軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

92.精霊の失敗

屋敷の中、外が嵐になっている中、俺はオノドリムと向き合っていた。

リビングの中、テーブルを挟んで、ソファーに座った状態で向き合っていた。

テーブルには紅茶とケーキ、そして様々なスイーツ類が出されている。

俺は食べる気はしないが、オノドリムはこういうのを お供え(、、、) すると機嫌がよくなるからメイドさんに出してもらった。

そんな状態で、俺は空の上で見てきたこと、 たどりついた(、、、、、、) 事をオノドリム話した。

「魔力をオーバードライブ……そんな事ができたんだ」

「うん、わかるよ。僕も自分の推察だけど、最初は信じられなかったしね」

俺はそういい、微苦笑をオノドリムに向けた。

「でもそんな感じなんだ――ほら」

俺はそういい、手をかざした。

両手を上向きにして、オノドリムに向かって差し出すような形にした。

そして左手から煙のような魔力を放出しつつ、右手でそれを掴むようなイメージで添えて、更に魔力を込めた。

すると、煙のような魔力が溶けるように消えてなくなった。

「こんな感じなんだ」

「おー、なんかすっごい面白いね、これ。はじめて見たけど……あっ、もどった」

オーバードライブで「溶かした」魔力は、オーバードライブに使った魔力をぎりぎりにしたから、すぐにまたみえるようになった。

湯を沸かした水分を飛ばしたけど、部屋のなかが寒いもんで窓の所ですぐに水がついた、そんなイメージの光景になった。

「これを夜の太陽に向かって飛ばしてみたいんだ」

「それはいいんだけど、足りるの、こんなんで? 全然少ないじゃん」

「うん、だからオノドリムに相談にきたんだ」

「ふえ?」

「オノドリムが扱える大地の魔力を貸してほしいんだ」

「……おおっ」

一瞬きょとんとした後、オノドリムはポン、と手を叩いて得心顔になった。

「なるほど、そういうことなんだね」

「うん、僕の魔力じゃ間違いなく足りない。神ボディの魔力でもたぶんまだ足りないとおもうんだ。何しろ相手は太陽だからね」

「そかそか。うん、いいよ」

「本当に!?」

「他ならぬ君の頼みだからね。あたし、なんでもしちゃう」

オノドリムは満面の笑みを浮かべながら、ウインクを飛ばしてきた。

「ありがとう」

「あれ? でもさあ、前にも契約してたじゃん。あれで君は大地の魔力を使える様になってるよね」

「それはそうなんだけど」

俺は微苦笑した。

オノドリムと知り合ってすぐに、彼女と契約をした。

大地の精霊との契約で、俺は大地の魔力を使える様になった。

「でも、今までは使っても『僕がもってる分と同じ量』なわけじゃない」

「あー……そっか、 普通(、、) に使ったらそうだもんね」

「そう、でも今回はすごく使うから」

俺がいうと、オノドリムは頷き、また納得した。

人間には黒の魔力しかない。

しかし魔法を使うには白と黒の魔力が要るから、人間が魔法を使う時っていうのは、ものすごく雑にいって半分の魔力を白の魔力に変換してから、それを混ぜて魔法を使う。

魔力の変換は個人個人の技術と素質も絡んでるけど、「理論上」魔力の半分 分(、) の魔法しか使えない。

それを俺はオノドリムと契約をした、契約をして、大地の魔力を代わりに使える様にしてもらった。

俺が人間として本来持っている黒の魔力にあわせて、同じ分量の白の魔力をもらって、魔法を使う。

それはつまり、俺がどう使っても「人間一人分」の魔力しか使わないという契約内容だ。

大地が持つ力からすれば、人間一人分の魔力なんてたかが知れてるから、俺は今までなんの遠慮もなく使わせてもらっていた。

けど、今回は違う。

人間一人分じゃ到底すまない。

だからオノドリムに許可をもらいに来たのだ。

「君、律儀だね」

「そんな事はないよ。力を貸してもらってるんだから当たり前の事だよ」

「ふふ、そんな律儀な君に力をかしたげる。いくらでも使っていいようにしてあげるよ」

「本当に! ありがとう」早速だけど、今からでもいいかな」

「今から? あたしはいいけど、ずいぶんと急なんだね」

「思うところがあってさ」

俺は窓の方に目を向けて、ガラスの向こうにある空に目を向けた。

「いまやらないと、丸一日先延ばししちゃうんだ」

「ふーん、よく分かんないけど、いいよ」

「ありがとう」

俺はすっくと立ち上がった、オノドリムも同じように立ち上がった。

「えっと、何をしたらいいのかな。前回はほっぺにキスをしたけど」

「うーん」

オノドリムは頬に指を当てて、斜め上に視線をむける思案顔をした。

「そうだねえ、今回も――ちゅっ」

そしてほとんど迷うことなく、身を屈みながら俺の頬に手を添えて、ちゅっ、と頬にキスをしてきた。

「あっ……」

俺は頬に手を当てた。

前回とほぼ同じ形だった。

「これでいいの?」

「うん、追加でってことで。これで一晩中いくら使ってもいいようにしたげた。使い放題だよ」

オノドリムは満面の笑みを浮かべながらいった。

使い放題と言う言葉にちょっと苦笑いした。

「でも、これでいいんだね」

「結局キスだからね」

「まあそっか」

「一晩だけだったからほっぺにしたよ。何日も、っていうんだったら唇にしなきゃだったけど」

あっけらかんと、当たり前のように言い放ったオノドリム。

そういうものなのか、と妙に納得する俺。

だれがはじめたのか、本当にそれしかなかったのか。

こういった「契約」ので、形式的にやることはほとんどがキスかセックスかだ。

ほとんどの本にはそう書かれている。

過去のエピソードとしても、実際に行うノウハウとしても。

ほとんどの本にはそう書かれていた事を俺は思いだした。

そのキスにも場所によって違いが出るのかとちょっと知識欲が首をもたげたが。

「おっといけない」

「どうしたの?」

「ううん、早く行かなきゃっておもって」

「どしたの、顔、赤いよ。もしかして精霊との契約のやり方をしらなかった?」

オノドリムが本当になんともおもっていないように、あっけらかんとしていたので、俺も急速に落ち着いていった。

「ううん、そんな事はないよ。ただいきなりだったからそれで驚いただけ」

「そかそか、じゃあいっといで」

オノドリムはニコッと笑いながら手をふった。

「ありがとう! いってくる」

「うん、いってらっしゃーい」

オノドリムが手をふって送り出してくれたので、俺はテーブルの上に置かれているティーカップ、紅茶の中に飛び込んで水間ワープで移動した。

「失敗しちゃったな」

マテオがいなくなったあと、部屋のなかで一人っきりになったオノドリムはパチーンと指を鳴らした。

「せっかくのチャンスだし、関係なく唇にちゅーしとけばよかったなあ」

オノドリムは明るいまま残念がった。

彼女はマテオが問題を解決すると信じてうたがわないでいる。

だからこそ、人間の領主が全員戦々恐々としているこんな状況下であっても、マテオにキスしそびれた、という事で残念がる余裕があるのだった。