作品タイトル不明
第6話 孤食。
ゴーチェ子爵家の当主フィルマンはシャリッ、とリンゴを齧る。
執務室で摂る昼食は、いつもリンゴとパンぐらいだ。忙しい時は朝も夜も似たような物だ。
親が決めた結婚相手の妻との間に一人息子がいるが、珍しくやってきた自分の母親に言葉が遅いと指摘を受けた。執事に言って、教育係を手配させた。
妻は…子供に興味が無いのだろう、一人で実家にしょっちゅう帰っている。
私は、自分の息子と似たような環境で育った。
両親は政略結婚だったのでお互いに興味がなかったようだし、あとつぎが生まれたので、それぞれ好きな人と生きていくことにしたらしい。父は別館に愛人と住み、母はさすがに本宅に恋人を連れ込んだりはしなかったが、ほとんど姿を見なかった。貴族同士の結婚なんて、そんなものなのだろう。
私も特段、自分の妻に興味がなかった。面倒なので、愛人もいない。
シャリッ、
本宅の広いダイニングで一人でご飯を食べるのが嫌だったので、いつの間にか…よほどのことが無ければ、こうしてリンゴを齧っている。
簡単な昼食が済んだあたりで、執事が新しい息子の家庭教師を案内して来た。
「初めまして、ゴーチェ子爵殿。家庭教師協会から参りました、デボラと申します」
家庭教師協会の会員証と推薦状を確認する。特に問題はないようだ。思ったより若い。
黒のワンピースはお仕着せのメイド服のようでもあるが…まあ、いい。
「よろしく頼む。君のことは、執事に案内させよう」
家庭教師は綺麗なお辞儀をして、旅行カバンを持って退出していった。
本来なら…子供の教育など、母親がすることじゃないのか?
そんなことも思ったが…今更妻と話し合いも面倒なので、フィルマンは仕事に戻る。
私も…家庭教師が3人ほどついていたな。
…息子は…何歳になっただろう?
まあ、いい。