軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダークエルフの能力

大海賊の宝箱を開けて中身を取り出した。

中身は大きな青い宝石(?)の柱だった。

研磨前だが、一メートルくらいの高さがある。

こんな大きな宝石は見たことがない

綺麗な六角柱の形をしているが、まだ原石の状態なのだろうか?

底に岩のようなものがついたままになっている。

「アクアマリンかしら? こんなに大きなものは滅多に見ないわね」

「ダンジョン産の宝石は研磨された後の物が多いので珍しいですね」

表面に細かい傷があるので宝石の輝きが薄いけど、磨いたらとても綺麗になりそうだ。

特別な効果のない宝石ならば、博物館に寄贈したいくらい凄い。

宝石に詳しい兄貴に相談してもいいかもな。

「泰良! トゥーナちゃんの様子がおかしいよ!」

ミルクが声を上げた

トゥーナの目がとろんとしている。

普段から表情の変化が乏しい彼女だが、いつも以上に無表情な気がする。

なにより、ミルクが「トゥーナの様子がおかしい」と言っているのに本人が何も言わないのはおかしい。

「トゥーナっ! トゥーナ!」

大声で彼女の名前を呼ぶ。

返事がない。

どういうことだ? まさか、この宝石が原因か!?

俺は詳細鑑定を使った。

【追憶のアクアマリン:巨大なアクアマリン。記憶の彼方の出来事を再体験させることがある。一日一度使用可能】

記憶の再体験?

トゥーナは記憶の世界にいるのか?

他の三人も鑑別のモノクルを使って宝石の効果を理解したようだ。

「トゥーナが無意識に使っちゃったってこと?」

「そうみたいだな。危険はないみたいだ。効果も最長で十分程度で切れるらしい。とりあえず倒れたら危険だし、ベッドに運ぶか」

俺が提案すると、ミルクがジト目で「えっち」って言ってきた。

やましい気持ちはこれっぽっちもないのだが――

「クロっ!」

「わふ」

休憩していたクロが大きな狼のサイズになり背中にトゥーナを乗せてベッドに運んでくれた。

それからしばらくしてトゥーナは目を覚ました。

トゥーナはまだ少し上の空といった様子だったが、ミルクたちとの受け答えはしっかりしている。

「大丈夫か?」

「…………ん。夢を見て……た?」

「ああ、記憶の再体験って奴らしい。嫌な記憶とかじゃなかったか?」

記憶の再体験というと過去の思い出を振り返るみたいな感じがしたが、トゥーナの過去は全て良い物ではない。

彼女の世界は一度滅んでいるわけだし、その記憶を体験していたとしたらとてもつらい経験の振り返りになってしまう。

それこそ、PTSDみたいな状態になっても不思議ではない。

「……ん、いい思い出ではない」

トゥーナはそう言ってから首を横に振った。

「……でも、大切な記憶」

「大切な記憶?」

「……そうダークエルフのことを思い出していた」

ダークエルフ――もしかしたら奈良のダンジョンと関係のあるかもしれないって言っていた元エルフの種族か。

「どんなことを思い出したんだ?」

「……ん。ダークエルフには変身能力を持つ子がいた」

「変身能力? 終末の獣みたいなのか?」

俺が戦った終末の獣はスライムのような存在であったが、白竜や籠手に姿を変えていた。

「……ん、そこまで姿は変えられない。せいぜい他のエルフに化ける程度」

トゥーナは語った。

かつて彼女はダークエルフに命を狙われたことがあった。

多くの人がいる中、木の上から襲われたらしい。

最初、トゥーナは彼女が姿を消す隠蔽の力を使ったと思ったが、実際は木の上で警備のエルフに化けていたと教えてもらったそうだ。

「……たぶん、人間にも変身できる」

「見た目もそっくりになれるの?」

「……ん。可能」

なるほど。

実はずっと考えていた。

ダークエルフがダンジョンにいるとして、ずっとダンジョンの中で生活は可能なのかと。

食事の用意やなにより有刺鉄線を用意していたのか?

ダークエルフはトゥーナが言うには、髪の色と肌の色が違うが基本はエルフと変わらないらしい。

耳を隠せば人間のフリをして買い物もできる。

翻訳スキルがあれば言葉も困らない。

ただ、あのダンジョンのあたりは近くの民家まで車で十五分。

商店まで二十分。

大きなホームセンターまでは一時間くらいかかる。

お金をどうやって用意しているのかという疑問を横に置いても、そんな場所で明らかに地元の人間ではない人たちが何度も買い物をしたりしたら怪しまれるのは明白だ。

ダンジョンが見つかった後、警察が周辺の店等に怪しい人物の調査に乗り出したが、そういう人物が見つかったという報告は受けていない。

だが、買い物のたびに姿を変えていたら?

そうしたら、一見の客が来て買い物をしていった――くらいの印象しか残らないだろう。

「このことをダンジョン局に――」

「……待って」

「なんでだ? 変身能力について教えれば調査に進展があるかも」

「……そうすればダークエルフについても話をしないといけなくなる。まだダークエルフの仕業とは決まっていない。というより、可能性は低い。そんな状態で彼らのせいにしたくない」

「でも――」

「……お願い。彼らはエルフたちから敵として殺された。でも、彼らは彼らの選択をしただけ。これ以上彼らの名誉を傷つけたくない」

エルフにとっては敵だったが、それでも悪じゃない。

正義の反対は別の正義――なんて言葉があったな。

だからトゥーナはダークエルフについてあまり言いたくなかったし、自分で調査することに拘ってるのか。

ミルクたちを見る。

彼女たちは俺の目を見て頷いた。

念話を使うまでもなく、今回のことは自分たちの胸の内に留めておくと伝えている。

だったら、さっさとトゥーナのレベルを上げて、調査しないとな。

トゥーナが言うには、ダークエルフが関わってる可能性は決して高いとはいえないそうだ。

今回の事件がダークエルフとは無関係だってなったら、トゥーナも安心するだろう。