軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

187.海の封印

「これでは……だれも住んではいないだろうな」

「完全に廃墟だもんね」

「支配されずに破壊されたのは、結局の所ヤツらが海では生きられないということなのか……」

「みた感じからして海の生き物じゃなかったもんね」

イシュタルとオノドリムが口々に感想を言い合った。

「なんにせよ、だ。ここにいても仕方がないだろう」

「そうだね。マテオ、早くここから離れよう」

「ううん、大丈夫」

「え?」

こんな廃墟をほっといて海神ボディのあるところにいこう、とオノドリムは本来の目的に戻るように提案してきた。

それを俺が即否定したもんだから彼女はかなり驚いた様子だ。

「大丈夫って?」

「行こう」

俺はそういって、海神の力で二人を包んだまま下降していった。

完全に廃墟になっている人魚達の城にむかって一直線に降りていく。

廃墟の上部――がれきの山の頂点あたりまでくると、俺の中の力ががれきと反応した。

がれきはまるで意志をもった何かのように左右に分かれ、俺達にさらなる下降を可能にする道を空けてくれた。

「これは――っ。マテオがやったのか?」

「ううん。僕の力と反応してるけど、僕の意志じゃないよ」

「ならば?」

「……そっか、封印なんだ」

オノドリムは目を細めて、がれきがどけて出来た道――井戸のような道をじっと見つめたあとハッとなった。

「封印?」

「地上の人間でもたまにやる人いるけど、コテンパンにやられる前に遺跡とかそういうのにあれこれ封印して、希望とか力とか宝物とかいろんなのを後世に残してたりするんだよね」

「……ああ」

オノドリムの言葉に、イシュタルは大きく頷き納得した。

俺は同じ気持ちだ。

イシュタルと爺さんが用意してくれた本の山の中には、たまにそういう事が書かれていることがある。

今オノドリムが行ったような事とほとんど同じことがちょこちょこあったりするのだ。

それと同じことを人魚達がやったって訳か。

「マテオがいつの日かかたきを討ってくれるようにって願ったんじゃないかな」

「残念だけどそれはないよ」

「えー、あるって。あの人魚たちならそう思うよ」

「うん、彼女達ならきっとそう。でも」

「でも?」

「これを封印したのは過去の人魚たち。ノワールとブランが戻っていった時代の人魚達。その時代だとまだ僕の事を知らないはずなんだ。うまれてないんだから」

「……あ」

「たしかに、言われてみればそうだな」

「そっか……そうだよね……」

「マテオはすごいな、知ったばかりの時間移動? による因果関係をはっきりと理解している」

「本当だよね。あたしはもう頭がこんがらがっちゃってるよ」

二人は口々にそういった。

その気持ちはわかる。

俺もまだ頭が混乱していて、気を抜いたらオノドリムのいうように頭がこんがらがってしまいそうだ。

この後過去に本当にもどれるのならばよりいっそ時間移動とそのまわりの考え方をはっきり持っておかなきゃと、俺は気を引き締めなおした。

そうやって下降を続けていくと――瞬間。

目の前の光景がガラッと変わって、開けた場所にでた。

「こ、これは!?」

「何が起きたの?」

「水間ワープだよ」

うろたえる二人に対し、俺は落ち着いていた。

景色が変わった瞬間の感覚はよく知っているものだったからうろたえはしなかった。

「水間ワープ?」

「うん、降りてる途中にしかけられてたんだ」

「そうなのか……」

「どうやらまだ海の中みたいだけど……」

俺達はまわりを見回した。

水間ワープで飛んだ先はまだ海の中だった。

毒々しくて薄暗い海の中。

あの感じ、ここにきっと何かがあるだろうと、俺は集中してまわりを見回した。

「あっ、ねえマテオあれ見て!」

オノドリムが大声をあげた。

彼女は俺達の背後を向いていた。

視線を負っていくと、そこに一つの玉があった。

二人を連れて、海中を 飛んで(、、、) 行く。

玉の前にやってきた。

海中に漂うようにして浮いているそれは、こぶし大の水色の玉だった。

毒々しい海になっているからこそより目立ってしまう、水色の玉。

「これなんだろ……すっごい力を感じるんだけど」

「……たぶん」

「分かるのマテオ?」

「うん」

俺は頷き、手をのばしてたまに触れた。

金属のような感触で、とても硬そうな感触だ。

「もしや……それが封印か!?」

イシュタルはハッとした。

そんなイシュタルに俺は微笑んで、頷いた。

「多分そうだと思う」

「うん……そうだね。これめちゃくちゃすっごい封印。ものすごい魔法を叩きつけても壊れなさそう」

「そうじゃなきゃ封印のいみないもんね」

「だね」

「ではどうするのだ?」

「うん……たぶん」

俺はたまに振れたまま、意識を集中する。

体の中にのこった海の力、最後の海の力を振り絞ってそそぐ。

オーバードライブを掛けるような感覚で玉に海の力を注いだ。

すると――海の力を受けた玉がひかって、弾けた。

溢れる光に俺もイシュタルもオノドリムも目をおおった。

たっぷり十秒くらい光が溢れた後、おそるおそる、しかし確信をもってめを空ける。

玉の封印を解いたそこには、海神のボディが海中に物静かに佇んでいた。