軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130.内緒話

夕日が差込む部屋の中。

その部屋の隅っこにエヴァとオフィーリアはいた。

直前まで二人ではしゃいでいた二人だが、今はうってかわって、仲良く寝息を立てている。

エヴァはさながら子犬のように丸まって寝ていて、オフィーリアはそのエヴァの上にのっかって、大の字で包み込むように寝ている。

はしゃぎつかれたのか二人は幸せそうに寝ていた。

が、身を寄せ合うだけでは限度があるのか、夕日が落ちていくのとともに室温が下がっていったからか、二人は身を寄せ合ったまま、どちらからともなくブルッと身を震わせた。

「風邪引いちゃうかな……ローラさん」

……。

「ローラさん?」

ローラの名前を立て続けに二回呼んだが、反応はなかった。

「どうしたんだろローラさん。誰かいる?」

「お呼びでしょうかご主人様」

「わっ」

今度はうってかわって、呼んだ瞬間に目の前にノワールが出現した。

まさに神出鬼没、そんな言葉がぴったりくるくらいいきなり現われた。

「近くにいたの?」

「違うところで仕事をさせて頂いていたのですが、ご主人様の呼ぶ声が聞こえましたので」

「聞こえるものなの? だってそれって結構離れた所にいたってことだよね」

「執事のたしなみでございます」

ノワールはしれっと言い放った。

執事のたしなみ程度では絶対に済まない、なんかすごい能力だと思ったが、突っ込んでも仕方がないと思った。

「そうだ。二人になんかかけるものを持ってきてあげて。大丈夫だとおもうけど、風邪をひいちゃったらかわいそうだから」

「かしこまりました」

ノワールはそう言って、部屋から出て行こうとした。

「――あっ、ちょっと待って」

俺はノワールを呼び止めた。

何かシーツなり掛けるものを取りに行こうとした瞬間に呼び止められたが、ノワールは一切疑問におもっていないような顔で、ただ立ち止まって視線を向けてきた。

視線を向けたまま、俺の次の言葉を待つ。

俺は首を傾け、「誰もいない方向」に耳を向けた。

「もうきたんだ――ノワール、ついでにヘカテーがついたから、ここにいるって案内してあげて」

「ヘカテー様ですか?」

「うん。祈りで来てる事を伝えてきたけど、こっちからのは伝わらないから」

「さようでございましたか。かしこまりました、お迎えに参ります」

ノワールはそう言って、、今度こそ部屋から出て行った。

しばらくして、ヘカテーが現われた。

317歳の大聖女、今は年頃の少女の姿になっているヘカテー。

彼女は部屋に入ってくるなり、俺に向かってルイザン教式の作法で一礼した。

「そんなかしこまったのはいいよ。それよりもなにかよう?」

「はい――」

ヘカテーは頷きつつ、ちらっと背後をみた。

そこにはノワールの姿があり、彼は白いシーツを持ったまま部屋に入ってきて、それを隅っこで寝ているエヴァとオフィーリアにかけてあげた。

「大丈夫だよ、話して」

「はい。ブルーゴブリンに使用可能な品物列挙が完了いたしました。現在分類および格付けを行っています」

「あはは……ヘカテーも?」

「神のお力になれる数少ないチャンス。ルイザン教総出で各地の宝物庫を洗い直しました」

「各地の?」

「はい。神は聖遺物の類は好まないとのことでしたので」

「あ、うん」

俺は微苦笑した。

エクリプスの力の話かな。

厳密には違うけど、口には出さないでおいた。

「それらをのぞいた名品珍品、その中でも更に一点物を中心に、という選考基準でございます」

「そっか……それって、使わせてもらっても大丈夫なの? ほら、オフィーリア――に食べさせちゃうから」

「まったく問題ございません。神に使って頂く以上の栄誉はございません」

「あはは。じゃあ……お願いしちゃおうかな。さっきすっごい光景が見えたんだ。ねっノワール」

俺はヘカテーの背後で、エヴァとオフィーリアあいてに、丁寧にシーツを掛けてやってるノワールに水を向けた。

「はい、かつてない光景でした。そういう意味ではすごい光景であるのは間違いございません」

「うん。ヘカテーに色々用意してもらえたらきっともっとすごい光景が見れちゃうんじゃないかな」

「かしこまりました。更に急ぎます」

「うん。お願いね」

「では御前失礼致します」

ヘカテーはそういい、来たばかりだというのに部屋から立ち去ってしまった。

一刻でも早く、神とあがめる俺の命令を遂行しに、って感じだ。

「慌ただしいね、ヘカテー。もうちょっとゆっくりしていけばいいのに。ノワールは昔の彼女の事もしってるんだよね」

「はい」

「昔からこうだったの?」

「敬虔な信徒でございましたね。私が知る限り、聖女の中でも際立って信心深いものでした」

「そうなんだ……」

俺は頷き、納得し、ヘカテーを見送るかのように、彼女が出て行った扉をじっと見つめた。

その時だった。

『神のおっしゃる通り』

ヘカテーの「祈り」の言葉がダイレクトに心の中に流れ込んできた。

今はここにいない、大分距離を離れたであろうヘカテーの声だ。

ヘカテーとメーティス、俺の使徒の中でも、ルイザン教の信徒の二人は祈りというかたちで知識や思考を俺に届けることができる。

それをさっき、ヘカテーはずっとやってきていた。

俺とのやり取りの裏で、ずっと違う事を祈りで届けてきた。

『いやはてのノワールはこれを感知出来ていないようでございます』

俺は反応を示さず、ノワールにも視線をむけずにヘカテーの祈りに「耳を傾けた」。

俺が呼べばすぐ来る、地獄耳の執事も、どうやらこの祈りの伝達までは介入できないようだ。

『この後メーティスに伝えたあと、神にノワールの調査結果をご報告いたします』

それを伝えて、ヘカテーの祈りがとまった。

レイフから聞いたノワールの真実、その入り口。

もうしばらくは本人に内緒で、それを探ろうとヘカテーとメーティスとのつながりを最大限利用することにしていた。