軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第18話 結界魔法、社畜の防御壁

深夜2時過ぎ。

魔法の練習でペンやスマホを浮かせていた俺は、ようやく一息ついた。

腕を使っていないはずなのに、妙に肩が凝っている。

念動魔法って、地味に疲れるんだな……。

そのまま床に倒れ込んで少し仮眠したが、目を覚ませばもう午前7時。

外は眩しい朝日。

カーテンの隙間から差し込む光を眺めながら、俺は天井に向かってつぶやいた。

「……ってか、暑すぎんだよな最近……」

『はい。この地域の、昨日の最高気温は37.5℃。熱中症警戒アラートが発令されていました』

知ってるよ。朝の時点ですでに現場の鉄骨触ったら“アチッ!”って言っちゃったもん。

あれ、反射的に言っちゃうから恥ずかしいよな。

「リク、なんかこう……エアコン的な、現場でも涼しくなる魔法ってないの?」

『あります』

食い気味に返事された。なんだあるんじゃん。

『厳密には、結界魔法に空調効果を持たせることで、類似効果が期待できます』

「け、結界魔法って、あの、バリアとかの?」

『はい。魔力を面状に展開し、内部を外界から遮断する技術です。物理的防御のほか、魔力や音、温度などの遮断・制御も可能とされます』

……それ、現場で使ったら最強じゃん。

「おれ、ひとりだけ全身快適防護服を着て作業してる現場監督……!」

『その思考、すごくあなたらしいですね』

褒めてないよなそれ。

というわけで、さっそく結界魔法の練習に取りかかった。

イメージは大事。これはもう魔法の鉄則だ。

リクの提案では、「体の周囲数センチに、薄い膜を張る」イメージで魔力を展開する。

空気を包み込むように、自分だけを包むシールドを形成する。

これ、科学的にはいわゆる“断熱材”の発想に近い。

体表から数センチに張り巡らせた魔力の膜が、外気と内気の熱の移動を遮断する。

つまり、外が灼熱でも中は涼しいままを保てるってわけ。

「んー……こう、空気がぬるっと魔力で覆われる感じ……」

『ぬるっと、という表現は誤解を招きますが、おおむね正解です』

膜がうまく張れると、空気がピタッと体にまとわりつくような不思議な感覚になる。

でもこれ、まだ涼しくはない。結界を張っただけ。

「よし、次は……コールド魔法、展開! って思えばいいの?」

体内から魔力を流し、結界の内側だけ冷却するようイメージする。

部屋の空気を冷やすんじゃない、結界の中の空間を冷やす。

「おぉぉ……! ひんやりしてきた……!」

『目標成功率70%に到達。精度は高く、持続時間も十分です』

おれ、今、エアコン装備してる。

しかもどこでも持ち運び可、コードレス、メンテ不要の魔法製エアコン。

「これ、最強じゃない?」

『なお、消費魔力がやや高めです。持続には隠蔽魔法との併用と、魔力操作効率の最適化が必要となります』

まぁ、慣れてきたらセルフヒールと同じで魔力効率上がるんでしょ?

そのへんは問題ない。

しかも結界魔法には、温度制御だけじゃなく防御機能もついてる。

リクの話だと、魔力の込め方次第ではドラゴンのブレスくらいなら防げるレベルの物理防御になるらしい。

「それ、けっこう強くない?」

『魔力出力を強めれば、より強固な結界を形成可能です。ただし、当然消費も上がります』

まぁ、ドラゴンのブレスがどれほどのものかは全くわからないんだけどな。。

要するに、体の周りに魔力でシールドを張って、そこに温度調整をかける。

防御と空調を同時に展開できるってこと。

「外から見えないし……うん、これは……常時展開だな……」

『その場合は隠蔽魔法と組み合わせて、外部感知を遮断する必要があります』

つまり、魔力を見えないように隠しつつ、体表に結界を張って冷却。防御もできる。

出し入れのタイミングさえ誤らなければ、完全にバレずに使えるってことか。

おれ、明日から現場でこっそり快適に生きる……。

ただ、実験もしておかないとな。

さっきリクが言ってた、「ドラゴンブレス程度なら防げる」って話、どれくらいの強度なのか気になる。

ということで、家にあるネジとかを手に持って、わざと落としてみた。

結界を張った状態でネジを落とすと、パスッと膜に当たって下に落ちた。

「うおっ、ホントに弾いた!」

『成功です。膜の反発力が十分機能しています』

よし、次は少し強く。

スマホの充電器を落とす。コロリと結界を抜けた。

「おぉぉ……スマホの重みにはまだ耐えられんか……」

まぁ、そこまで求めてないから大丈夫。ビスや粉塵を防げれば、十分すぎる。

というか、今までそんな防護魔法あるなんて発想すらなかったわ。

いやー、魔法って……すごいな。

「リク、これ明日から実戦投入するぞ」

『承知しました。魔力残量と集中力にはご注意ください』

分かってるよ。魔法を使うときは、こっそり、ひっそり、さりげなく。

見られたらアウト。怪しまれたら終わり。

「ふふ……俺だけ快適な作業空間……! あっつい現場でもぬくぬくの監督……!」

『“ぬくぬく”はコールドではありません』

細けえな。

まぁ、いい。これで俺はひとり、真夏の現場で――

快適無敵な、魔法空間を持つ男になる!