軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔界の王《2》

「……象徴?」

「うん、そう。もっと言うと、こっち側の『力』の象徴。僕の側にも、これだけ強い子がいるんだぞ、っていうね。これは、他種族の味方してくれている子達には頼めないからさ。魔族であり、かつ強大な力を持っている子に、旗印となってもらう必要がある」

ふーん……なるほど。

「つまりそれは、俺に『囮』となれ、ってことだな?」

「うん、そうだよ」

うわ……コイツ、あっさり頷きやがった。

「こっちにもそれ相応の実力者がいるということが伝われば、向こうも警戒して、動きを鈍らせることが出来るからね。向こうの動きが遅れれば遅れるだけ、僕の取れる策も増える。加えて、君に注目を集めることが出来ればそれだけ動向を予測しやすくなり、相手の動きを制限することも可能になる」

「まあ、そうだろうな」

そうなった場合、突然現れた俺という存在を調べに来るか監視要員を送るかすることは目に見えているので、その動きを逆手に取った手を打つこともコイツだったら可能なのだろう。

「……話はわかった。何をさせたいのかもわかった。――じゃあ、もっと具体的な話をしようか」

そこで俺は、意図して酷薄な笑みを浮かべ、言葉を続ける。

「ぶっちゃけたことを言うとな。俺はアンタらのどっちが勝とうが 知ったこっちゃない(・・・・・・・・・) 。勝手にやって勝手に殺し合ってろってのが正直なところだ。魔界が滅ぼうが、な。なのに、そんな目に見えて危険な役目をさせようってんだから、当然、俺にそれ相応のメリットはもたらしてくれるんだろうな?」

まあ、悪魔族が俺の敵の場合は、コイツと協力しないのだとしても潰しにはいくんだがな。

ただ、それもフードちゃんの 言(げん) から得た情報であるため、鵜呑みにすることは出来ない。

「なっ、貴方はッ――」

「ハロリア、君はもうちょっとだけ黙っていてくれるかい?」

「……ハッ、失礼しました」

魔界の王のにこやかな威圧に、近くで話を聞いていたフードちゃんが、そう言って再び横に控える。

「それは勿論。僕は、同盟者のことはビジネスのパートナーだと思っているからね。同盟とは互いに利益があるからこそ生まれるものなんだよ」

「なら話は早い。で、どうなんだ?俺が協力したい、是非とも協力させてくれ、って言わせるような利益はお前には提示出来るのか?」

「ふふふ、ま、聞いてくれ。まず、情報。君にとっても悪魔族の子達は敵であるはずだからね。その敵に関する情報は、逐次君に届けさせるとしよう」

「おう、まあ、そりゃ当然だな」

同盟を組む訳だし。

俺も、情報を最低限の目的としてこんなところまで来た訳だし。

「そして、次。君が子煩悩で、嫁さんがいるっていう報告は聞いた。そして、魔界の珍しいところにその子達を連れて旅行したいって、一緒にここまで来たメイドちゃん達と話していた、という話も聞いた」

「あぁ、そんな話はしたな」

「だから、僕に協力してくれたら、他種族の自治区などに自由に旅行出来るよう、亜人族や獣人族の皆に話を付けておいてあげるよ。普通の旅人だったら、絶対に入れないような神聖な場所とかも入れるように、ね。偉い子達との顔繋ぎも望むならしよう」

「な、な、なに……ッ!?」

こ、コイツ、いきなりぶっこんで来やがった……ッ!

「当然、魔界における観光案内もしてあげるよ?僕はこれでも一応、先代から任命された魔界の王だからね。そこそこの権力は持っているから、よっぽどのところ以外は入れるようにしてあげる」

クッ……流石、と言ったところか。

俺にクリティカルヒットするポイントをよく理解してやがる。

「……その様子からすると、それ以外にもまだありそうだな?」

「勿論、これだけじゃないよ。君は迷宮の主である魔王なんだろう?それで、迷宮は糧を消費して成長するとかって話だから、何か君の指定する糧となるものを用意しよう。魔族の命、って言われたら、まあちょっと大変だけど、それでも用意してみせるよ?」

「いや、そんな物騒なモンはいらん」

確かに命でもダンジョンは成長するけどさ。

なんかそう言われると、俺がすっごい悪の親玉みたいに聞こえるからやめていただきたい。

「……そうだな……じゃ、金くれ」

「おお!わかりやすくて良い注文だね」

「あ、いや、金っつってもホントの貨幣じゃダメだ。金になりそうな価値のある代物が欲しい」

「わかった。一室を埋め尽くすぐらいの金銀財宝を報酬として用意しておくね。あとは……そうだね、女の子とか」

「それはいらない」

「あれ、そうかい。君は結構好色だって聞いたんだけど」

「おいやめろ。それは誤解だ」

ちょ、ちょっと鼻の下を伸ばしてしまっただけだ。

男だったら、俺じゃなくても皆ああなるって。絶対。

それに、そんなものを貰ってしまっては確実に惨殺死体に転生する未来が待っている。

レフィは、覇龍故か鼻が非常に良いのだ。

仮に隠そうとしても、絶対にバレてしまうだろう。

「じゃあ、女の子の代わりの報酬は、財宝をさらにプラスすることで補うことにしよう。――この辺りでどうかな?」

魔界の王の問い掛けに、俺はしばし黙って思考に耽る。

話としては――まあ、受けてもいい。

俺に、特に不都合がある訳じゃない。

元々悪魔族が敵であるのならば俺はヤツらを潰すつもりだったし、むしろここまでしてくれるのであれば大幅にプラスとなるはずだ。

コイツが腹黒で、約束が履行されるかどうか、ってのも気にならないと言ったらウソになるが……そんなことまで考え出したらキリがないからな。

その時はその時。コイツも敵と仮定して、俺の利益分を無理やり強奪していくだけだ。

……まあ、策略とかが得意そうなコイツとは敵対したくない、というのが正直なところなんだが。

――一番気になるのは、俺が敵の強さと戦力をしっかり把握出来ていないという点だ。

恐らく今の俺のステータスであれば、大抵の相手は余裕で粉砕することが可能だと思うが……敵の中に、龍族までとは言わずとも魔境の森の奥地に棲息する、ヤバい魔物並みの強さや能力を有しているヤツがいる可能性も否定し切れない。

俺が如何に強靭な肉体を持っていようと、いつかのクソ龍を殺した時のように、その気になれば生物は簡単に死んでしまうのだ。

……道中で現れた盗賊どもぐらい、敵が弱ければ話は簡単なんだがな。

この辺りは、しっかりとコイツに情報提供させて、そして物知りなレイラに 適宜(てきぎ) 相談しながら事を進めていくとしようか。

……そうだ、良いこと思い付いた。

王都で使ったピエロ面。アレ、こっちでも使おうか。

王都のピエロ面の正体が俺であると、すでにバレてしまっているのなら意味無いかもしれんが、そうでない場合はある程度敵を翻弄させることが出来るだろう。

ステータスも、早い内に偽装ステータスにしておこう。

偽名は……まあ、前回の『ワイ』と違うものをまた考えておくか。

……いや待て、ピエロ面がバレている可能性があるなら、別の仮面を被ればいいだけか?

けど俺、仮面はアレしかアイテムボックスに入れてないし……。

――よし、武器錬成スキルで作るか。後で材料を貰うとしよう。

フフフ、魔界の暗躍の場には、謎の仮面の男あり、よ。

そして、裏で「あの男はいったい!?」という噂がどんどん広がって行くのだ。

「……そうだ、一つ聞いておきたい。人間の国の、王都アルシルで裏工作をしていたのはお前らじゃないんだな?」

「僕じゃないね。僕の策だったら、まず君にバレることがないから」

にこやかに、そしてごく当たり前のように、魔界の王はそう言った。

彼の自信に、俺は苦笑を溢しながら肩を竦める。

「――ま、いい。わかった。前向きには考えさせてもらうが、一度ウチのメイドさんと相談させてくれ」

「お!そうかい、そう言ってくれるだけで、僕としては勧誘した甲斐があったというものだよ」

そう言って、嬉しそうな笑みを浮かべるフィナル。

「つっても、やっぱり俺が断っても何とかするんじゃないのか?」

「まあ、確かにその時はその時でまた別の策を考えるだけだ。君に協力してもらう以上の面倒は増えただろうけど」

あぁ……俺に協力を頼むのも、幾つも考えている策の一つってことだな。

ま、そりゃそうか。

一つの策だけで全てが上手く行くのであれば、世は事も無し、だろう。

「それじゃあ、返事は明日聞くとしようか。今日は、ゆっくり休んでね。晩ごはんも、魔界で飛び切りの美味しいものを用意しておくから。フフ、これからよろしくね、ユキ君」

「……一つだけ言わせてもらうが、その気持ち悪い笑みをこっちに向けるのやめろ。何か、こう……寒気がする」

「あ、ひどいなぁ。僕はこんなに親愛の情を示しているのに」

「親愛の情とか言うな。せめて友情と言え。そして俺は、お前みたいな腹黒と友情を結ぶつもりはない。あくまで協力者だ」

「わかったわかった、全く、仕方がないなぁ。ユキ君は照屋さんなんだね」

「だからそう言う言動をやめろっつってんだ!」

なんか掘られそうで怖いんだよ!!

――そうして、俺の怒鳴り声を最後に、魔界の王との謁見は、終了した。