軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話:住人達の服装

――リューは、城の外で洗濯物を干しながら、少し呆れた様子で口を開いた。

「それにしてもご主人……ホントにいっつも同じ服ばっか着てるっすねぇ」

こうして干しているとよくわかるが、ユキの洗濯物はそのほとんどが『ジーンズ』と言うらしい厚手のズボンと、シャツである。

他の服は全くない。

違いと言えば、シャツに柄があるかないかぐらいだ。

「い、いや、それを言ったらお前もそうだろ。ずっとメイド服じゃん」

隣で干すのを手伝っている彼女の主人が、言い訳がましくそう言う。

「これは仕事着っすから。同じなのは当たり前っす」

「……じゃあ、あれだ。これも作業着で似たようなもんだから、問題ないな! ほら俺、毎日色々武器錬成で作ってるし、魔物狩りもしてるし!」

……確かにこの服装は動きやすく、そして汚しても構わないものだろうし、作業着として適してはいるのだろう。

「でもご主人、ウチ、せめて魔境の森の方に出て行く時は、もうちょっと重装備して欲しいと思うんすけど。普段着と全く変わらない恰好で外出て行くじゃないっすか」

「お、何だ、心配してくれてんのか?」

「そりゃ心配するっすよ。未来の旦那さんなんすから」

「おっ、おう……そうはっきり言われると、ちょっと照れるな……」

恥ずかしげにポリポリと頬を掻きながら、彼は言葉を続ける。

「あー……前は防具類を試したこともあったんだけどな。魔境の森じゃあ、生半可な防具は一撃でぶっ壊されるもんでよ。途中から意味ないって悟って着なくなったんだ。重い鎧着てたら、素人の俺じゃロクに動けねーし」

「ネルみたいな、 軽鎧(けいがい) とかはどうなんすか?」

「軽鎧も使ったことあるんだけど、相当良いヤツでもすーぐぶっ壊されたからダメだな。……と言っても、一番は趣味じゃないってのが理由なんだが。この身体、龍族の攻撃でも五体が吹っ飛ばなかったからよ。噛み千切られはしたけど。だから、そこまで防具に気を遣わなくても……っていうのが正直なところだ」

「そ、そりゃあ確かに、結構な説得力っすね」

「だろ?」

自身の主人の、ちょっとおかしな防御力に、苦笑を浮かべるリュー。

「それにほら、レフィなんて毎日全く同じワンピースだろ? それに比べたら、日によってジーンズの色とかTシャツの柄とか違う俺の方が、まだマシなはずだ」

「いや、そんな低レベルのところで争われても困るんすけど」

確かに、この洗濯物群の中にあるリューのもう一人の主人の服は、全く同じものばかりではあるのだが。

元々、彼女は服なんて着る種族ではないためか、お洒落などというものには毛程も興味がないらしく、「着やすく脱ぎやすい」という理由からワンピースを愛用している。

彼女の素材が相当いいのは間違いないので、リューとしては勿体ない、と思うばかりである。

「全く、二人ともそういうところは揃って面倒くさがりなんすから……イルーナちゃん達の方がまだお洒落してるっすよ?」

「そりゃあ、女の子だからな。お洒落したいだろうさ」

イルーナとエンの服も、この洗濯物の中に多くある。

イルーナは、レフィとお揃いのワンピースを着ていることも多いが、動きやすさを重視して短パンやズボンなどもよく履いている。

活発に遊ぶ彼女には、よく似合っていると言えるだろう。

エンの服は、基本的に全て民族衣装だ。どこのものかは知らないのだが、独特の色合いと造りをしており、異国風の顔立ちをしている彼女には妙にしっくり来る服である。

ちなみに、彼女が擬人化状態で服を着て、一度剣に戻っても、服だけがその場に取り残される、なんてこともなく、再度擬人化した時には同じ服を着ている。中々に不思議現象だ。

シィに関してはスライムであるため、好きな形状に身体を変化させることが可能なので、彼女の服はない。

一度イルーナの服を着ていたこともあったのだが、どうもあんまり気に入らなかったらしく、それ以来着ているのを見たことがない。

肌から直接栄養を得たり呼吸したりしているらしい彼女には、そうやって肌を覆うものは好きになれないのかもしれない。

なので、彼女の服は『服の形をした肉体の一部』、というのが正しいのだが。

この洗濯物の中で、一番面白いのが『人形』か。

これはレイス娘達の憑依先であるため、汚れると定期的に洗濯するのだ。

彼女らの憑依先の人形は数個あるのだが、誰がどの人形に憑依するのかは決まっているらしく、彼女らがそれと決めたもの以外に憑依している様子は見たことがない。

何か、それぞれこだわりがあるのだろう。

「服と言えば、そういやレイラがメイド服以外の服を着ているのは見たことがないな。パジャマぐらいか。お前は外遊びに行く時とか結構別の服着てるけど」

「あぁ……あの子も大分、ご主人とレフィ様寄りで、服には無頓着っすからねぇ。ここに来る前なんかも、ずっと麻ズボンに麻のシャツだったそうっすし。むしろ、メイド服という仕事着が出来て、楽で喜んでるんじゃないっすか?」

「……あり得るな。アイツ、根っからの学者肌だもんなぁ。好奇心が刺激されなきゃ、大概のことはスルーだろうし」

「あの子、そういうところあるっすもんねぇ」

揃って苦笑を浮かべる、リューとユキ。

「レイラ、付き合いが浅いと完璧超人に見えるけど、結構隙があるよな」

「朝とか何気に弱いっすもんね。寝起きとか、ボーっとしてて可愛いっすよ」

「そりゃあ、ちょっと見てみたいな」

笑いながらユキは、手際良く洗濯物を干していく。

ちなみに、ユキが洗濯物を干すことに関しては、女性陣は特に何も思っていない。

ユキ自身も、ダンジョンの住人達のことはもはや身内であると認識しているので、誰かの下着を干そうが、全く何も感じずに当たり前のように干している。

それはそれで、どうなのかと女性陣が思っていることを、彼は知らない。

「とすると……ここの住人だと、一番お洒落なのはやっぱりネルっすかね」

あの少女は、細かいところに気を遣う性格だからか、服装にも気を遣っているのがよくわかる。

ここにある洗濯物も、色合いや組み合わせを考えて着ているのだろうということがパッと見ただけでわかるものばかりで、彼女のお洒落の具合が窺える。

「女子力高いもんな、ネル。最近わかったんだが、お嬢様度もかなり高いぞ、アイツ」

ユキの言葉に、リューは納得した様子で言葉を続ける。

「あぁ……確かにそんな感じっすね。やっぱり勇者だから、そういうところもしっかり教育されてるんすかね」

「お偉いさんとも会うって言ってたし、そうなんだろうな。というか、前にそうだっつってた。よくやるもんだぜ」

肩を竦めてそう言うユキに、リューはくすくすと笑う。

「フフ、ご主人、束縛されるの嫌いっすもんね。もしご主人が勇者になったら、すーぐ逃げ出して、好き勝手に暴れるんじゃないっすか?」

「おう、よくわかってるじゃねーか。俺の適正職業は魔王だからな! 勇者なんてほとほと似合わん」

「それはそれで面白いかもしれないっすよ? ご主人が勇者なら、ネルがプリースト、レイラが賢者で、ウチは戦士辺りっすか。イルーナちゃん達は、ウチらの拠点の孤児院に住む子供らっす。……レフィ様が思いつかないっすね」

「……レフィは、敵側のラスボスだな。けど、昼寝してるところに俺達に侵入されて、んで菓子に釣られて仲間入りするんだ」

「あぁ……今すんごい簡単に想像出来たっす」

ぐーたらな龍の少女のその姿を想像し、互いに笑う二人。

そして彼らは、雑談を交わしながら洗濯物を干すのを終えると、空になった洗濯かごを持ち、居間である真・玉座の間に並んで戻って行った――。