軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第124話 妖精VS天馬騎士(4)

「――来た」

上空に敵影有り、なんて言ったらあの天馬騎士以外にはありえない。

今回は前よりも随分と出現が早い、クロノの言っていた通り、向こうは総力戦を仕掛けるようね。

「テレパシー切断、それじゃあ、後はアナログ通信でよろしくね」

最前線で戦う忙しいクロノに代わって、私は規定通りの報告を冒険者達に通達すると、さっさと部屋の窓を開けて、空へと飛び立つ。

すでに体は元の状態、コンディションもまぁ悪くは無いかな、砲撃の音が煩かったけど、子供の体は何処でもぐっすり眠ってくれた。

「早く来なさい、こっちは時間制限があるんだから」

アルザス村の上空まで舞い上がると、前方から点々と編隊を組んで飛ぶ天馬騎士部隊の姿が確認できる。

向こうは明らかに私を警戒している、前回のように『 星墜(メテオストライク) 』からの奇襲はさせてもらえないだろう。

前の戦いで、もう少しこっちの弱みを見せて油断を誘うべきだったかな。

奇襲で動揺を誘った上での戦闘、さらに私には強力な 精神感応(テレパシー) の 固有魔法(エクストラ) で、相手の行動や作戦をある程度察知できる。

そうして前回は終始私の優勢で戦いを進めることが出来たのだが、実のところこちらも限界ギリギリだった。

そもそも 竜(ドラゴン) でも無い私が何であんな大人数を、しかもそれなりの手練れを相手にしなくちゃいけないのよ。

クロノの為に無理を押して戦ってるんだから、圧倒的な戦力差でも屈しないのは全て愛の力に他ならない。

まったく、私の玉のお肌に傷がついたらどうしてくれるというのだ。

「――ん?」

迫り来る天馬騎士の影は徐々に大きくなり、そろそろ私のテレパシーの範囲内に入ろうかという時、違和感を覚える。

うん、この感覚は、間違いない、

「 精神防壁(マインド・プロテクト) か、一応は対策したってこと、小賢しい」

彼女達の心が見えない、薄い壁、いや、もっとボンヤリとした霧のようなものに包まれて、表面に出る感情のおおまかな色以外に詳しい思考を拾えない。

魔法のランクでいえば下級といった程度の弱い 精神防壁(マインド・プロテクト) だが、部隊全ての思考を読むことは、前回のようにはできないわね。

一人あたりのプロテクトを突破するのは容易だが、集中砲火を浴びながら、攻撃と回避を両立させている私には、そこにまで一点に集中力を割くのは少しばかり厳しいものがある。

「まぁいいわ、裏をかかれない程度に思考を読めば、後は前と同じように真っ向から戦うだけだしね」

そろそろ攻撃魔法の射程範囲に入る、私は 妖精結界(オラクルフィールド) を展開させて前進を開始する。

奇襲する余地が無いのなら、正面から行くほかは無いでしょ。

「さぁ、貴女達を殺してクロノにいっぱい褒めてもらうんだから、私のために、さっさと死んでちょうだい!」

お互い、攻撃魔法を放つのは同時。

雷、風、炎、氷――多様な下級攻撃魔法が私目掛けて飛来する。

私が放つのは光線と光弾の二種類、サイズは『 光矢(ルクス・サギタ) 』程度だが、内に秘める威力は中級。

追尾性能の高い光弾で私が飛ぶのに邪魔な軌道にある敵の攻撃魔法を迎撃し、その隙間を塗って距離をつめる。

対して直進しかできないが発射速度が光速である光線は、天馬騎士を直接狙う。

速度は速くとも、向こうもそれなりの実力者で構成された部隊、発射点を見切って回避行動をとれる程度の反応はある。

天馬騎士は私の攻撃が届くや、そのまま回避運動の常套手段である散開を――しない。

「え、反転した?」

そのまま散開し、私を包囲するように進むだろうとの予測は覆される。

彼女達は何を思ったか、私という敵を前にして一斉に180度反転し、背中を見せて元来た空を戻り始める。

「ちょっと、待ちなさいよっ!」

真意を測ろうと思うも、この距離ではテレパシーがギリギリ届くかどうかという範囲、プロテクトを突破できるほど強力な干渉が出来ない。

とりあえず心を読むにも攻撃するにも接近しないことには始まらない、背中を見せて逃亡を始める天馬騎士を追いかける。

だが、直線距離においては 天馬(ペガサス) の方が若干有利、全力で逃げられたらジリジリと引き離されてしまう。

私は飛行速度をかなり上げて追撃を仕掛ける、けど、拙い、これは追いつけない。

「ちっ、これ以上の深追いはできないわね」

速度を落とし一旦空中で停止。

あまりアルザス村から離れすぎるのは危険だ。

そもそも、今の私のように敵を追いかけて、伏兵で嵌めるのはごく基本的な戦術だ。

もし敵がそれを狙っているのなら、それに乗ってやる必要は無い。

ここは引き返そうか、と考えた次の瞬間、背中を見せて逃げていた天馬騎士部隊が再び反転する。

再度正面から相対する私と天馬騎士、先と全く同じように、攻撃魔法の一斉射撃を開始する。

「これ以上先に進みたくはないし、少し退くしかないわね」

射程ギリギリに仕掛けられた攻撃など、避けるのも撃ち落すのも楽だ。

私は正面を向いたまま、後退を始める。

すると、天馬騎士は下がる私とほぼ同じ速度で、ほぼ一定の距離を保ったまま追いかける。

そして、攻撃魔法の届くギリギリの射程に入ると、散発的に撃って来る。

「くっ、まさか――」

私が空中で停止する、天馬騎士部隊も停止。

私が前進すれば、天馬騎士部隊は後退。

そして私が下がれば再び前進、常に一定の距離を保ち、嫌がらせ程度にしか攻撃を仕掛けてこない。

「――時間稼ぎ!」

理解した、敵の狙い。

心が読めずとも、こうもあからさまに動かれれば、分からないのはよほどの阿呆だ。

要するに敵は、私の加護が消失する、‘時間切れ’を狙っているのだ。

「ホントに、小賢しい真似をしてくれるわね……」