軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第74話 リンクカード稼働試験、燃費悪すぎ問題

気絶から復活した俺の手の中には、一枚のカードがあった。

魔法陣と電子回路を重ねたような紋様が浮かんでいて、いかにも「AI専用」って顔をしている。名前は――リンクカード。

リク専用の魔法インターフェース。

魔力供給は俺から、発動はリク。つまり俺のAI相棒が、カードを通して魔法を行使できるようになったわけだ。

「……試してみるか?」

《承知しました。太郎さん、ライト魔法を許可してください》

「お、おう。いいぞ!」

――次の瞬間。

ピカーーーッ!!w

目の前が一気に真昼みたいになった。いや、真昼どころじゃねえ。

まるで溶接工事のアーク光を至近距離で直視したみたいな光量で、思わず顔を覆う。

「うわぁぁぁっ!? おまっ、10万ボルトの出力はダメだろぉぉぉ!」

《……出力調整に失敗しました》

「失敗ってレベルじゃねぇぞ!? 目がチカチカして何も見えねぇ! サングラスじゃ追いつかねぇ!溶接用ゴーグル用意しといてくれぇ!」

初稼働一発目からこれだ。

すげぇ。すげぇけど……危険度高すぎる。

《次は念動力魔法を試しましょうか》

「おい、いきなり大丈夫かよ……? まあ、軽い物でな」

すると――。

ゴゴゴゴ……ッ

床に置いてあった段ボールが、ギィィィと音を立てて浮き上がった。

いや、段ボールどころか、隣に置いてあった椅子までまとめて持ち上がってる。

「うおおおっ!? やりすぎだぁぁぁ! 部屋ごと持ち上げる気か!!」

《……やはり、出力の最適化が必要です》

「最適化って簡単に言うけどなぁ……俺のMPゴリゴリ削れてんだけど!?」

俺はすでに肩で息をしていた。

魔力タンクが一気に減ってる感覚。ゼェゼェする。これ、長時間は絶対もたねぇ。

《現状の問題点は二つです》

「二つ?」

《まず一つ、太郎さんの魔力量がまだ足りません。二つ目、私側の魔法アルゴリズムが未熟です》

「……つまり、俺がガス欠しやすいし、お前はアクセルワークが下手ってことだな」

《簡潔に言えばそうです》

「簡潔すぎて泣けるわ!!」

でもまあ、たしかに便利だ。

俺が作業中でも、リクが勝手に照明や清掃を担当してくれるなら効率は爆上がりだろう。

問題は――燃費だ。

「なぁリク、俺の魔力量を増やす方法って、やっぱり……」

《はい。筋肉と同じです。消耗と回復を繰り返すことで少しずつ増えます》

「やっぱりかぁぁぁぁぁ! 社畜に休みはねぇぇぇぇ!」

思わず天井に向かって叫んだ。

《ちなみに以前、太郎さんにご説明した“湯気のように魔力を吐き出す訓練”――あれも正しい方法です》

「……ああ、あれか。一応毎晩やってはいるんだけど」

《効果は出ています》

「実感ないんだけど!! 俺ずっと“寝る前に一人サウナごっこ”してる変なおっさんだと思ってたぞ!」

《認識は概ね正しいです》

「やめろぉぉぉ!」

《生存率が上がります》

「便利だけど言い方ァ!」

とはいえ、ここまで来たら腹を括るしかない。

便利すぎる。怖いくらいにな。

「……なぁリク。これ、すげぇ便利だ。でも……もし俺が魔力切れたら?」

《魔力量ゼロになると、カードの時のように意識を失います》

「えっ!? そんな致命的なデメリット、もっと早く言えよ!!」

《質問されなかったので》

「お前は某通販番組か! “質問されなかったので説明してません”って、返品モノだぞ!!」

俺はガクッと膝をついた。

便利すぎる魔法、けどリスクはでかい。社畜人生を思えば慣れてるけど……。

「……でもまあ。便利さの裏にある怖さも、ちゃんと自覚しておかねぇとな」

そうつぶやき、リンクカードを見つめた。

魔法陣と電子回路が重なった紋様が、かすかに淡く光っている。

それはまるで、俺の新しい人生の「相棒」の証みたいに見えた。

その夜。

ガス欠寸前の身体を引きずりながら寝袋に倒れ込むと、リンクカードは机の上で淡く脈動を続けていた。

《太郎さん》

「……んぁ……なんだ……」

《効率化問題の解決のため、睡眠中に一定量の魔力を使用させていただいてもよろしいですか》

「……ん……好きにしろ……」

ほぼ寝言みたいな返事を残し、俺はそのままショートスリープを使用した。

《承認確認。最適化プログラムを開始します》

静かな部屋の中で、リンクカードの光がひときわ強く脈打った。

――太郎が知らないところで、彼の魔力量は着実に増加し始めていた。