軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第102話 ニワトリ観察から始まる、俺の秘密基地計画

朝、いつもの気配で目を覚ます。

2日間しか家を空けてなかったが、久々の感じがする。

「おはようさん。今日は実験だぞ」

外に出て、コーン缶、炊いた新米のご飯、さらに精米したての生の新米を並べて置いてみる。

どれが好みか、観察してみるつもりだ。

まず勢いよく食べ始めたのは炊いたご飯。相変わらず、すさまじい勢いでつつき、しかも一粒もこぼさない。

次にコーン。――おい、半分以上こぼしてるじゃないか。

最後に生の新米。……これも一粒もこぼさない。

「……どっちだ? 炊いたご飯か? いや新米か? 結局どっちが好きなんだよ……!」

『米を炊くときに、お主が出す水で炊いておろう? それがワシらには栄養になるのじゃ』

不意に、頭に響いたのはカラスの声。珍しく朝から話しかけてきた。

「なるほど……だから炊いたご飯を好むのか。ていうか俺の水ってそんな効果あんのか」

『空気から集めた水は、本来ならただの純水で味気ない。だが、お主の力が馴染んでおるから旨く感じるのじゃ。というかお主の言う魔力自体がワシらにとっての栄養となる。祠への供え物も、それで良い。炊いた米と、酒壺の酒、それと榊の葉も供えてみい』

「榊もか?まぁ魔力が理由なら、ご飯も酒も榊もわかるか。それで、ニワトリがコーンを半分以上こぼすのはなんでだ?後で全部食べてるみたいだけど」

『知らぬ。それと、そのうち白兎が来るやも知れぬ』

「また酒を――」

『呼んだかしら?』

「早すぎるだろ!!」

玄関の横に、真っ白な兎がちょこんと座っていた。

相変わらず、見た目は小動物なのに声は柔らかい女性の念話。

「朝っぱらから来て何してんだ」

『いい匂いに釣られちゃったのよ。ふふっ』

差し出した酒壺の酒を注ぐと、白兎とカラスは並んで口を付ける。

……朝から飲み会が始まってしまった。

「おいおい、俺は飲まないぞ!? 今日は大事な計画があるんだからな!」

『ほう、何をする気だ?』とカラス。

『秘密? 教えてちょうだい』と白兎。

「秘密基地を作る!!」

二羽(?)は声を揃えて笑った。

『子供か』

『かわいいじゃない』

「うるさい! でも、俺にとっては本気なんだよ!」

リクのツッコミが頭に響く。

《太郎さん……やっぱり子供みたいです》

「夢ってのはな、大人になってから作る方がワクワクするんだよ」

そう宣言して、俺はニワトリ・カラス・白兎を尻目に、今日の予定を胸に刻んだ。

「さて……まずは曽祖母の金製品の保管場所、どうするかだな」

曽祖母の遺した金製品。いまだにゴミ捨て魔法の中に入れっぱなしだ。

あんなの、いつまでも適当に放っておける代物じゃない。

《秘密の隠し場所を作るのが理想です。どうせなら広く作って、道具や資材も置けるようにしましょう》

「だよな。……最悪、社宅の偽装がバレても、そこは曽祖母の“魔力鍵”で別系統にすれば隠せるしな」

《はい。まずは場所の選定ですが、地下が適切です》

「B2にするか……いや、駐車スペースの地下に広げた方がいいな。逃走経路も作りやすいし、家が傾く心配も少ない」

イメージするだけで心が躍る。まさか大人になって「秘密基地」なんて口にする日が来るとは。

「で、どうやって掘るかだよな」

ゴミ捨て魔法で土を一気にどかすことはできる。けど――

《土が基盤ですから、強度アップをかけても多少の不安は残ります》

「……つまり、土そのものをいじれるようになれってことか?」

《その通りです。草抜き魔法を応用すれば土魔法に繋げられます》

「それ逆じゃないのか? 普通は土魔法から応用して草抜き魔法になるんだろ?」

《ええ。ですが太郎さんは実践逆流型ですから、問題ありません》

「実践逆流型て……。まぁいいか。よし、練習してみるか」

駐車スペースの地面に立ち、両手を腰に当てる。

「まずは草抜き魔法で感覚を取り戻すか」

足裏から魔力を流し込むと、視界の奥に地下構造が浮かび上がった。

根が黒い線のように張り巡らされ、土の隙間に入り込んでいる。

「……よし。スポポポーンっと」

いつもの感覚で、草がまとめて抜けて宙へ舞う。

地面はすっきり、畑みたいにまっさらだ。

「ふむ。悪くない」

《次はスキャンを重ねましょう。地層や配管の確認を》

「スキャン」

地中に配管や異物がないのを確認しつつ、土の層を意識する。

《では“硬くする”と“柔らかくする”を切り替えて練習してください》

足裏から魔力をぐっと送り込む。

柔らかく……と思うと、地面がふわっと沈み込む。

「おお、砂場みたいだ」

次に硬くするイメージをすると、逆に地面がガチガチに固まる。

拳で叩くと、まるでコンクリートのような反発だ。

「これなら地盤改良までできるな……」

感心していると、白兎の念話がふわりと届いた。

『土はねぇ、人と同じで、緩めすぎても固めすぎても息できなくなるのよ。命が根付くには、ほどよさが大事なの』

「……つまり、土魔法は“呼吸”を合わせるように制御するってことか」

『そうそう。あなた、のみ込み早いわねぇ。さすがこっちで噂になってるだけあるわぁ』

白兎が嬉しそうに笑う気配が伝わってきた。

「……土を動かせるようになったなら、形を作るのもいけるんじゃないか?」

試しに両手を前に突き出し、土をぐっと持ち上げる。

ゆっくりと盛り上がった土が、塊となって宙に浮かんだ。

「よし、まずは――ニワトリ!」

形を整えていくと、ぎこちないけど鶏冠と羽っぽいシルエットができあがる。

……が、口ばしが大きすぎて、まるで怪獣。

「ちょっと怖ぇな……」

隣にはカラスを造形。黒い羽根をイメージして固めると、こっちは逆に妙にリアルすぎて不気味。

「……いやいや、夜中に見たら絶対ホラーだろ」

最後に白兎を、と作ってみる。

丸っこい体に長い耳を立てると――なぜか安定感があり、ちょこんと座った姿がそれっぽい。

『まぁ、可愛いじゃないの』

白兎の念話が響き、目の前の土ウサギが耳をピクンと動かした気がして思わず身をのけぞる。

「お、おい……動いてないよな?」

『ふふっ、愛情を込めれば形も生き生きするのよ』

「……いや、遊んでる場合じゃないだろ俺!」

土の人形たちを慌てて崩しながら、顔が熱くなるのを感じた。

「……ま、まぁこれなら安全に基地が作れそうだ」

《土魔法、習得ですね。駐車スペースの地盤も固めましたので、車を停めても問題ありません》

「よしっ! これで“秘密基地計画”スタートだ!」

……完全に小学生のノリだが、胸の高鳴りは抑えられなかった。