軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

162.簡単に分かる事

「何かをテストするときにあれもこれも要素を足すのは愚か者のやることだ。知りたい事を絞る、結果の変動はそれとだけ繋がるようにする。君は貴族のくせに中々賢いな」

更にダガー先生に褒められて、ますます照れてしまった。

「貴族などやめて医者にならないか?」

「えっと……ごめんなさい」

「そうか。気が変わったらいつでも言ってくれ」

「わかった、ありがとう」

いきなりの事だったからさそいに乗るわけには行かなかったけど、ダガー先生に認められた事自体は普通に嬉しかった。

俺はお礼を言った後、浮き草の結果を待つため、ダガー先生に一日泊まっていくように誘って、ダガー先生はそれを受け入れた。

次の日。

丸一日たった後、俺は再びダガー先生と庭の池にやってきた。

屋敷から池まで、連れだってやってきた俺とダガー先生の目の前に現われたのは――池びっしりに増えた浮き草だった。

「しっかり増えたよ、ダガー先生!」

「うむ」

ダガー先生は池の畔に近づき、しゃがんで、浮き草を一つ手に取った。

昨日彼女が例えたように、釣りに使うウキのような浮き草は、池の水が見えないくらいびっしりに増えていても、簡単に水中から一株だけ取り上げれる作りだった。

ダガー先生はその浮き草をしばらくじっと見つめてから、立ち上がって俺の方をむいた。

「これで倍、ということで間違いないね」

「うん! 間違いないよ。2倍の早さはさすがに間違えようがないもの」

「たしかにそうだ」

ダガー先生は頷き、納得した。

そして浮き草をそのまま池の中に無造作に放り投げた。

「もしも、本当に昼夜で成長し続けるのなら……」

「え? 浮き草で確認したじゃない?」

「そうだが、それは厳密にいって確認出来たのは一日の生育速度が二倍になることだ。昼間が二倍に成長してよるは今まで通り――でもこの結果は成り立つのだよ」

「それなら大丈夫だよ、ダガー先生」

「うむ? どういうことだ?」

ダガー先生は訝しむ表情で俺をみた。

「念の為にメイドさんによるも時々確認しにきてって頼んでたんだ」

「へえ? つまり夜でも成長していたのが確認取れている、と?」

「うん! そうだよ」

「そうか、やるな君は」

「ありがとう」

「ならば……つぎは あれ(、、) を確認してみたいな」

「あれって?」

首をかしげ、ダガー先生に聞く。

「マンドラゴラだよ」

「マンドラゴラって……あの、人の形をした植物の事?」

「その認識で合っている」

ダガー先生はそういいってから、にやり、と珍しく――いや初めてみるかもしれない、いたずらっぽい笑みを向けてきた。

「マンドラゴラについて、君はどこまで知っている?」

「えっと……人間の形をした植物で、遠目には二股に分かれた大根みたいな感じの見た目。土から抜いた瞬間にものすごい悲鳴をあげて、その悲鳴は気が弱い人間だと聞いたショックで死んでしまう。そして悲鳴で相手がすくんでいる内に逃げてしまう」

「へえ、よく知っているじゃないか」

「あっ、それと、確か乙女の生き血をかけると動けなくなっちゃう、だよね」

「それも知っているのか。君はすごいな、その歳で中々の博識っぶりだ」

「えへへ……」

ダガー先生に褒められて、子供らしく嬉しがった。

俺も人並みに褒められるのは嬉しいけど、褒められる理由の中でも「博識」はかなり上位になる嬉しさだ。

博識――つまり知識が多いということ。

それは転生して、爺さんに拾われたから、大量に本を読んだからだ。

知識は財産であり武器である。

転生した後に頑張って身についたそれを褒められる事はかなり嬉しいことだった。

「そんな君にもっと基本的な事を聞こう」

「なに?」

「マンドラゴラは植物、そうだな?」

「うん、そうみたいだね」

「ならばマンドラゴラの種は? そして生育方法は? 花を咲かすのか果実をつけるのか?」

「……あれ?」

「植物ならばこれらの事にもなにかがあるはずだが、さあどうだ?」

「えっと……」

俺は頭をひねった。

爺さんとイシュタルが競い合って、大量に送ってくれた本で得た知識からダガー先生が聞いた事を探そうとした。

が、見つからなかった。

超希少な、特殊な植物であるマンドラゴラ。

人型で抜けば悲鳴をあげて逃げる――のは、複数の本に書かれていて、ある意味では常識っぽい感じの知識だったけど、言われてみればそれ以外の植物らしい情報はどこにもなかった。

「ごめんなさい……なんかしらないみたい」

「ふっ、そんなに落ち込まなくてもいい」

「え?」

「すこし意地悪だった。種のことは今でも解明されていないことだ」

「そうなの?」

「そういう動植物もたまにある」

「うなぎみたいな感じ?」

「うなぎがどうなのかはしらないが、そういうことだ」

頷くダガー先生。

そして俺はなるほどと思った。

「忘れてくれ、ただの意地悪だ。種は分からないが、成長の仕方は最近解明されたばかりだ。君がやってくれた昼夜の――」

「植物の事だったらすぐに分かると思うよ?」

「――なに!?」

マンドラゴラの何かを言いかけたダガー先生は、俺の言葉に思いっきり驚いて、目をカッと見開いた。

「どういう事だ? マンドラゴラの種のことならすぐに分かるというのは? あれは長い間、未だにずっと謎のままなのだよ?」

「そうなんだけど……でも、植物なんだよね」

「ああ、そうだ」

「植物で、土地から生えてくるものだったら――」

「もちろん分かるよ」

オノドリムはあっけらかんに答えて、ダガー先生はポカーンとしたのだった。