軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

謁見堂1

「……いってぇ」

いてぇ。マジいてぇ。調子に乗って、捨て台詞なんか吐いてる場合じゃない。脂汗出て来た。

腕に刺さった剣を、一瞬躊躇ってから、ええい一気にやったれ!!と思い切り引き抜く。

ブシュ、と傷口から爆ぜる血液。

「いギッ――ッアァ、クソッタレ!!」

あまりの痛みから思わず悪態を吐き、抜いた剣を投げ捨てる。

ヤバい。泣きそう。

ホントにもう、冗談にならないぐらい、ものすんごい痛い。一言で言って超痛い。

それと、腕の傷程じゃないが、抜き手をやった方の手の指、こっちも痛い。絶対折れてるわ、これ。だって、指の先端が曲がっちゃいけない方向に曲がってるし。

ほぼ無意識の攻撃だったし、実際にトドメを刺せたからよかったんだが……やっぱり素人が慣れないことをやるもんじゃない。

よく漫画で貫手の攻撃をしているヤツらいるけど、アイツら絶対皆指の骨折ってるから。何にもない顔してるけど、アレやせ我慢しているだけだから。

良い子の皆はマネしないように。

俺はアイテムボックスを開くと、腕に剣がぶっ刺さってた方は指先が動かないので、指の骨を折った方の手で虚空の裂け目に腕を突っ込む。

その中から、上級ポーションならぬエリクサーを手のひらで掴むようにして取り出すと、口でキュポンと栓を抜き、まずは剣が刺さった方の腕へと掛けていく。

「ウグッ……」

液体が傷口に触れると同時、思わず口から漏れる苦悶の声。

傷口はシュウゥ、とまるで逆再生の如く塞がっていき、やがて傷など最初からなかったかのように普段の俺の腕が現れる。

次に、治った腕で上級ポーションを掴み、骨折した指先へと掛けると、こちらもまたベギ、メギョ、となんか嫌な音はしたが、数瞬もせずに完全な指へと戻る。

ちょっと前に上級ポーションは使用するのを自重しようと思ったばかりだが……無理だ、これ。こんな便利なもの、自重なんか出来る訳なかろう。

全く、誰だ、そんなバカなことを考えたのは。俺か。

だが、俺は学んだ。こういう便利なものは、使ってこそなのだと。死蔵するなんて勿体無い。他人を憚って使うのを躊躇うなどアホのすることだ。

故に、まともな俺がこれを使うのは仕方のないことなのである。QED。

「いや……それにしても強かったな、コイツ……」

地面に落としていた魔法短銃を腰に戻し、罪焔の柄を握って肩に担いでから、動かなくなった戦闘狂を見下ろして、そう呟く。

さっきの最後の攻撃は、マジで俺も死ぬかと思った。

腕に剣が刺さると同時、何とか腕を少し捻ったことで剣先がずれ、致命傷は免れたが……一歩判断が遅ければ、顔面串刺しは避け得ぬ未来だっただろう。

完全に、ステータス格差で勝ったような感じだ。

身体能力の地力が違い過ぎた。その剣閃は今まで見たことが無い程に鋭かったが、しかし魔王の動体視力のおかげで、どうにか捉え続けることが出来た。

俺よりレベルが大分高いのにもかかわらず、しかしなお依然として俺の方がステータスが高い。

今まで見て来た限りだと、どうやら人間の能力値の上がり幅は高いようだが、それでも人間の中で頂点に近い実力を持つと思われるオリハルコン級冒険者ですら、魔王の俺のステータスに届かない。

――それが、人間とそれ以外の種族の、どうしようもない格差なのだろう。

ただ、仮にオリハルコン級冒険者に束になってかかって来られると……ちょっとヤバいな。簡単に死んじゃう自信がある。

……ダンジョンに戻ったら、ダンジョン防衛計画と魔王の身体強化計画を新たに考えるとしよう。

とりあえずこちらは一段落がつき、さてネル達を追い掛けるか、と意識を切り替えたその時。

――パリン、というガラスが割れるような音が耳に入る。

それとほぼ同時、王城の外のここまで響いて来る喧噪。

音の方向は――上。

「何だ……?」

見上げても、ここからだと何もわからない。

……もしや、先に行ったヤツらが戦闘でもおっぱじめたのだろうか。

城の上、といったら、どうせ偉い人達がいる場所だろうし、彼女らがそっちに向かって、何か起こった可能性は高い。

……まあ、ここにいても意味はないし、さっさと追い掛けよう。

悠長に内部を通っていくのは……ちょっと、面倒臭い。

飛んでくか。

俺はマップを確認し、それから目視でも周囲に自身へと向いている目がないことを確認してから、隠密を発動。

すぐに背中に二対の翼を出現させ、一気に飛び上がる。

全身を包む浮遊感。

一瞬にして遠ざかる地面。

音の発信源に近付いていき、やがて俺の視界に入ったのは――激しい乱戦模様だった。

窓の向こう側で、勇者とカロッタ、並びに救出部隊の面々が国王を守りながら、迫り来る王子派らしい兵士諸君を相手取っている。

その彼我の実力差は圧倒的で、ほぼ鎧袖一触といった様子で兵士諸君をバッタバッタとなぎ倒しているのだが……しかし俺の眼には、その様子は映っていなかった。

――俺が凝視していたのは、その部屋の奥。

少し上段になっているところで、エラそうに立っている、一人の男。

ソイツの服装や、周囲の兵士達がその男を守っている様子を見る限り、あの男が王子なのは間違いないようだが……。

気になったのは、分析スキルで見た、王子のステータス画面だった。

――アイツ、 とっくに(・・・・) 死んどるやんけ(・・・・・・・) !!