』という種族に変わっている。

種族進化だ。

ステータスを見ても、スキルなどは増えておらずスキルレベルが上がっている程度のようだが、能力値が相当伸びていやがる。

た、確かに、身体にトサカみたいなトゲみたいなのが増えていたし、体色の血のような赤色が何だか濃くなっているような気はしていたのだが……いつの間に。

基本的にリルに任せて放置していたから、気付かなかった。

「クゥ……」

「い、いや、確かにトサカ生えてんのは見えてたけど、その、お洒落でもしたい年頃なのかと……」

リルが「そんな訳ないでしょう……」と言いたげに、ヤレヤレと首を左右に振る。

だ、だって、魔境の森の魔物って割と簡単に擬態したり、姿変化させたり出来るじゃん……だからオロチも、トサカぐらい気合入れれば生やせるのかなって思って……。

「コホン……そうかそうか、いいな、カッコいい姿じゃねーか、オロチ。んで、今んところ……種族進化はコイツだけか」

誤魔化すようにポンポンとオロチの身体を撫でてそう言いながら、寄って来た周囲の別のペット達、ヤタ、ビャク、セイミの方のステータスを確認する。

成長してはいるが、種族進化を果たしているのはオロチだけのようだ。

まあ、オロチはメインタンクとして正面切って戦闘するのが仕事だからな。

他の三匹と比べると、レベルが上がりやすいというのがあるのだろう。

ただ、リル曰く、もう少しで皆種族進化を果たすだろうとのこと。

嬉しいね、その時が来たら四匹とも祝ってやるとしよう。

「いいぞ、その調子でお前ら、魔王に相応しい禍々しくて強い眷属に進化していってくれよ!」

* * *

――それから、しばし魔物狩りに励み、空が暗くなり始めたところで俺は家に帰り……。

「ユキ……お主もいい大人なんじゃから、童女どもと遊んできた訳でもないのに泥だらけで帰ってくるのはどうなんじゃ?」

「はい、ごめんなさい」

泥だらけで我が家まで帰った俺を見て、苦笑しながらそう言うレフィに、大人しく謝る。

少し前から、レフィは普通に家事を手伝うようになっているので、何も言えない俺である。

「……け、けど、ほら、ある程度は仕方ないだろ? 魔境の森の魔物どもとぶっ殺し合いをしてきた結果なんだし……」

「それはわかってはおるんじゃがな。ただ、自身の旦那が帰って来た、という時に、こう……幼子と同じように泥だらけにしている様子を見ると、何とも言えん気分になるんじゃ」

あぁ……まあ、そうかもしれんな。

確かにそれは、何とも言えん気分になりそうだ。

「ま、とりあえずユキ、お主は風呂に入って来い」

「あい」

擬人化し、自分も風呂に連れて行けという意思を言外に示すエンを連れ、着替えを持って旅館の方に向かおうとすると、ふとレフィが再度声を掛けて来る。

「……そうじゃ、今日は儂がお主の背中を流してやろうか」

「えっ、な、何だよ、急に」

若干狼狽えながら、そう言葉を返す。

コイツと一緒に風呂に入るのは、ままあることではあるのだが……こんなことを言い出したのは初めてだ。

「いや何、晩飯までには少し時間があるようなのでな。それに、多少疲れておるようじゃし、労ってやろうかと思っての」

「そうか、ありがとう。本音は?」

「珍しい菓子が食いたい」

うん、いつものお前で安心した。

風呂、出た後でな。