軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第19話 イルズ村へ(2)

程なくして、左右に広がる2メートル程度の高さの柵が見えてきた。

俺が最初に訪れた港町と同じように、村の四方を囲っているが、この木の柵も村の建物も、あの港町に比べれば随分と小さなものだ。

ただ村の建物全てが柵の中にあるわけではない、先ほど出会ったヴァーツさんはじめ、点々と農家と思われる家が建っていたので、この柵の内側はあくまで村の中心地的な意味合いを持っているに過ぎないそうだ。

最初は柵に囲まれた範囲にしか村は無かったが、人口の増加に伴って村の面積は拡大、しかし新たな柵を拵えるのは未だ出来ていないというのが、ここへやって来るまでにリリィと長いやり取りを経て分かった事実である。

「あれが正門だな」

「うん」

道の前には木製の簡素な門があり、今は開け放たれている。

その横に、門番であろう槍を持った大きな人影が見えた。

「おんや、リリィさんでねぇか」

軽鎧姿で長槍を抱える姿は港町の門番と同じように見えるが、その身は鮮やかな青色の鱗に覆われた蜥蜴頭の大男だ。

リザードマンというやつだろうか?

「こんにちは!」

やはり顔見知りなのか、リリィと挨拶し合っている。

「リリィさんの連れたぁ初めて見るなぁ」

「どうも初めまして、黒魔法使いのクロノといいます」

どうやら苗字があるのは一般的では無さそうなので、名前だけ名乗ることにした。

それと魔法使いと名乗るのも、この世界ではそこまで不自然では無いという事も分かっている。

「どうもどうも、ワシはグリントっつーしがない門番さ。

魔法使いとはリリィさんも珍しい知り合いがいるもんだなぁ」

「リリィとは出会ったばかりですけど、もう友達です」

「えへへー」

リリィが肩の上で照れ照れするのは良いのだが、至近距離でピカピカ光るため若干眩しい。

「そうかい、妖精のリリィさんと友達になれるたぁ悪人じゃあねぇな。

ほれ、中に入るんだろう、通ってええぞ」

「いいんですか、そんな簡単に通してもらって?」

「妖精と仲良くなれんのは善人の証拠さ、性質の悪いヤロウにゃ妖精ってのは絶対に懐かないのよ、なんたって心が読めるのよ妖精は」

「え、リリィ心が読めるのか!?」

「?」

何が? と言わんばかりによく分かっていない表情のリリィ。

「リリィ、ちょっと俺が今考えていることを当ててみてくれよ」

「うん」

実は俺、元居た世界で相当痛い内容のラノベを書くのが大好きな文芸部員だったんだ!

「んーわかんない」

「……そうか」

どうやら正確に心の台詞を一言一句違わず認識できるわけでは無さそうだな。

いや、そもそも心なんて読めてないんじゃないのか?

「あっはっは、仲が良いのは本当だなぁ、ほれ、こんなとこにいつまでも突っ立ってないで入りな」

「ありがとうございます」

かくして、俺はイルズ村へと立ち入ったのだった。

イルズ村は港町に比べれば小規模ではあるが、平和で長閑な村なのだと入ってすぐに分かった。

村の中心に位置する広場には、丁度昼時なのか多くの人々が集って思い思いに昼食をとっているのが見える。

ゴブリンのヴァーツさんが言っていたように、この村は多くの種族が入り混じって暮らしている。

この広場から見えるだけでも、人間や先ほど会ったゴブリンやリザードマンをはじめ、長い耳が特徴的なエルフ、立派な髭のドワーフ、犬や猫の頭をした獣人など、実に様々だ。

これまで人間からかけ離れた姿をした者は皆モンスターで敵という認識しか無かったが、この光景を見ると、姿の違いなど些細なものでしかないと言う事がよく分かる。

ちなみに、エルフやドワーフなどが種族の正式名称だというのはリリィに教えてもらった。

ただ、俺が聞き、話す言葉は改造によって自動翻訳されているような効果によるものの理解なので、本当の発音は全く別なものなのかもしれない。

俺が呼称する分には、相手方には正確に伝わるので問題ないから、気にしてもあまり意味は無いのだけど。

「さて、村長の家は――」

「あっち!」

俺はこの村に来るにあたって最初に村長へ挨拶しに行くことに決めていた。

リリィの話を聞く限り、外部から初めて村に訪れる者が村長に挨拶するのは特に珍しいことではなく、俺みたいな怪しい魔法使いでもアポ無しで会ってくれるのだと言う。

日本だったらそこを治める長に会うなんてことは無いのだが、こうして村長に会いに行くなんてRPGみたいだと思う、いや昔の村社会だったら一般的な事なのかもしれんが。

だが流石に王様とか国を治めるような権力者には会えないだろう、日本で言う総理大臣に会いに行くのと同じ程度には難しいはず。

兎も角、俺はこれから会うであろう村長には、この世界の事を色々聞いてみようと思う。

小さな子供のようなリリィでは、理路整然とした説明が難しいので、突き詰めた話をするなら大人に限る、それに村長なら色々知識があるだろう。

ただ、変に怪しまれなければいいのだが……

「気にしても仕方ないか」

ぶっつけ本番、当たって砕けろの精神で、俺はリリィに連れられて村長宅へと向かった。