軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出立

翌日。

「そんじゃあ、行って来る」

「……行って、来る」

「はーい!いってらっしゃい、おにいちゃん!エンちゃん!」

「いっテらっシャい!」

「ユキ、わかってると思うが――」

「女に 現(うつつ) を抜かして帰りが遅くなるな、だろ?わかってるさ。そのためにレイラも付けたんだろうし」

「レフィ様、しっかりと魔王様のお世話、させていただきますのでご安心くださいー」

レフィに向かってそう言うレイラに、俺は苦笑を浮かべる。

そう、あの後、俺の知らないところで女だけの会議が行われた結果、今回の俺の旅路にレイラが同行することがいつの間にか決定していた。

俺が魔界に行って、他の女に手を出さないかどうかを見張るための、監視要員らしい。

監視要員て……。

それならレフィが来てくれればいいのに、と思ったのだが、やはりレフィは何だか知らないが都合が悪いらしく、ダメだと言われてしまった。

何があるのか気になるのだが、全然教えてくれないんだよな。

監視要員にレイラが選ばれた理由としては、幼女組はやはり少々危険であるため連れて行けないし、リューは俺に懐柔される恐れがあるためだそうだ。

俺としては、レイラのいない残りの面子だけで日々の生活が出来るのか甚だ疑問なのだが……何故か、それよりは俺にレイラを付けた方が安心出来ると、レフィのみならず他の幼女達にも強硬に主張され、そういう結果となった。

……俺、そんなに信用無いのだろうか。解せぬ。

ちなみにエンも一緒に付いて来る訳だが、彼女は基本的に俺の意見に追随するので、これまた丸め込まれる可能性があるとして、監視要員には不適格と判断されている。

「うむ、わかっているならば良い」

「全く、心配性の嫁さんだ。俺はこんなに一途な男なのに!」

「ちょっ、ユキっ、こら!」

俺はレフィをギュッと抱き上げると、彼女を抱いたままその場をくるくると回り出す。

「あっ、おにいちゃん、イルーナも!」

「シィも!」

「ワハハハ、いいぞ!さあ来い!」

俺は次にレフィを置いて寄って来た幼女二人を抱き上げると、同じように勢いを付けてくるくると回り、声は上げなかったが羨ましそうにこちらを見ていたエンもまた抱き上げて、くるくると回る。

そして、そのさらに俺達の周りをくるくる回るのは、見送りに来ていたレイス三人娘達。

自分もくるくるして、周りもくるくるして、ちょっと目が回ってきた。

――と、騒いでいる俺達の隣で、顔を見合わせるレイラとリュー。

「リュー、わかっていますねー?帰って来たら、ちゃんとお仕事が出来ていたかどうか、確認させてもらいますからー」

「う、うっす!任せて欲しいっす!ウチも、いつまでもただ教えられる存在じゃないと証明してみせるっす!」

レイラの迫力のある笑顔に若干気圧されながらも、リューは拳を握ってそう意気込む。

……この二人、同僚として雇ったはずなんだが、もう完全に上下関係が出来上がっているな。

まあ、レイラに頭が上がらないのは俺も一緒なんだけどさ。

「リルとオロチは、すまんが途中まで乗せてってくれ。その後は、お前ら全員にダンジョンの守り、任せたからな。俺がいない間、しっかり頼んだぞ」

幼女達を離し、若干目を回しながら我が家のペット達に声を掛けると、彼らはリルを真ん中にして神妙そうにコクリと頷く。

うむうむ、気合入っているようで何よりだ。

お前達の最初の見せ場だ。頑張ってくれよ。

「……あ、あの、そろそろ、いいでしょうか?」

と、所在なさげにしていたフードちゃんが、おずおずとそう切り出す。

「おう、悪いな。それじゃあ、行こうか、レイラ」

「はい、お伴させていただきますー」

そして俺達は、ダンジョンの面々に見送られながら、草原エリアを出口へと向かって行った――。

* * *

「……行ったか」

彼らの姿が見えなくなったタイミングで、レフィはボソリと呟いた。

「何とかご主人が、レイラが同行することを認めて良かったっすね」

「うむ。彼奴は基本的に、女に甘いからな。女に対して優しくするのは、美徳ではあるが……」

今回、ユキにはこうしてレイラを無理やり連れて行かせたが……別に、ユキを信じていない訳ではない。

彼が、自分のことを……一途に思ってくれていることは。

そのことは、レフィ自身よくわかっているのだが――しかし今回だけは、事情が少し別なのだ。

どうも、ユキと共に話を聞いていたレイラの言うところによると、今回の相手はユキを何としても味方に付けようという意図があるらしい。

そして今回、使者として来た者は魔族のうら若き女で、しかも隠密という調略などを得意とする部隊の者であり、それに対してユキは男で、女に甘い。

つまり――ユキを味方に付けるために手段として、色仕掛けをされる可能性がある訳だ。

男というものは女に迫られたらなかなか拒否はし難いものだし、あの旦那の女に対する甘さが利用される恐れがある。

しきりに迫られ、思わず手を出してしまった、までならばまだ、感情的に多大な忌避感はあるが、レフィもボコボコにするだけで許してやろうと考えている。

だが……性根の善いユキが手を出してしまったことに責任を感じてしまって、相手に良いように使われてしまう可能性が、今回はあるのだ。

それはレフィにとって、ユキが他の女に手を出すことよりもずっと許せないことだった。

ユキ自身には「お主の監視要員じゃ」などと言ったが、実際のところは彼のことを心配してレイラを一緒に連れて行かせたのである。

本当なら、自分が行きたいところなのだが……しかし、今は少し、都合が悪い。

それでも自分一人しかいないのであれば、恐らくは彼に付いて行っただろうが――今の自分には、信頼出来る友人と言える者がいる。

彼女に任せておけば、よっぽどのことが無い限り彼のことは安心だろう。

それに、仮にユキが二人きりになってレイラに手を出してしまったとしても、他の全く知らない女よりは彼女の方がまだ許せる。

……まあ、その場合でもユキの顔の面積が二倍になるぐらいにはしばき倒すだろうが。

「……でもご主人、自分が信じられてないんだって、ちょっと寂しそうな顔してたっすよ?」

「うっ……そ、そうじゃな、帰って来た時に思う存分甘えさせてやれば、機嫌を取れんかの?」

「フフ、それなら大丈夫じゃないっすか?ご主人、レフィ様にぞっこんですし」

リューの言葉に、レフィは少しだけ顔を赤くしながら、やれやれと肩を竦める。

「全く……大きい子供でもあやしとる気分じゃ」

「ま、ご主人ちょっと子供っぽいところあるっすからね。でも、そういうところに惚れちゃったんすよね?」

ニヤニヤ笑いながらそう言うリューに、レフィは赤い顔のままジロリと隣のメイドへと視線を送る。

「……そんなことより!リュー。大丈夫なんじゃろうな?」

「はい、お任せくださいっす!レイラからも色々と教わって、ちゃんとメモも貰って、準備は万端っす!」

「よし!期待しておるからな。――イルーナにシィ、レイスの娘っ子達、お主らも手伝え!」

「わかった、おねえちゃん!わたしも頑張る!」

「シィも、まかセて、おねエちゃン!」

イルーナとシィが気合の入った声を上げ、最近ようやくレフィを怖がらなくなってきたレイス娘達が同じくギュッと拳を握ってやる気を見せる。

そうして彼女達も踵を返し、気合も十分に城の真・玉座の間へと帰って行った。