軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第133話 エレメントマスターVSハンドレッドナンバーズ(1)

「 魔弾(バレットアーツ) 」

まずは先手必勝、重騎士の鎧と盾には防がれたが、魔術士のローブじゃあ無傷とはいかないだろう。

体を取り巻くように現れる黒い弾丸の列は、哀れな実験体へと鋭い弾頭を向ける。

俺の行動に反応し、

「ううぅー!」

リリィも 妖精結界(オラクルフィールド) の発光と共に攻撃態勢をとる。

男を守るように立つ4人の実験体へ、正面からは避ける隙間も無い弾丸の嵐を見舞うべくタクトを振り上げる。

さらに彼らの頭上には、脅威の破壊力を秘めた光の柱を射出する魔法陣が描かれる。

回避は不能、そもそもあの男を守ろうとするのなら、 攻撃魔法(サギタ) の一本たりとも通すことは許さないだろう。

「「منع انتشار الظلام الجدران السوداء الداكنة الدفاع」」

当然選択するのは防御魔法だとは読める、しかし、まさか詠唱を習得しているとは、俺よりも優秀なのか、それとも実験段階が進んだということなのか。

「「――『 暗黒防壁(ブラック・ウォール) 』」」

左右の男二人が詠唱を終え、瞬時に 防御魔法(シールド) が形成される。

現れるのは闇の中級範囲防御魔法『 邪心防壁(デス・ウォルデファン) 』とほぼ同じ、黒々とした巨大な壁が出現する。

だがこれを構成するのは闇の原色魔力では無く黒色魔力、よく似ているが質は異なる。

少なくとも俺の 魔弾(バレットアーツ) を防ぐには、 物質化(マテリアライズ) に優れる黒色魔力のシールドの方が効果的だろう。

しっかし、どうして他の実験体は悉く俺よりシールド張るのが上手いのだろうか、俺に防御魔法の才能が無いのか?

それはともかく、現れた『 暗黒防壁(ブラック・ウォール) 』なるシールドは、詠唱した術者の数と同じく二つ、魔弾を防ぐ為の正面と、リリィの攻撃を防ぐ為の頭上だ。

ここから見れば、いきなりヤツら全員が黒い長方形の箱に閉じ込められたように見えた。

「 全弾発射(フルバースト) !」

「ええーい!」

相手が防御魔法を発動させた次の瞬間に、俺達の攻撃が撃ち出される。

千を越す黒い弾幕と、鉄槌のように頭上から迫る白い光の柱、二つの黒と白はシールドを飲み込むように眩い閃光と衝突音を響かせる。

ガシャン、とガラスを砕くような音と共に、『 暗黒防壁(ブラック・ウォール) 』は粉々に粉砕し消滅する。

「綺麗に相殺させられたな」

シールドは完全に破ることは出来たが、一発の弾丸も僅かな光の熱も、ヤツらには全く届いていない。

いや、ここはシールドが無傷で攻撃を防がれなかっただけ良しとするべきか。

「「 自動剣術(オートキラー) 」」

暗黒の壁が消失するとほぼ同時、今度は女が二人、右手の剣と背後に浮かぶ剣を振り上げて突撃を仕掛ける。

しかし『自動剣術』とは懐かしい響きだ、機動実験やってた頃は『 魔剣(ソードアーツ) 』じゃなかったからな。

そして、俺が使用していたのと全く同じ効果、つまり剣だけが動いて斬りかかって来る。

手にする剣を除いて3本×2、合計6本の刃先が向く方向は全て同じ、

「リリィ狙いかよ――」

頑丈な体を持つ俺よりも、子供の姿をしたリリィの方が倒しやすいと判断したのか、それとも光の柱の攻撃力を危険とみたか。

どっちにしろ、俺がやることに変わりは無い。

「――俺の前でリリィに手ぇ出してんじゃねぇ! 魔剣(ソードアーツ) !」

矢のように空を切って飛来する黒化剣を、俺が操作する10本の剣でもって迎え撃つ。

1本につき黒化剣を2本飛ばし、確実に抑える。

敵が飛ばした剣の数は6、10を2ずつ分ければ5組、必然的に1本を撃ち漏らす計算になるが、

「おらぁあ!」

気合一閃、すっかり俺の相棒として定着した感のある呪いの大鉈でもって、叩き落す。

黒色魔力でコーティングされた無機質な黒化剣と同じように、漆黒の刀身を持つ『呪怨鉈「腹裂」』であるが、武器としての性能はこちらの方が圧倒的に上だ。

禍々しい黒いオーラを放つ鉈の凶刃は、リリィへ向けられた殺意の黒化剣を木っ端微塵に破砕した。

(リリィ、一歩下がってろ)

(うん!)

テレパシーを通じて、前衛、後衛の変形をスムーズに行う。

いくら新人冒険者だったといっても、3ヶ月近い期間をリリィと一緒にクエストをしてきたのだ、この程度の連携はすでに慣れている。

リリィを狙う女の実験体二人から、俺の背後にかばうように一歩前へと出る位置取り。

俺が前衛に出たことに対し、何の感情も移さない黒い瞳は、やはり動揺することもなく、そのまま真っ直ぐ突っ込んでくる。

「「 一閃(スラッシュ) 」」

全く同じタイミングと動作で発動する『 一閃(スラッシュ) 』、武技までしっかり習得しているとは驚きだ、俺には教えてくれなかったじゃねぇかよ。

だが、武技を使えるのはお前らだけじゃない。

「黒凪!」

武器性能、武技の威力、どちらも俺の方が上、一振りで相手の一閃二つを同時に迎撃することは十分可能、寧ろ二人の女を押し返すだけのパワーがある。

けたたましい金属音をたてながら、3つの黒い剣戟が火花を散らして交差。

予測通り、細身の女は二人とも黒凪に力負けし、一歩、二歩と後ずさる。

体勢を崩す、まではいかないが、隙としては十分だろう。

「やぁっ!」

すぐ後ろから聞こえる可愛らしい掛け声と共に、俺の背中から追い越すように光の弾が2つ飛んでゆく。

リリィの自動追尾能力を持つ光弾は、上手く俺を避け、敵である二人に向かって寸分の狂い無く迫る。

相手に回避も防御もさせる時間を与えない完璧なタイミング。

「「 黒弾(ライフル) 」」

だが、光弾は前方から飛んでくる黒い弾丸の連射によって撃ち砕かれる。

シールドを張って後ろに控えていた男二人組みによる防御射撃。

どうやら向こうもそれなりの連係プレイができるようだ。

「「 黒散弾(サンダン) 」」

俺はさらに追撃を仕掛けようと一歩踏み込むが、二人の女は即座にバックステップで距離をとりつつ、こちらに向けて黒い散弾で牽制してきた。

「くっ、 黒盾(シールド) 」

その場に踏みとどまって防御、攻撃範囲は広いが威力に劣る散弾は、俺のシールドに僅かなヒビをいれるに留まり、砕けることは無い。

それにしても、コイツらはどこまで俺の黒魔法をパクれば気が済むんだか、せめて散弾くらいは他のネーミングにしろよ、意味分かって言ってんのか。

「……仕切りなおし、か」

それよりも、リリィにアタックをかけた二人の女はすでに男二人が立つ元の位置にまで後退している。

彼女達の手にする剣は、黒凪をモロに受け止めた所為で刃は欠け、ヒビが入っている。

下級の 付加(エンチャント) でしかない黒色魔力のコーティングは、衝撃を受けると剥がれてしまうのは俺も同じだが、ヤツらの方は俺よりもさらに脆いようだ。

剣に篭める黒色魔力の量をケチったか?

なんて思っていると、二人は剣を放り投げ、新たな剣を黒い粒子で構成して装備する。

なるほど、換えはいくらでもあるってことか。

ついでに、あの黒い粒子は単純に黒色魔力で剣を創っているのではなく、 空間魔法(ディメンション) で黒化剣を呼び出しているのだと、見ていて何となく分かった。

ああやって手元で物体を引き出すことができるとは、俺の『 影空間(シャドウ・ゲート) 』よりも、一段階上のレベルにある。

直接的な攻撃力や魔力量は俺の方が上回っているようだが、他の部分では向こうの方が上のスキルを持っている、油断は禁物だな。

(クロノ!)

(どうしたリリィ?)

頭の中に響く声に耳(?)を傾けつつ、4人の相手からは注意を逸らさず警戒し続ける。

(あのね、テレパシーで繋がってるの!)

(……アイツらのことか?)

(うん! それで、見えなくてもみんなの動きがわかるんだよ!)

なるほど、向こうの連携プレイや、寸分違わず同じタイミングで攻撃を仕掛けるのには、そういうカラクリがあるってことか。

それがヤツらの黒魔法なのか、あのリングがテレパシー機能付きなのか、それとも通信機を脳内に埋め込んでいるのかは分からないが、どちらにせよ厄介な能力ではある。

単体では弱いモンスターだって、群れを組むことで1ランク上の敵を狩ることだってあるのだ、直接脳内でやり取りできるってのは、集団戦闘においてはこれ以上ないほどのアドバンテージとなる。

( 妨害(ジャマー) できるか?)

ならば、それを無くしてしまえば大きなマイナスにもなるということ。

俺より後の実験体ということは、少なくともヤツらが‘生産’されてからそれほど月日は経っていない、テレパシーが無い状態で連携できるほどチームプレイを高める訓練期間もないだろう。

(うぅー、ゴメンねクロノ、今はできないの、とっても時間がかかっちゃうの)

(どれくらいかかる?)

(1分くらい……でも、『 交信妨害(マインド・ジャマー) 』を使ってると、リリィ他に何も出来なくなっちゃう)

俺一人が壁役として1分は稼げるだろう、だが、リリィが攻撃に回れないとすれば決定打にかける。

テレパシーを妨害された4人なら、俺1人でも片付けることは十分可能だが、積極的に攻勢に出た場合、 妨害(ジャマー) を行使し続けるリリィを誰が守るかという話になる。

向こうは向こうで100体近くのライトゴーレムと実験部隊相手に戦闘中、有刺鉄線を超えてこっちまで増援にくることは期待出来そうも無い。

とすると、こっちが取れる最善策は、敵のトップと思われるあのいけ好かない元マスクヤロウをさっさと倒してしまうことか――

「おぉー、流石はジジイが入れ込んで創っただけあるなぁ49番、4人ってのはちょっと舐めすぎだったか?」

「ならお前も戦ったらどうだ、俺の代わりにリーダーをやってんだろ」

「ただの上司みたいに思われんのは心外だなぁ、神に選ばれた人間様が奴隷以下の異邦人をありがたくも‘使ってやってる’んだぜ?

神は人の代わりに動くことは無ぇ、人の代わりは人が、なら異邦人の代わりは異邦人にさせるしかねぇだろうが――」

男が一つ指を弾くと、左右の森からさらに2人ずつ、合計4人の増援が出現する。

装備は同じだが背中に負う黒化剣は2本、最初の4人よりは多少性能が落ちているのだろう。

しかし、単純に数が倍になるのは拙い、8人全員がテレパシーで繋がっていることを思えば、そのチームワークは脅威だ。

「まぁ、神を信じない野蛮で低脳な異邦人如きには理解できねぇ話か」

男の不快な高笑いを聞きながら、俺は決意した。

やはり、この男を真っ先に殺すしかないな、と。